高松市は人口約42万人を擁する四国最大の都市であり、四国の経済・行政の中心地です。国の出先機関や大手企業の四国支店が集まる支店経済都市として、転勤族の法人契約需要が安定しています。瀬戸大橋を経由して岡山駅まで約55分というアクセスの良さは本州との経済的なつながりを強め、四国の中でも投資対象として注目度の高い都市です。本記事では、企業支店・大学・瀬戸内国際芸術祭という需要の柱を、ことでん沿線やエリア別の利回りとあわせて分析します。
高松市の不動産投資環境
高松市の賃貸市場は、単なる学生需要や一般生活者需要ではなく、全国企業の人事異動に基づいた転勤族需要という構造的に安定した需要層を常に確保している点に特徴があります。複数の需要層が同時に存在することで、特定層の減少が市場全体に与える影響が軽減され、市場全体の空室率は四国内の他都市と比較して低い水準にあると評価されています。
需要源① 企業転勤者・法人契約需要
高松市に本社を持つ有力企業としては、四国電力、JR四国、百十四銀行などが挙げられます。これらの企業は四国全域に営業所や支社を展開しており、各地への人事異動が頻繁に行われています。加えて、東京・大阪・名古屋に本社を置く全国企業も、四国地域での営業・管理機能を高松市に集中させる傾向があります。
このため、高松市には継続的に企業転勤者が流入し、2〜3年の赴任期間を経て他地域へと転出していくサイクルが形成されています。法人契約による入居者は個人契約に比べて滞納リスクが低く、契約期間も比較的長期化する傾向があります。ターゲットとなる物件は1LDKから2LDKで、家賃帯は月額5.5万円から8.0万円程度、表面利回りは7%から10%の範囲が典型的です。
高松駅周辺の再開発
サンポート高松エリア
高松駅前のサンポート高松は、高松シンボルタワーを中心とした複合施設エリアです。オフィス・商業・文化施設が集積し、周辺の住宅需要を喚起しています。駅周辺の1Kは4.0万〜5.0万円、1LDKは5.5万〜7.0万円が相場です。新築・築浅物件の供給が増えており、築古物件は設備面での差別化が求められます。
サンポート地区はビジネストラベラーや企業出張者を主要ターゲットとした短期滞在型のマンスリーマンション形式での運営も増えており、月額4.5万円から7.0万円、利回り7%から10%程度の物件が中心です。
高松港周辺の整備
高松港は小豆島や直島など瀬戸内の島々へのフェリーターミナルがあり、観光拠点としても機能しています。瀬戸内国際芸術祭の効果で知名度が向上し、周辺エリアの活性化が進んでいます。サンポート地区の再開発と相まって、高松駅前から港にかけてのウォーターフロントは商業・観光・居住が一体となった高松市の新しい顔となりつつあり、利便性を重視する単身者やビジネス層の住宅需要を下支えしています。
丸亀町商店街と中心市街地
丸亀町商店街は全国的にも成功事例として知られる商店街再開発プロジェクトです。商業施設だけでなく分譲マンションも併設され、中心市街地の居住人口が増加傾向にあります。丸亀町・片原町周辺は歩いて暮らせる利便性が評価され、単身者・高齢者の需要が厚いエリアです。家賃相場は1K 3.8〜4.8万円、表面利回りの目安は7〜9%です。
大学周辺の学生需要
香川大学
香川大学は幸町キャンパス(高松市中心部)に約5,800人の学生が在籍しています。キャンパスが市中心部に位置するため、周辺の賃貸物件は学生と一般社会人の両方の需要があり、空室リスクが低い傾向です。学生向け物件は4年ごとに入退去が入れ替わる予測可能性の高いサイクルが特徴で、ワンルームや1Kなど単身向け物件は月額3.2万円から4.5万円程度、回転の速さから表面利回りは10%から14%と、法人契約物件よりも高くなる傾向があります。
