コロナ禍を契機に普及したリモートワークは、2025年以降も定着率約25%を維持しています。東京圏からの転出超過が続くなか、移住先として選ばれる地方都市では賃貸需要が増加し、不動産投資の新たな機会が生まれています。リモートワーク移住の投資は、従来の地方投資とは異なり「都市部の所得水準を持つ入居者」を獲得できる点が最大の魅力です。物件のスペック(通信環境・ワークスペース)を移住者ニーズに合わせることで、地方物件でありながら安定した賃料収入を実現できます。本記事では、移住人気都市の投資指標とリモートワーカー向け物件の差別化戦略を整理します。
テレワーク普及率と移住需要の推移
| 年 | テレワーク実施率 | 地方移住相談件数 |
|---|---|---|
| 2019年 | 約10% | 約33,000件 |
| 2020年 | 約28% | 約49,000件 |
| 2022年 | 約30% | 約52,000件 |
| 2024年 | 約26% | 約58,000件 |
| 2025年 | 約25% | 約60,000件(推計) |
大企業でも週2〜3日出社のハイブリッド勤務が一般的になり、月1〜2日の出社であれば地方都市や自然豊かなエリアでの居住が可能になりました。企業本社への物理的アクセス性よりも、生活環境の質、自然環境、地域コミュニティの充実度が物件選択の基準になり始めています。
移住人気都市の投資ランキング
移住者数の増加率、賃貸需要の安定性、利回り、空室率を総合的に評価したランキングです。
| 順位 | 都市 | 総合スコア | 利回り | 空室率 | 移住者増加率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 長野県松本市 | 85点 | 8.0〜12.0% | 10〜14% | +8.5% |
| 2 | 静岡県沼津市 | 83点 | 7.5〜11.0% | 11〜15% | +7.2% |
| 3 | 栃木県那須塩原市 | 81点 | 9.0〜14.0% | 12〜16% | +9.0% |
| 4 | 福岡県糸島市 | 80点 | 6.5〜9.0% | 8〜12% | +6.8% |
| 5 | 山梨県北杜市 | 78点 | 9.5〜15.0% | 14〜18% | +10.2% |
| 6 | 広島県尾道市 | 76点 | 8.5〜13.0% | 13〜17% | +5.5% |
| 7 | 鹿児島県霧島市 | 74点 | 8.0〜12.0% | 14〜19% | +4.8% |
| 8 | 北海道ニセコ町 | 72点 | 5.0〜8.0% | 10〜15% | +12.0% |
具体的な利回りは利回りシミュレーターで試算できます。
上位3都市の比較
| 項目 | 松本市(長野) | 沼津市(静岡) | 那須塩原市(栃木) |
|---|---|---|---|
| 人口 | 約24万人 | 約19万人 | 約11.5万人 |
| 東京からのアクセス | 特急約150分 | 新幹線+在来線約50分 | 新幹線約75分 |
| 1K家賃相場 | 4.0〜5.5万円 | 3.8〜5.0万円 | 3.5〜4.5万円 |
| 2LDK家賃相場 | 5.8〜7.5万円 | 5.5〜7.0万円 | 4.8〜6.5万円 |
| 物件価格(1K) | 300〜600万円 | 250〜500万円 | 200〜400万円 |
| 表面利回り | 8.0〜12.0% | 7.5〜11.0% | 9.0〜14.0% |
松本市は北アルプスの自然環境と信州大学の知的基盤、沼津市は海と都心アクセスのバランス、那須塩原市は温泉リゾートと別荘地リノベーション物件の供給が強みです。
リモートワーク移住者が選ぶエリアの特性
- 信州エリア(松本・上田など): 都心への週1〜2日の出社でも新幹線・特急でのアクセスが比較的容易で、自然環境が豊かなためリモートワーカーから注目を集めています。移住者増加により、以前は安価だった賃貸物件の家賃が上昇傾向にあります
- 静岡県(熱海・三島・沼津): 新幹線で東京60〜90分という立地から、リモートワーカーだけでなく二拠点居住者からも需要が発生しています。二拠点居住者向け物件は平日日中に空家になりやすいため、短期賃貸やバケーションレンタルでの運営が効率的です
- 福岡市: ソフトバンクやヤフーなどのIT大手がオフィスを構えるスタートアップ集積地で、東京からのIT人材の転職・移住が増加しています。給与水準が東京より低い傾向にあるため物件取得価格も安く、利回り7〜10%が実現可能な地域も存在します
- 沖縄県: 年間通じた温暖な気候がワーケーション層から注目を集め、Wi-Fi完備でリモートワークに適した物件への需要が、従来の観光客向け宿泊需要とは異なる層から発生しています
- 岡山市: 全国的に災害リスクが低く気候が温暖という特性により、リスク回避型のリモートワーカーや移住希望者の受け皿として注目度が上昇しています
移住者が重視する住環境条件
| 条件 | 重視度 | 従来の賃貸との違い |
|---|---|---|
| 高速インターネット(光回線) | 最重要 | 回線速度100Mbps以上必須 |
| ワークスペース(書斎) | 非常に高い | 1部屋多い間取りが好まれる |
| 駐車場 | 高い | 地方では必須(2台分が理想) |
| 自然環境・景観 | 高い | 窓からの眺望が家賃に反映 |
