はじめに
一棟マンション投資は区分マンションと比べて投資規模が大きくなりますが、その分キャッシュフローも大きくなります。本記事では、仙台市内の中古RC造マンションを想定し、具体的な数字でシミュレーションを行います。
物件の前提条件
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 物件種別 | 一棟RCマンション |
| 所在地 | 仙台市太白区(長町駅 徒歩10分) |
| 築年数 | 18年(RC造) |
| 構造 | RC造 3階建 |
| 総戸数 | 12戸(1K×8戸、2DK×4戸) |
| 購入価格 | 5,800万円 |
| 1K賃料 | 4.2万円/月 |
| 2DK賃料 | 6.0万円/月 |
| 満室時月額家賃 | 57.6万円 |
| 土地面積 | 280m² |
| 建物面積 | 420m² |
ステップ1:利回りの計算
表面利回り
年間満室家賃 = 57.6万円 × 12ヶ月 = 691.2万円
[表面利回り](/glossary#gross-yield) = 691.2万円 ÷ 5,800万円 × 100 = 11.9%
ただし、空室率を考慮した「想定利回り」も計算します。
想定[入居率](/glossary#occupancy-rate-monthly) = 92%(空室率8%)
年間想定家賃 = 691.2万円 × 92% = 635.9万円
想定利回り = 635.9万円 ÷ 5,800万円 × 100 = 11.0%
実質利回り(NOI利回り)
年間の運営経費を見積もります。
| 経費項目 | 年間金額 |
|---|---|
| 管理委託手数料(5%) | 31.8万円 |
| 固定資産税・都市計画税 | 48.0万円 |
| 火災保険・地震保険 | 12.0万円 |
| 修繕積立金(自己積立) | 36.0万円 |
| 共用部電気・水道 | 8.0万円 |
| エレベーター保守(なし) | 0円 |
| 清掃費 | 6.0万円 |
| 広告費(AD) | 12.0万円 |
| 雑費・予備費 | 6.0万円 |
| 経費合計 | 159.8万円 |
NOI = 想定家賃収入 - 運営経費
= 635.9万円 - 159.8万円
= 476.1万円
[実質利回り](/glossary#net-yield)(NOI利回り) = 476.1万円 ÷ 5,800万円 × 100 = 8.2%
ステップ2:融資条件
総投資額 = 自己資金 1,200万円 + 諸費用 420万円 = 1,620万円
月々の返済額
月々の返済額 ≒ 188,000円([元利均等返済](/glossary#principal-equal))
年間返済額 ≒ 2,256,000円
ステップ3:キャッシュフロー計算
年間キャッシュフロー
| 項目 | 年額 |
|---|---|
| 想定家賃収入 | +635.9万円 |
| 運営経費合計 | -159.8万円 |
| ローン返済 | -225.6万円 |
| 年間手残り(税引前) | +250.5万円 |
月間キャッシュフロー
月間手残り ≒ 20.9万円
月20万円超のキャッシュフローは、会社員の副収入としては非常に大きな金額です。キャッシュフロー計算ツールで条件を変えて試算できます。
DSCR(返済余裕率)
DSCR = NOI ÷ 年間返済額
= 476.1万円 ÷ 225.6万円
= 2.11
DSCRが1.3以上あれば安全圏とされます。2.11は十分な余裕があります。
ステップ4:減価償却と税金
減価償却費の計算
RC造(築18年)の場合:
残存[耐用年数](/glossary#useful-life) = 47年 - 18年 + 18年 × 20% = 32.6年 → 33年
物件価格5,800万円のうち、建物割合を55%とすると:
建物価格 = 5,800万円 × 55% = 3,190万円
年間[減価償却](/glossary#depreciation)費 = 3,190万円 ÷ 33年 ≒ 96.7万円
不動産所得の計算
[不動産所得](/glossary#real-estate-income) = 家賃収入 - 経費 - 減価償却費 - ローン利息