高松大学・高松短期大学
高松大学は高松市南部に位置し、周辺の賃貸需要は学生に依存しています。大学周辺の1Kは2.5万〜3.5万円と市中心部より安く、物件価格も低いため利回りが高くなります。
瀬戸内国際芸術祭の波及効果
瀬戸内国際芸術祭は3年ごとに開催される大型イベントで、回によっては100万人を超える来場者を集めることもあります(2022年は約72万人)。開催期間中は宿泊施設への需要が急増し、短期賃貸市場が活況を呈します。これに加えて、芸術祭を契機として高松市を拠点とするアーティストやクリエイター、文化関連産業の従事者が市内への移住を検討するケースも見られます。
現時点ではこの効果は限定的ですが、文化インフラとしての高松市のブランド価値が向上すれば、長期的には年単位での継続的な人口流入につながる可能性があります。
瀬戸大橋・岡山アクセスの投資メリット
高松市はJR瀬戸大橋線で岡山駅まで約55分、岡山駅から新幹線で東京まで約3時間10分と、四国の中では本州へのアクセスが最も良い都市です。この交通利便性は以下の点で投資にプラスに作用します。
ことでん(高松琴平電気鉄道)沿線分析
琴平線
高松築港駅から琴電琴平駅を結ぶ路線で、沿線に住宅地が広がります。瓦町駅は3路線の結節点で商業施設も充実しています。栗林公園駅・三条駅周辺はファミリー需要が安定しています。瓦町から仏生山にかけては比較的新しい住宅開発が進み、2LDK〜3LDKのファミリー向けマンションが集積するエリアです(月額5.0〜7.0万円、利回り8〜11%程度)。
長尾線
高松築港駅から長尾駅を結ぶ路線です。花園駅・林道駅周辺は住宅エリアとして需要がありますが、郊外に向かうにつれて賃貸需要は薄くなります。
志度線
瓦町駅から琴電志度駅を結ぶ路線です。沿線は住宅と漁村が混在するエリアで賃貸需要は限定的です。投資対象としては瓦町駅周辺に限定するのが現実的です。
| 路線 | 推奨エリア | 1K賃料目安 | 投資適性 |
|---|---|---|---|
| 琴平線 | 瓦町〜三条 | 3.5〜4.5万円 | 高い |
| 長尾線 | 花園〜林道 | 3.0〜3.8万円 | 中程度 |
| 志度線 | 瓦町周辺のみ | 3.5〜4.0万円 | 限定的 |
エリア別利回りマップ
| エリア | 1K賃料目安 | 表面利回り目安 | 主な需要層 |
|---|---|---|---|
| 高松駅周辺 | 4.0〜5.0万円 | 6〜8% | ビジネス・転勤族 |
| 番町・栗林 | 4.5〜6.5万円 | 7〜10% | 転勤族・官公庁職員 |
| 丸亀町・片原町 | 3.8〜4.8万円 | 7〜9% | 単身・生活利便 |
| 幸町・中新町 | 3.2〜4.5万円 | 10〜14% | 香川大学学生 |
| 高松大学周辺 | 2.5〜3.5万円 | 9〜12% | 学生 |
| 栗林公園周辺 | 3.5〜4.5万円 | 7〜9% | ファミリー・一般 |
| 仏生山・太田 | 5.0〜7.0万円 | 8〜11% | ファミリー |
番町・栗林エリアは県庁・市役所などの官公庁が集中しており、公務員向けの社宅需要や転勤族の需要が厚いエリアです。単身者から小規模ファミリーまで幅広く、1Kから1LDKまで様々なサイズの物件が対象になります。なお、ことでん琴平線沿線の栗林公園周辺は、特別名勝・栗林公園に近い住環境の良さからファミリー・一般層の需要が安定したエリアで、月額3.5〜4.5万円、表面利回りの目安は7〜9%です。
ターゲット別投資戦略
法人契約・転勤族狙い
高松駅・番町周辺の1LDK〜2LDK、月額5.5〜8.0万円。法人契約対応と設備充実で、滞納リスクの低い安定した稼働を確保します。