| コワーキング施設への近さ | 中 | 徒歩圏内にあると優位 |
| 駅からの距離 | 中〜低 | 車社会のため優先度低下 |
リモートワーカーが最優先する高速インターネット環境は、光回線の引込みが標準装備であることが前提で、Wi-Fiの電波強度や複数デバイスの同時接続対応も求められます。Web会議が多い層は防音性能も重視し、外部音の遮音だけでなく自分の音声が周辺に漏れない対策が長期契約の条件になります。
物件タイプ別の投資指標比較
| 都市 | 1K利回り | 2LDK利回り | 戸建て利回り | 推奨物件タイプ |
|---|---|---|---|---|
| 松本市 | 8〜12% | 7〜10% | 8〜11% | 2LDK(書斎付き) |
| 沼津市 | 7.5〜11% | 6.5〜9% | 7〜10% | 戸建て(海近) |
| 那須塩原市 | 9〜14% | 8〜12% | 9〜13% | 戸建て(別荘転用) |
| 糸島市 | 6.5〜9% | 5.5〜8% | 6〜9% | 2LDK(海近) |
| 北杜市 | 9.5〜15% | 8〜12% | 9〜14% | 戸建て(自然環境) |
投資戦略:移住需要を取り込む
リモートワーカー向け物件の差別化とリノベーション
移住者向け賃貸物件は以下の設備投資により、通常物件より月額5,000〜10,000円の家賃プレミアムを乗せることが可能です。
| 設備投資 | 費用目安 | 家賃上昇効果 |
|---|---|---|
| 光回線導入(物件共用) | 3〜5万円/月 | +3,000〜5,000円/月 |
| ワークスペース造作 | 30〜80万円 | +5,000〜8,000円/月 |
| 宅配ボックス設置 | 15〜30万円 | +2,000〜3,000円/月 |
| Web会議用防音ブース | 20〜50万円 | +3,000〜5,000円/月 |
既存の地方物件の多くは従来の長期賃貸を前提に設計されており、リモートワーク対応設備が不足しています。書斎コーナーの新設やカウンターデスクの設置などは数十万円程度の小規模投資で実現でき、家賃上昇と空室率低下の両方をもたらします。移住初期段階の入居者は家具付き物件を好む傾向があるため、3ヶ月〜1年単位の中期賃貸として運営すれば高い家賃単価を実現できますが、入れ替わりに伴う清掃・修繕コストの増加には注意が必要です。
推奨投資戦略
- 二拠点居住者向け: 新幹線駅徒歩圏の1LDK〜2LDKを取得。週2〜3日の出社に対応可能な立地で差別化
- 完全移住者向け: 郊外の戸建てをリノベーション。書斎スペースと高速回線を完備し、ファミリー層に訴求
- サブスク型多拠点居住: ADDressやLivingAnywhere Commonsと提携し、安定稼働率を確保
リスク要因と持続性の見極め
| リスク | 影響度 | 対策 |
|---|---|---|
| テレワーク縮小・出社回帰 | 中 | 通常賃貸にも転用可能な物件選定 |
| 移住ブームの一過性 | 中 | 地元需要も見込めるエリアを選定 |
| 地方の人口減少 | 中〜高 | 人口増加・微減エリアに限定 |
| 管理の困難さ | 中 | 現地管理会社の活用 |
一部の大企業では出社回帰の動きも見られるため、完全リモート前提の設計は避け、週2〜3日の出社に対応できる立地・施設設計にしておくことがリスク回避につながります。新しい需要を捉える機会である一方、トレンドの持続性と地元就業人口の需要との両立を考慮した慎重な物件選定が不可欠です。
よくある質問
リモートワーク移住向け投資の最大の魅力は何ですか
都市部の所得水準を持つ入居者を地方物件で獲得できる点です。通信環境やワークスペースを移住者ニーズに合わせることで、地方でありながら家賃プレミアム(月5,000〜10,000円)を乗せやすく、安定した賃料収入を実現できます。
どのエリアが投資先として有望ですか
新幹線で東京アクセスの良い長野県松本市・静岡県沼津市・栃木県那須塩原市が総合評価で上位です。IT移住が進む福岡市、ワーケーション需要の沖縄、災害リスクの低い岡山市なども、移住者層の属性に応じた選択肢となります。
リモートワーカー向けに最も効果的な設備投資はどれですか
光回線の導入とワークスペースの造作です。光回線は移住者にとって必須要件であり、書斎コーナーの新設などは数十万円程度の小規模投資で家賃上昇と空室率低下の両方をもたらします。Web会議用の防音対策も長期契約につながりやすい設備です。
出社回帰でリモート需要が縮小するリスクへの備えは
完全リモート前提の設計を避け、週2〜3日の出社に対応できる立地と施設にしておくことです。通常賃貸や地元需要にも転用できる物件を選び、人口が増加・微減にとどまるエリアに限定することで、トレンド変化への耐性を高められます。
家具付きの中期賃貸やサブスク型運用は有効ですか
移住初期段階の入居者は全家具を購入する余裕や意思がない傾向にあるため、家具付き物件への需要が高く、3ヶ月〜1年単位の中期賃貸として運営すれば高い家賃単価を実現できます。ADDressやLivingAnywhere Commonsといった多拠点居住サービスと提携して稼働率を確保する方法もあります。ただし短期契約は入居者の入れ替わりが多く、清掃・修繕や入退去手続きのコストが増える点を織り込み、通常賃貸への転用可能性も確保しておくことが安全です。
