台風や大雪のあとに、「火災保険を使えば自己負担なく屋根や外壁を直せる」「保険金の申請を代わりに手伝う」と電話や訪問で持ちかけられることがあります。国民生活センターや日本損害保険協会は、こうした勧誘をきっかけにしたトラブルについて繰り返し注意を呼びかけています。収益物件のオーナーは、賃貸用の建物の修理契約であることから、自宅の修理の場合より解除の面で不利になることもあります。この記事では、公的機関の注意喚起をもとに、断るべき契約の見分け方と勧誘を受けたときの対応を整理します。
注意喚起されている勧誘の手口
国民生活センターは、「保険金を使って自己負担なく住宅修理ができる」と勧誘する住宅修理サービスについて、相談事例から次のような問題点を挙げています(国民生活センター 2020年10月1日公表)。
- 「保険金が使える」と訪問販売で契約させ、長時間の勧誘も行われている
- 高額な手数料などが発生することの説明が不十分
- 保険会社をだますような手口の保険金請求が行われている
- 見積もりが杜撰で保険金が支払われなかったり、工事内容が杜撰だったりする
日本損害保険協会も、保険会社や代理店へ連絡する前に問題のある住宅修理業者や保険金請求代行業者と契約すると、保険金が支払われずに修理代金を自己負担することになったり、解約時に高額な解約手数料を求められたりするトラブルに巻き込まれることがあると説明しています(日本損害保険協会 住宅の修理などに関するトラブルにご注意)。報酬は支払われた保険金から払えばよい、と持ちかける申請代行の契約もこれに含まれます。
「無料で直せる」とは限らない理由
日本損害保険協会は、自然の消耗や劣化、さびなどによって生じた損害は保険金の支払い対象にならないとしています。国民生活センターも、経年劣化による住宅の損傷は自然災害などの事故による損害ではないため支払い対象にならないこと、勧誘で「自己負担なく工事ができる」と言われても見積もりどおりに保険金が下りるとは限らないことを指摘しています(国民生活センター 2021年9月2日公表)。
保険金を支払うかどうか、いくら支払うかを決めるのは保険会社です。業者の見積もりを前提に修理契約を先に結ぶと、保険金が見積額に届かなかった差額や、工事を取りやめたときの違約金を負担することになりかねません。
うその理由で請求すると契約者自身が責任を問われる
国民生活センターは、事業者が自然災害で壊れたことにすればよいと持ちかけたり、自分たちの関与を保険会社に伏せるよう求めたり、壊れていない部分に細工をしたりする例を紹介しています。そのうえで、うその理由による保険金請求は保険金詐欺に該当するおそれがあり、契約者は保険会社から保険金の返還請求や保険契約の解除を受ける可能性があるほか、刑事罰(詐欺罪)に問われる可能性もあるとしています(国民生活センター 2020年10月1日公表)。
保険金を請求するのは業者ではなく契約者本人です。業者が申請書類を作っても、その内容の責任は契約者が負うことになります。
「請求期限が迫っている」と急かされたとき
保険法95条は、保険給付を請求する権利は、行使できる時から3年間行使しないときは時効によって消滅すると定めています(e-Gov 法令検索 保険法)。国民生活センターは、この時効を持ち出して過去の自然災害の保険金の請求期限が迫っていると勧誘するケースが多くみられると注意を促しています(国民生活センター 2021年9月2日公表)。期限を理由に契約を急がせる勧誘には、その場で応じないことが大切です。
収益物件の修理契約はクーリング・オフを当てにしない
自宅の修理であれば、訪問販売や電話勧誘販売で結んだ契約はクーリング・オフができる場合があります。一方で、特定商取引法26条1項1号は、購入者などが「営業のために若しくは営業として」締結する契約を、訪問販売などの規定の適用除外としています(e-Gov 法令検索 特定商取引法)。賃貸用の建物の修理契約がこれに当たると判断されると、クーリング・オフで解除できない可能性があります。
収益物件では「後で解除すればよい」と考えず、契約前に断るのが基本です。すでに契約してしまった場合は、早めに弁護士に相談してください。
勧誘を受けたときの対応手順
- その場で契約書や申込書に署名・押印しない
- 加入している保険会社または代理店に連絡し、補償の対象かどうかと請求の手順を確認する
- 被害の状況は、日付が分かる写真で自分でも記録しておく
- 修理は複数の業者から見積もりを取り、手数料・違約金・解約条件を書面で確認する
- 申請代行業者との契約で困ったときは、日本損害保険協会の「保険金に関する災害便乗商法 相談ダイヤル」や弁護士に相談する
相談窓口は日本損害保険協会の注意喚起の頁に掲載されています。自宅の修理であれば、国民生活センターが案内する消費生活センター(消費者ホットライン188)も相談先になります。
保険金の正規の請求手続きと損害査定への対応は、収益物件の損害保険金請求手続きと損害査定への対応で詳しく解説しています。補償内容の見直しは火災保険の見直しポイントも参考にしてください。