= 635.9万円 - 159.8万円 - 96.7万円 - 80.3万円(初年度利息概算)
= 299.1万円
年収700万円のサラリーマンの場合(所得税率23%・住民税10%):
追加税負担 ≒ 299.1万円 × 33% ≒ 98.7万円
税引後キャッシュフロー
税引後CF = 税引前CF - 追加税負担
= 250.5万円 - 98.7万円
= 151.8万円(月約12.7万円)
ステップ5:長期シミュレーション
10年間のトータルリターン
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 税引前CF(10年合計) | +2,505万円 |
| 税金(10年合計概算) | -850万円 |
| 税引後CF(10年合計) | +1,655万円 |
| ローン残債(10年後) | 約2,900万円 |
| 売却想定価格(築28年) | 3,500〜4,500万円 |
| 売却益(残債差し引き後) | +600〜1,600万円 |
自己資金に対するリターン
10年間の税引後CF = 1,655万円
売却益(中間値) = 1,100万円
トータルリターン = 1,655万円 + 1,100万円 = 2,755万円
ROI = 2,755万円 ÷ 1,620万円 × 100 = 170.1%(10年)
年平均ROI ≒ 17.0%
ステップ6:修繕計画
一棟物件では修繕計画が重要です。以下は想定される主な修繕項目です。
| 時期 | 項目 | 想定費用 |
|---|---|---|
| 購入後3年目 | 外壁塗装・防水工事 | 350万円 |
| 購入後5年目 | 給湯器交換(一部) | 80万円 |
| 購入後8年目 | 屋上防水工事 | 150万円 |
| 購入後10年目 | 給排水管更新 | 300万円 |
修繕費用の積立として月3万円(年36万円)を経費に含めていますが、大規模修繕時には追加の出費が発生する可能性があります。購入前のインスペクションで建物の状態を確認し、修繕計画を立ててから購入判断をしてください。
ステップ7:リスクシナリオ
空室率が上昇した場合
| 空室率 | 年間CF(税引前) |
|---|---|
| 8%(基本シナリオ) | +250.5万円 |
| 15% | +200.2万円 |
| 25% | +128.5万円 |
| 35% | +56.7万円 |
空室率35%でもキャッシュフローはプラスを維持できます。これは物件のDSCRが高いためです。
金利が上昇した場合
| 金利 | 月間返済額 | 年間CF(税引前) |
|---|---|---|
| 1.8%(現行) | 18.8万円 | +250.5万円 |
| 2.5% | 20.6万円 | +228.9万円 |
| 3.5% | 23.1万円 | +198.9万円 |
| 4.5% | 25.6万円 | +168.9万円 |
金利が4.5%まで上昇しても年間168.9万円のCFが確保できます。ローンシミュレーターで様々な金利シナリオを試算できます。
この事例から学べること
一棟RCマンションのメリット
- 月20万円超のキャッシュフロー:副収入として大きなインパクト
- 空室リスクの分散:12戸あるため、1〜2戸の空きでも影響は限定的
- 高いDSCR:返済に十分な余裕がある
- 減価償却による節税効果:年96.7万円の減価償却費を計上可能
注意すべきポイント
- 初期費用が大きい:自己資金+諸費用で1,620万円が必要
- 修繕費用の計画:大規模修繕に数百万円の出費が発生
- 管理の責任:建物全体の管理を自分(または管理会社)で行う必要
- 出口の流動性:売却先が投資家に限定される
まとめ
- 仙台の一棟RC(5,800万円・12戸)は表面利回り11.9%、実質利回り8.2%
- 月間税引前CFは約20.9万円、税引後でも約12.7万円
- 10年間のトータルROIは約170%(年平均17%)
- 空室率35%・金利4.5%でもCFプラスを維持できる安全性
- 修繕計画と資金管理が長期運営の鍵
一棟マンション投資に興味のある方は、投資シミュレーションツールでご自身の条件を入れて試算してみてください。区分マンションとの比較記事もあわせてご参考ください。個別のご相談は投資相談から承っています。