学生狙い
香川大学周辺(幸町・中新町)のワンルーム・1K、月額3.2〜4.5万円。中心部立地で学生と社会人の双方を取り込め、空室期間の短縮が期待できます。
ファミリー狙い
ことでん琴平線の仏生山・太田エリアの2LDK〜3LDK、月額5.0〜7.0万円。新しい住宅開発エリアの利便性を活かし、長期入居を狙います。
高松市投資の長期的展望
高松市への不動産投資の強みは、その需要の多層的構造にあります。企業転勤者、大学学生、ビジネストラベラー、一般世帯など複数の需要層が同時に市場に存在することで、特定の需要層の減少が市場全体に与える影響を軽減できます。四国内の他都市が単一の需要源に依存しがちなのに対し、高松市は支店経済・大学・観光という複数のエンジンを併せ持つ点が、空室率の低さと投資安定性につながっています。法人契約による転勤者需要は景気変動の影響を受けにくく、学生需要は大学の定員に連動して予測可能であり、両者が時期をずらして市場を下支えする関係にあります。
さらに、高松市は瀬戸大橋を経由して本州と陸路で直結されており、交通インフラの充実度は四国内では最高水準です。日本全国からのアクセスが容易であるため、物件の流動性(売却しやすさ)も四国4県の中では相対的に高いと評価されます。地方都市投資では出口戦略の不確実性が課題となりますが、高松市はこの点で四国内の優位性を持ち、利回りの取れる地方投資でありながら売却時の選択肢を確保しやすい市場です。中長期では、ことでん琴平線沿線を中心とした駅徒歩圏の物件選択により、安定的な家賃収入が見込めます。四国地方への投資を検討する場合、高松市は最初に検討すべき有力候補市場と言えます。
よくある質問
Q. 高松市が四国内で投資先として安定していると言われる理由は何ですか。 A. 四国電力・JR四国・百十四銀行といった地場有力企業の本社機能と、全国企業の四国支店が集中する支店経済都市であるためです。2〜3年サイクルの企業転勤者による法人契約需要が常に存在し、市場全体の空室率が四国内の他都市と比較して低い水準に保たれています。
Q. 学生向け物件と法人契約物件では、どちらが利回りが高いですか。 A. 一般的に学生向け物件の方が高利回りです。香川大学周辺のワンルーム・1Kは月額3.2〜4.5万円ながら物件価格が低く、表面利回り10〜14%が目安です。一方、法人契約の1LDK〜2LDKは利回り7〜10%程度ですが、滞納リスクが低く稼働が安定します。
Q. ことでん沿線で投資する際、どの路線が有望ですか。 A. 3路線のうち琴平線が最も投資適性が高く、特に瓦町〜三条間が推奨されます。長尾線は中程度、志度線は瓦町駅周辺に限定するのが現実的です。郊外に向かうほど賃貸需要が薄くなる点に注意が必要です。
Q. 瀬戸内国際芸術祭は賃貸投資にどの程度影響しますか。 A. 3年ごとの開催期間中は短期賃貸市場が活況を呈し、アーティストやクリエイターの移住も見られます。ただし現時点での需要創出効果は限定的であり、恒常的な賃貸需要は企業支店・大学需要を基盤に判断するのが堅実です。
Q. 高松市の物件は売却(出口戦略)の面でも有利ですか。 A. 高松市は瀬戸大橋で本州と陸路直結され、四国内では交通インフラの充実度が最高水準です。全国からのアクセスが容易なため、物件の流動性は四国4県の中で相対的に高く、地方投資の課題である売却の不確実性を抑えやすい市場です。
高松市は支店経済・大学需要・瀬戸大橋アクセスという複数の柱で賃貸需要が支えられた四国最大の都市です。ことでん沿線の中でも琴平線沿線を中心に、駅徒歩圏内の物件を選定することが基本戦略です。エリア比較ツールで四国他都市との比較を行い、利回り計算ツールで収支を精査した上で投資判断を行いましょう。
