2026年の相続税改正と路線価上昇への対応戦略
不動産投資を進める上で避けて通れないのが相続税対策です。2026年の路線価が発表され、過去5年連続での上昇が確認されました。特にGinzaなどの一等地では11%もの上昇率を示しており、これは不動産投資家にとって大きな意味を持ちます。相続税の計算基準となる路線価が上昇することは、後継者に残す不動産資産の税負担が増加することを意味しているのです。
相続税は被相続人が遺した全ての資産に対して課税される税金です。その中でも不動産は金額が大きいため、相続税の計算において大きな比重を占めます。路線価が上昇することで、同じ物件であっても評価額が高くなり、結果として支払う相続税が増加することになるのです。
路線価上昇がもたらす相続税負担の増加
2026年の路線価は全国平均で前年比2.9%の上昇を記録し、これは現在の計算方法が開始された2010年以来、最大の上昇率となっています。36の都道府県で価格上昇が見られ、特に都市部への集中が顕著です。この上昇傾向は今後も続くと予想されており、不動産投資家にとっては相続税対策の時間がどんどん限られていることを意味します。
都市圏では都市再開発やインバウンド需要の回復により、一層の路線価上昇が予想されます。特に三大都市圏(東京、大阪、名古屋)では今後5年で平均5~8%の上昇が見込まれています。地方都市でも駅前の商業施設や再開発エリアを中心に上昇傾向が続くと予想されます。
例えば、5000万円で購入した収益物件が、相続時までに6000万円に評価額が上昇したとします。従来であれば5000万円を基準に相続税が計算されていましたが、路線価上昇により6000万円で評価される可能性があります。その差1000万円に対して、相続税率30%が適用されるなら、300万円の追加税負担が発生することになるのです。
さらに複数物件を保有している場合、この効果は顕著になります。複数の収益物件の相続税評価額が全て上昇すれば、その合計は数千万円に達することも珍しくありません。相続税率も累進課税のため、評価額が高くなるほど税率も上がるという二重の負担増になるのです。
相続税対策として有効な複合戦略
相続税を軽減するためには、単純に節税スキームに頼るのではなく、複数の施策を組み合わせた戦略が必要です。まず重要なのは、相続税評価額と実勢価格の乖離を活かすこと。借地権付き物件や、築年数が経過した物件は実際の価格に比べて評価額が低くなりやすいという特性があります。こうした物件を戦略的に保有することで、相続税の節税につながります。
借地権付き物件の場合、相続税評価額は、自用地評価額に借地権割合を乗じた金額となります。一般的に借地権割合は30~70%程度であり、この分だけ評価額が圧縮されるのです。築古物件についても同様で、建物部分の償却資産評価が低くなるため、新築物件に比べ相続税評価額を大幅に圧縮できます。
次に、生前贈与を活用した段階的な資産移転も効果的です。年110万円までの贈与は税金がかからないため、10年以上かけることで5年ローンを完済した物件であれば、子への移転を進めることができます。ただし相続開始3年以内の贈与は相続財産に加算される点に注意が必要です。計画的に実施すれば、数千万円規模の資産移転が可能です。
また、法人化による相続税対策も検討の価値があります。個人で保有する不動産に比べ、法人化した不動産投資は評価額が40~50%程度圧縮される傾向があります。特に複数物件を保有する場合、法人化による節税効果は年間50万円を超えることもあります。ただし法人化には設立費用や毎年の事務負担が増えるため、物件数と総資産額を考慮して判断する必要があります。
相続人間の紛争防止と遺産分割対策
相続税が増えるということは、相続人間での配分をめぐるトラブルも増える可能性があります。不動産は分割しにくい資産であるため、複数の相続人がいる場合、誰がその物件を相続するかは大きな問題となります。
不動産投資家の家族で最もよくあるトラブルは、「長男が全ての投資物件を相続し、次男は現金をもらう」という単純な配分では、実際の相続税負担が非常に不公平になるというものです。例えば長男が3000万円の不動産を、次男が3000万円の現金を相続したとしても、長男の相続税負担は次男の相続税負担の2倍以上になることがあります。
この問題を事前に防ぐためには、遺言書の作成が欠かせません。例えば「長男が年間収益200万円の物件を相続、次男には現金1000万円を相続」といった具体的な配分を示すことで、後々の紛争を防ぐことができます。さらに相続税の負担分も明記しておくことで、より公平な配分が実現できます。
また、投資用不動産を複数保有している場合は、あらかじめ相続順序や各自の相続分を明確にしておくことが重要です。特に収益性の異なる複数物件がある場合、配分のバランスを十分に検討する必要があります。稼ぎの良い物件を長男に、管理が簡単な物件を次男に、という配分も一つの方法です。
今からできる現実的な対策
路線価の上昇傾向は今後も続くと予想されるため、相続税対策は「先延ばしにできない課題」となっています。まず重要なのは、現在保有している物件の相続税評価額を正確に把握することです。税理士に相談し、現在の評価額がどうなっているのかを知ることから始めましょう。
その上で、以下の対策を優先度をつけて進めることをお勧めします。第一に、年110万円の生前贈与枠を活用した段階的な資産移転。第二に、借地権付きや築古物件など評価圧縮効果の高い物件への投資。第三に、複数物件を保有する場合の法人化検討。
相続税対策は単なる税金対策ではなく、長期的な資産承継戦略の一部です。2026年の路線価上昇を機に、家族の将来を見据えた計画的なアプローチを始めることが、結果として大きな節税につながるのです。今年中に一度、相続対策の専門家に相談することをお勧めします。
