「4号特例」とは何か
建築基準法上、建築確認申請の際に構造関係規定や省エネ関連規定の審査を一部省略できる特例が「4号特例」と呼ばれてきました。木造2階建て以下の比較的小規模な建築物は、建築士が設計・工事監理を行うことを条件に、構造計算書などの詳細な審査書類の提出が省略され、確認申請の手続きが簡素化されていました。不動産投資家がアパートやシェアハウスを木造で新築・増改築する際、この特例によって設計期間や審査期間が短縮されるメリットがありました。
2025年4月施行の改正内容
2025年4月に施行された建築基準法の改正により、建築物の区分と審査対象が見直されました。従来「4号建築物」として特例の対象だった木造建築物の一部は、新たな区分(新2号建築物・新3号建築物)に再編され、規模や構造によっては構造関係規定・省エネ関連規定の審査を省略できなくなりました。背景には、近年の木造住宅の複雑化・大規模化により、従来の簡素な審査では耐震性・省エネ性能の担保が不十分ではないかという指摘があったことが挙げられます。
具体的にどの規模・構造の建築物が新たな審査対象に含まれるかは、建築物の階数・延床面積・構造形式によって細かく分かれるため、個別の物件について確認が必要な場合は、設計を依頼する建築士や所管の建築主事・指定確認検査機関に確認することが実務上不可欠です。
投資家への実務上の影響
確認申請に必要な書類の増加
審査省略の対象から外れる建築物では、構造計算書や省エネ計算書など、これまで提出を省略できていた図書の作成・提出が必要になります。これにより設計事務所の作業量が増え、確認申請の準備期間が従来より長くなる可能性があります。
審査期間の長期化リスク
提出書類が増えることで、確認検査機関による審査にかかる期間が延びる可能性があります。新築アパートの着工・竣工スケジュールを組む際は、従来より余裕を持ったスケジュールを想定しておくことが望ましいといえます。融資実行のタイミングを竣工予定日に合わせて計画している場合、審査期間の遅延が資金計画全体に波及する点にも注意が必要です。
設計・確認申請コストの増加
構造計算や省エネ計算を新たに行う分、設計事務所へ支払う設計料や確認申請にかかる手数料が増加するケースが考えられます。新築プロジェクトの事業収支を試算する際は、この点をコストに織り込んでおく必要があります。
増改築・リフォームへの影響にも注意
新築だけでなく、既存の木造アパートを増築したり、大規模なリフォーム(間取り変更を伴う改修など)を行う場合にも、確認申請が必要となるケースでは同様に審査対象の見直しの影響を受ける可能性があります。特に、既存の低層木造アパートを民泊やシェアハウスへ用途変更する際や、増床を伴うリノベーションを検討している投資家は、着手前に建築士へ相談し、確認申請の要否と必要書類を確認しておくことが重要です。既存不適格建築物に該当する物件では、増改築の内容次第で現行基準への適合が求められる範囲が広がる可能性もあるため、より慎重な事前確認が求められます。
既存物件の耐震性・省エネ性能への波及
この改正の趣旨は新築物件の審査強化にありますが、間接的な影響として、今後市場に供給される新築木造アパートは構造・省エネ両面での性能担保が明確化されることになります。中長期的には、既存の旧耐震基準や省エネ基準未対応の物件との資産価値・賃貸競争力の差が拡大していく可能性があります。既存物件を保有するオーナーは、耐震診断や省エネ改修の検討を計画的に進めることが、将来の資産価値維持につながります。
融資審査・事業収支への織り込み方
金融機関から建築資金の融資を受けて新築アパートを計画する場合、審査期間の長期化は着工日・竣工予定日の見直しにつながり、融資実行のタイミングにも影響を及ぼします。ローン契約における融資実行条件(竣工検査済証の提出など)が竣工時期を前提に設定されている場合、確認申請の審査が想定より長引くと、つなぎ融資の期間が延び、金利負担が増える可能性もあります。事業収支のシミュレーションを作成する際は、設計費・確認申請手数料の増加分に加えて、着工から竣工までのスケジュールに一定の余裕(バッファ)を織り込んでおくことが望ましいといえます。
設計事務所・施工会社選びで確認すべきこと
今回の改正は、設計を担当する建築士・設計事務所の実務対応力によって、投資家が受ける影響の大きさが変わってくる面があります。木造アパートの設計・施工実績が豊富で、構造計算や省エネ計算の体制が整っている設計事務所・工務店を選ぶことが、審査の遅延やコスト増を最小限に抑えるうえで重要です。見積もりを依頼する段階で、今回の改正を踏まえた確認申請の想定スケジュールと、構造計算・省エネ計算にかかる費用が設計料にどう含まれているかを、具体的に確認しておくとよいでしょう。
まとめ:着工前の確認と専門家への早期相談が鍵
「4号特例」の縮小は、木造アパートの新築・増改築を検討する投資家にとって、審査書類の増加・審査期間の長期化・コスト増という形で実務に影響します。個別の物件がどの区分に該当し、どのような審査を受けるかは建築物の仕様によって異なるため、プロジェクトの初期段階から設計を担当する建築士や確認検査機関と密に連携し、スケジュールとコストの見通しを早めに立てておくことが、投資判断を誤らないための基本となります。
