築年数の古いビルや工場、倉庫を取得するときに見落とされやすいのが、変圧器やコンデンサー、照明の安定器などに含まれるPCB(ポリ塩化ビフェニル)です。PCBを含む廃棄物は法律で処分の期限が決められており、保有者には届出や期限内の処分が義務づけられています。この記事では、環境省の情報とPCB特措法に沿って、高濃度・低濃度の区分と処分期限、物件の購入前と保有中に確認しておきたい点を整理します。
PCBが使われていた機器
環境省によると、PCBは電気絶縁性が高く熱で分解しにくい性質から、変圧器やコンデンサーの絶縁油などに広く使われていましたが、毒性が明らかになり1972年(昭和47年)に製造が中止されました(環境省 PCBとは)。
- 変圧器・コンデンサー: 古い工場やビルなどで使われていた
- 安定器: 古い工場や学校などの業務用・施設用の蛍光灯器具に使われていた。一般家庭用の蛍光灯にPCBを使用したものはないとされている
これとは別に、PCBを使っていないはずの電気機器でも、絶縁油が微量のPCBに汚染されているものがあります。環境省は、平成2年(1990年)まで行われた再生絶縁油の製造・流通・使用の過程で意図せずに汚染されたと推定しており、製造後30年以上たった古い電気機器が該当し得るとしています(環境省 低濃度PCB廃棄物の基本情報)。
高濃度と低濃度で処分期限が違う
PCB廃棄物は濃度によって2つに分かれ、扱いと期限が異なります(環境省 低濃度PCB廃棄物早期処理情報サイト)。
- 高濃度PCB廃棄物: PCB濃度が0.5%(5,000mg/kg)を超えるもの。処分期間はすべてのエリアで終了しており、中間貯蔵・環境安全事業(JESCO)による処理の登録受付も令和7年10月15日で終了した。期限後に新たに見つかった場合は、速やかに管轄の自治体へ保管状況を報告するよう求められている
- 低濃度PCB廃棄物: PCB濃度が0.5mg/kgを超え0.5%以下のもの。処分期間はPCB特措法で令和9年(2027年)3月31日までとされ、環境大臣が認定する無害化処理施設や都道府県知事等が許可する施設で処理する
高濃度の状況は環境省 PCB早期処理情報サイトにまとめられています。照明の安定器のように高濃度のものは、すでに期限が過ぎている点に注意が必要です。
どの建物で問題になりやすいか
環境省は、絶縁油がPCBに汚染されている可能性がある機器として、電気事業法で定められた自家用電気工作物(変圧器、電力用コンデンサー、開閉器、遮断器など12種類)を挙げています。さらに、低圧で受電する施設の分電盤に付けられた力率改善用のコンデンサーや、モーターの起動用コンデンサーなども例示しています(環境省 汚染の可能性がある機器)。
収益物件では、高圧で受電して敷地内に変圧器などの受変電設備を持つビルや工場、倉庫で特に確認が必要です。工場・オフィスビル投資の全体像は工場・オフィスビルへの収益不動産投資、倉庫・工場の改修は倉庫・工場のリノベーション投資ガイドでも触れています。
保有者に課される主な義務
PCB特措法と環境省の解説によると、PCB廃棄物を保管する事業者には次の義務があります(e-Gov 法令検索 PCB特措法、環境省 保管事業者に課せられる規制)。
- 毎年度、保管と処分の状況を都道府県知事(政令で定める市は市長)に届け出る
- 期限までに自ら処分するか、処分を委託する。違反すると改善命令の対象になり、命令に従わなければ罰則がある
- 相続・合併・分割で保管事業者の地位を承継した者は、承継の日から30日以内に届け出る
- 環境省令で定める場合を除き、PCB廃棄物を譲り渡したり譲り受けたりしてはならない(17条)
最後の譲渡しの制限は売買に直結します。売主が保管しているPCB廃棄物を、建物と一緒に買主が引き継ぐ前提で取引を進めるのは避け、売主側で処分を済ませるのか、どう扱うのかを自治体の窓口に確認したうえで契約条件に落とし込みます。
購入前と保有中に確認すること
- 受変電設備や古い分電盤の有無を確認し、機器の銘板(製造者・型式・製造年)を写真で記録する
- 売主に、PCB廃棄物の保管や自治体への届出の有無、過去の分析結果を書面で確認する
- 意図せず汚染された低濃度のものは銘板では判断できないため、必要に応じて絶縁油のPCB濃度を測定する
- 該当機器がある場合は、撤去・運搬・処理の見積もりを取り、価格交渉や契約条件に反映する
- 使用中の機器は、廃棄すればPCB廃棄物になるため、処分期限から逆算して更新の時期を決める
環境省は「低濃度PCB廃棄物の濃度分析・処理に係る助成金」の創設も案内しています(環境省 低濃度PCB廃棄物早期処理情報サイト)。対象や条件は同サイトと自治体の窓口で確認してください。アスベストや土壌汚染など、ほかの有害物質の確認はアスベスト・土壌汚染リスクの調査と投資物件への影響で解説しています。
