「広大地評価」から「地積規模の大きな宅地の評価」へ
2018年の相続税路線価改正により、旧制度の「広大地評価」が廃止され、「地積規模の大きな宅地の評価」として新たな制度が導入された。この改正は広大地の評価に不確実性が大きく、税額の差異が生じやすいという課題を是正するためのものだ。
不動産投資家・収益物件オーナーにとって重要なのは、「所有する土地の面積が一定以上なら、路線価に補正率を乗じることで相続税評価額を引き下げられる」という点だ。特に一棟アパートや賃貸マンションの敷地として広い土地を所有している場合には、この制度の活用が相続税対策に直結する。
対象となる宅地の要件
「地積規模の大きな宅地」として評価減の対象となるには、以下の要件をすべて満たす必要がある。2026年6月時点の制度に基づく。
地積(面積)要件:
- 三大都市圏(東京都・大阪府・愛知県等の市街化区域):300㎡以上
- それ以外の地域:500㎡以上
用途地域・地区区分要件:
- 路線価地域に所在し、普通住居地域または普通商業・併用住居地域に所在すること
- 倍率地域は別途判定(路線価がない地域)
除外される宅地:
- 市街化調整区域に所在するもの(原則不可。ただし土地区画整理事業等の区域を除く)
- 工業専用地域に所在するもの
- 容積率が400%以上(東京都の特別区は300%以上)の地域に所在するもの
- 現況が大規模工場用地などとして評価されるもの
収益物件の敷地が上記の「除外要件」に該当しないかは、物件の登記地番をもとに市区町村の都市計画担当課で確認できる。税理士に依頼する際にも、あらかじめ用途地域・容積率を把握しておくとスムーズだ。
補正率の計算方法
「地積規模の大きな宅地の評価」では、路線価に「規模格差補正率」を乗じて評価額を算定する。補正率は地積が大きいほど大きくなる(評価額が下がる)。
規模格差補正率の計算式は以下の通りだ(三大都市圏の場合):
規模格差補正率 = {A × (地積㎡)+B}÷ (地積㎡)× 0.8
この式でAとBは地積規模に応じた係数(国税庁の算式に従う)。具体的な係数値は国税庁のホームページに掲載されており、地積区分(300〜500㎡、500〜1000㎡、1000〜3000㎡、3000〜5000㎡、5000㎡超)ごとに異なる。
計算例:
- 三大都市圏の普通住居地域、地積500㎡、路線価20万円/㎡の場合
- 規模格差補正率 ≈ 0.80(概算)
- 通常評価額:500㎡ × 200,000円 = 1億円
- 補正後評価額:1億円 × 0.80 = 8,000万円
- 評価減効果:2,000万円(税率30%なら相続税で約600万円の節税)
実際の係数は正確な地積・地域・路線価に基づいて計算するため、上記はあくまでイメージだ。評価額が大きい物件ほど効果が顕著になる。
収益物件への活用で注意すべき点
賃貸不動産の土地を相続した場合、まず「貸家建付地評価」という別の評価減も適用できる。これは借地権割合・借家権割合に基づき評価額を引き下げるもので、地積規模の大きな宅地の補正とは別途重複して適用できる。
つまり、大きな面積の土地に賃貸建物が建っている場合は、以下の2段階の評価減が重なる可能性がある:
- 地積規模の大きな宅地の評価(規模格差補正率の適用)
- 貸家建付地評価(借地権割合×借家権割合×賃貸割合による控除)
ただし注意点もある。路線価地域でない(倍率方式の)土地や、容積率・用途地域の要件を満たさない都市中心部の高容積率地帯では適用できない。また「実際の相続税評価額が著しく低い」と判断されると税務調査で否認リスクが生じる場面もゼロではないため、専門家(税理士・不動産鑑定士)の確認が重要だ。
生前から把握しておくべき理由
相続は突然やってくることが多いが、この評価減の活用は「生前から対象地を把握しておくこと」で準備が格段に楽になる。
保有する土地のうちどれが「地積規模の大きな宅地」に該当するかをリスト化し、以下を整理しておくと相続発生時にスムーズに対応できる。
- 地積(面積)
- 所在地の用途地域・容積率
- 現況(更地・賃貸物件敷地・駐車場など)
また、大型の賃貸物件を購入する際にも、敷地が広い物件は将来の相続税評価での評価減が期待できるという観点を持つことで、投資判断の幅が広がる。
まとめ
「地積規模の大きな宅地の評価」は、一定以上の面積を持つ宅地の相続税評価額を合理的な方法で引き下げる制度だ。三大都市圏の300㎡以上、その他地域の500㎡以上という面積条件は、一棟アパート・賃貸マンションの敷地として多くのオーナーが保有する土地が該当しうる。相続対策を検討する際には、必ず税理士と連携して自保有地への適用可否を確認することをすすめる。
