NOI(営業純利益)とは何か
NOI(Net Operating Income、営業純利益)は、不動産投資における物件の収益力を測る最も基本的な指標です。「物件そのものがどれだけ稼ぐか」を示し、ローン返済や税金、資産評価などあらゆる財務分析の土台となります。
NOIの基本計算式:
NOI = 有効粗収入(EGI)− 運営費用(OpEx)
NOIはローン返済前・税引前の数字です。これを理解することが重要です。ローン返済額や所得税・法人税はNOIの計算に含めません。
ステップ1:有効粗収入(EGI)の算出
NOI計算の第一歩は「実際に受け取れる家賃収入」の正確な把握です。
潜在総収入(PGI)から始める
潜在総収入(PGI):全戸満室・延滞なしの年間家賃収入の総額
例:8戸 × 月額7万円 × 12ヶ月 = 672万円
空室損失と滞納損失を差し引く
現実には空室や家賃滞納が発生します。
- 空室損失:想定空室率 × PGI(例:10% × 672万円 = 67.2万円)
- 滞納損失:入居者の家賃未払い(地域・物件によって異なるが1〜2%が目安)
その他収入を加算する
- 駐車場収入
- 共益費(管理費)
- 自動販売機収入
- 看板・アンテナ設置料
有効粗収入(EGI) = PGI − 空室損失 − 滞納損失 + その他収入
計算例:672万円 − 67.2万円 − 6.7万円 + 12万円 = 610.1万円
ステップ2:運営費用(OpEx)の把握
NOI計算でよく間違えやすいのが「何を運営費用に含めるか」です。
含めるべき費用(NOI計算に含める)
| 費目 | 目安 |
|---|---|
| 管理委託費 | 家賃収入の5〜8% |
| 建物管理費(清掃・設備保守) | 月2〜5万円/棟 |
| 固定資産税・都市計画税 | 購入価格の0.5〜1.5%/年 |
| 損害保険料(火災・地震保険) | 年5〜30万円 |
| 修繕費(経常的なもの) | 築年数に応じて変動 |
| 入退去費用(原状回復・広告費) | 年間回転率 × 費用単価 |
含めてはいけない費用(よくある計算ミス)
ローン元利返済額:NOIはファイナンシング前の数字です。返済額を差し引いた数字はNCF(Net Cash Flow)または税引前キャッシュフロー(BTCF)と呼びます。
減価償却費:会計上の費用であり、実際のキャッシュアウトではありません。NOI計算には含めません。
所得税・法人税:税引前の数字がNOIです。
大規模修繕積立金(一部の考え方):慣行によって扱いが異なります。定期的な大規模修繕を折り込む場合は「資本的支出(CapEx)」として別途管理し、NOIからは除くのが一般的です。
ステップ3:NOI計算の実例
具体的な物件で計算してみましょう。
物件データ
有効粗収入(EGI)の計算
- PGI:10戸 × 6万円 × 12 = 720万円
- 空室損失:720万円 × 15% = 108万円
- 滞納損失:720万円 × 1% = 7.2万円
- 駐車場収入:10台 × 5,000円 × 12 = 60万円
- EGI = 720 − 108 − 7.2 + 60 = 664.8万円
運営費用(OpEx)の計算
- 管理委託費:664.8万円 × 7% = 46.5万円
- 建物管理費:年36万円(月3万円)
- 固定資産税:年45万円
- 保険料:年8万円
- 修繕費(経常):年24万円
- 入退去費用:年20万円
- OpEx合計:179.5万円
NOI = 664.8万円 − 179.5万円 = 485.3万円
表面利回りで換算すると:485.3万円 ÷ 7,500万円 ≈ 6.47%(NOI利回り・還元利回り)
NOIを活用した物件評価:Cap Rateとの関係
NOIの主要な活用方法のひとつが**キャップレート(Cap Rate)** による物件価値評価です。
物件価値 = NOI ÷ Cap Rate
上記の例でCap Rateを5%と仮定すると: 485.3万円 ÷ 0.05 = 9,706万円(理論価値)
購入価格7,500万円に対して理論価値が高いため、この物件は割安と判断できます。
NOI計算のよくある落とし穴
1. 満室想定の楽観計算:空室率を5%に設定し、実際は15〜20%になるケースが多い。地域の実態空室率を調査しましょう。
2. 修繕費の過小計上:築古物件は修繕費が年々増加します。築20年超の物件は家賃収入の10〜15%程度を修繕費として見込むのが現実的です。
3. 入退去コストの無視:入居者の入れ替えにかかる広告費・原状回復費・空室期間は大きなコストです。
4. 固定資産税の誤認識:購入直後は前オーナーの税額を参考にしますが、翌年以降は再評価で変動することがあります。
まとめ:正確なNOI計算が投資判断の土台
NOIは不動産投資の意思決定において中心的な役割を果たします。甘い試算は投資失敗の最大原因のひとつです。
正確なNOIを算出するには:
- 空室率・滞納率は地域実態に基づいて保守的に設定する
- 運営費用を漏れなく計上する(特に修繕費・入退去費)
- ローン返済・税金・減価償却はNOIに含めない
物件の「真の収益力」を示すNOIをマスターすることで、表面利回りに惑わされない本質的な物件評価ができるようになります。
