区分所有オフィスとはどのような不動産か
区分所有オフィスとは、一棟のオフィスビルの中の一室(専有部分)だけを区分所有し、賃貸に出して収益を得る投資手法です。マンションの一室を購入して住居として貸し出す「区分マンション投資」と考え方は似ていますが、対象がオフィス用途である点が異なります。都心部の中規模から大規模のオフィスビルで、一部フロアが区分所有形式で分譲されているケースがあり、比較的少額の自己資金で法人テナント向けの賃貸経営に参入できる手段として関心を持つ投資家がいます。
一棟のオフィスビルをまるごと取得する「一棟オフィス投資」に比べると初期投資額を大きく抑えられる一方で、建物全体の意思決定に自分の一存が及ばないという性質を併せ持ちます。共用部分の管理・修繕・建替えといった重要な意思決定は区分所有者全員による管理組合の合意で進められるため、区分マンションと同様に「一室のオーナー」でありながら「建物全体の一員」でもあるという二重の立場を理解しておく必要があります。
区分マンション投資・一棟オフィスビル投資との違い
区分所有オフィスの特徴を、近い投資対象と比較しながら整理します。
- 入居者属性:区分マンションの入居者は個人(居住用途)が中心ですが、区分所有オフィスの入居者は法人テナントが中心になります。法人契約は個人契約に比べて滞納リスクが低いとされる一方、退去時の原状回復や解約予告期間の取り決めが契約ごとに異なり、契約内容の精査がより重要になります。
- 賃料の変動要因:住宅賃料は生活必需性が高く景気変動の影響を受けにくいとされますが、オフィス賃料は企業の業績やオフィス需要の増減に左右されやすい傾向があります。
- 空室期間:オフィスは住居に比べて内装(間仕切りや配線)が入居企業ごとに異なるため、退去後の原状回復や次テナントの内装工事に時間がかかり、住居系より空室期間が長引きやすい点に注意が必要です。
- 流動性:区分所有オフィスは区分マンションに比べて売買市場に出回る物件数が少なく、購入希望者・売却希望者ともに限られるため、査定や売却に時間がかかりやすい傾向があります。
一棟オフィスビル投資と比べると、区分所有では建替えやリノベーションなど建物全体に関わる意思決定を単独で行うことができません。管理組合の議決権割合に応じてしか意見を反映できないため、将来的に大規模修繕や建替えの是非が議論になった際、自分の意向だけでは方向性を決められない点は理解しておくべきです。
区分所有オフィスに向いている投資家・向いていない投資家
区分所有オフィスは万人向けの投資対象ではありません。次のような投資家には検討の余地があります。
- すでに住居系の区分マンションや一棟アパートを保有しており、テナントの業種や用途を分散させてポートフォリオのリスク分散を図りたい投資家
- 都心部の好立地にある物件を、一棟買いよりも少ない自己資金で組み入れたい投資家
- 法人契約特有の長期契約や敷金の高さといった特徴を理解した上で、住居系とは異なる収益構造を許容できる投資家
一方で、次のような投資家には不向きな場合があります。
- 空室が出た際にすぐ売却して資金を回収したい、流動性を重視する投資家
- 管理組合の意思決定に関与する時間や関心を割きにくい投資家
- 景気後退局面でのオフィス需要減少リスクを許容しにくい投資家
出口戦略で直面しやすい課題
区分所有オフィスは、購入時よりも売却時に苦労するケースが目立つといわれます。理由は主に次の3点です。
第一に、買主候補となる投資家層が区分マンションに比べて薄いことです。オフィス投資は法人テナント管理の知見を求められるため初心者投資家が敬遠しやすく、結果として売却時の交渉相手が限られます。
第二に、金融機関の融資姿勢が区分マンションよりも慎重になりやすいことです。担保評価においてオフィス系区分所有は住居系に比べて流動性リスクが高いと見なされる傾向があり、買主が融資を受けにくいと売却価格の調整を迫られる可能性があります。
第三に、退去中・空室のタイミングでの売却は査定額が下がりやすいことです。オフィスは次テナントの内装工事期間が長引きやすいため、空室のまま売りに出すよりも、稼働中(テナント付き)の状態で売却するオーナーチェンジの形を優先したほうが、価格面で有利になりやすいといえます。
購入前に確認しておきたいチェックポイント
区分所有オフィスの購入を検討する際は、次のような点を事前に確認しておくと、後々のトラブルを避けやすくなります。
- 管理組合の運営状況(修繕積立金の積立状況、大規模修繕計画の有無)
- テナントの契約形態(定期借家か普通借家か、契約期間と更新条件)
- ビル全体の稼働率と主要テナントの入居年数
- 共用部分の設備更新履歴(空調やエレベーターなど、法人テナントが重視する設備の状態)
- 管理規約における用途制限(他の用途への転用が認められるか)
これらは物件概要書だけでは把握しきれない情報も多く、可能であれば管理組合の議事録や重要事項調査報告書を取り寄せて確認することをお勧めします。
まとめ
区分所有オフィスは、少額の自己資金で都心のオフィス賃貸市場に参入できる選択肢の一つですが、区分マンション投資とは異なる収益構造・流動性・管理組合との関係性を伴います。購入時の利回りだけでなく、将来の出口、つまり売却のしやすさまで見据えて、管理組合の運営状況やテナント構成を丁寧に確認したうえで投資判断を行うことが重要です。
