親が相続したアパートの家賃を受け取っている、配偶者と共有名義で物件を持っている、といった場合に迷いやすいのが「その家族を扶養に入れられるか」です。扶養には所得税の扶養(扶養控除・配偶者控除)と、健康保険の被扶養者という社会保険の扶養があり、判定に使う金額も時点も違います。この記事では、家賃収入がある家族について、税と社会保険それぞれの判定の考え方を一次資料に沿って整理します。個別の判断は税理士や加入先の保険者に確認してください。
税の扶養と社会保険の扶養は別の制度
最初に押さえたいのは、2つの扶養がまったく別の基準で判定される点です。
- 所得税の扶養: その年1月1日から12月31日までの「合計所得金額」で判定する。家賃収入は、収入から必要経費を引いた「不動産所得」として数える
- 社会保険の扶養: 被扶養者に該当する時点以降の「年間の見込み収入額」で判定する。過去の収入ではなく、これからの1年間の見込みを見る
税では扶養に入れても社会保険では外れる、またはその逆も起こり得ます。どちらか一方の基準だけで判断しないことが大切です。
所得税の扶養——不動産所得の金額で判定する
国税庁によると、扶養親族の要件のひとつは年間の合計所得金額が一定額以下であることで、その金額は令和7年分が58万円以下、令和8年分は62万円以下です(国税庁 No.1180 扶養控除)。合計所得金額には不動産所得が含まれ、損益通算後の金額で計算します(国税庁 用語の解説)。
家賃収入がある家族で注意したいのは次の点です。
- 給与には給与所得控除がありますが、家賃収入にはありません。家賃の総額ではなく、固定資産税・管理費・減価償却費などの必要経費を差し引いた不動産所得で判定します
- 青色申告をしている場合は、青色申告特別控除を差し引いた後の所得で判定します
- 給与と家賃の両方がある家族は、給与所得と不動産所得を合計した金額で判定します
- 青色事業専従者として給与を受けている家族は、扶養親族になれません
配偶者も同じ考え方で、配偶者控除の対象となるのは、配偶者の合計所得金額が令和8年分は62万円以下(令和7年分は58万円以下)で、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下の場合です(国税庁 No.1191 配偶者控除)。これを超えても一定の範囲までは配偶者特別控除の対象になります。家族に給与を払う場合との関係は青色事業専従者給与の実務で解説しています。
19歳以上23歳未満の子は特定親族特別控除も確認する
19歳以上23歳未満の子などで、所得が扶養親族の基準を超える場合でも、合計所得金額が123万円以下であれば特定親族特別控除の対象になり得ます。令和8年分以後は、特定親族の合計所得金額が62万円を超え123万円以下の範囲で、所得が増えるほど控除額が段階的に小さくなる仕組みです(国税庁 No.1177 特定親族特別控除)。年齢はその年12月31日の現況で判定します。
社会保険の扶養——今後1年間の収入の見込みで判定する
日本年金機構によると、健康保険の被扶養者の収入要件は、年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)で、同居の場合は被保険者の収入の半分未満、別居の場合は被保険者からの仕送り額未満であることです。年間収入は過去の収入ではなく、被扶養者に該当する時点および認定日以降の年間の見込み収入額を指します(日本年金機構 家族を被扶養者にするとき)。
19歳以上23歳未満の家族(被保険者の配偶者を除く)は、扶養認定日が令和7年10月1日以降であれば年間収入150万円未満が基準で、年齢は扶養認定日が属する年の12月31日時点で判定します(日本年金機構 19歳以上23歳未満の年間収入要件)。
不動産収入がある場合、同じ頁では添付書類として直近の確定申告書の写しが挙げられ、自営業者の収入額は事業遂行のための必要経費を控除した額とされています。ただし、税務上の必要経費や青色申告特別控除がどこまで差し引けるかは同じ頁に書かれていないため、加入先の保険者(協会けんぽ・健康保険組合)に確認してから判断します。
また、令和8年4月1日以降は、給与収入のみの人について労働契約の内容から年間収入を判定する取り扱いが始まっていますが、他の収入が見込まれないことが条件です(日本年金機構 労働契約内容による年間収入での認定)。家賃収入がある家族は、この方法の対象外と考えておく必要があります。
家賃収入がある家族の判定手順
- 家族名義の物件・持分ごとに、年間の家賃収入と必要経費を洗い出す
- 税は、その年の不動産所得と他の所得を合計し、扶養控除・配偶者控除・特定親族特別控除のどれに当たるかを確認する
- 社会保険は、これから1年間の収入の見込みを出し、年齢・同居か別居かに応じた基準と比べる
- 家賃の値上げ、物件の追加取得、相続による持分の増加など、収入が増える予定があれば早めに見込みを修正する
- 社会保険の基準を超える見込みになったときは、勤務先を通じて被扶養者の削除の届出を行う
共有名義で物件を持つと、持分に応じた家賃収入が各共有者の所得になります。名義の付け方を決める前に、家族の扶養への影響まで含めて税理士と試算しておくと、後から想定外の保険料負担が生じるのを避けやすくなります。
