盛土規制法とは
2023年5月26日に「宅地造成及び特定盛土等規制法(通称:盛土規制法)」が施行されました。これは2011年に廃止された旧「宅地造成等規制法(宅造法)」に代わる新しい法律です。

制定のきっかけは、2021年7月の熱海市伊豆山地区における大規模土石流災害です。この災害では、適切な管理がなされていない盛土が崩壊し多数の死者・行方不明者が出ました。この反省から、盛土に関する規制を全国的に強化・一元化する法律が整備されました。
不動産投資家にとって、この法律は物件の取得・開発・売却の各フェーズで影響を持つ可能性があります。
旧法との主な違い
規制対象の拡大
旧宅造法は「宅地造成工事規制区域」に限定して規制を行っていましたが、盛土規制法では規制区域が大幅に拡充されました。
| 規制区域 | 概要 |
|---|---|
| 宅地造成等工事規制区域 | 従来の宅造規制区域を継承・更新。都道府県知事が指定 |
| 特定盛土等規制区域 | 宅地造成等工事規制区域外でも崩落リスクが高い区域を指定。市街地から離れた山林・農地も含まれる可能性がある |
この二区域体制により、従来は規制対象外だったエリアの盛土も規制の対象となりました。
許可・届出制度の強化
区域内での宅地造成・特定盛土等工事には、都道府県知事(または政令指定都市市長等)の許可が必要です。許可を得ずに工事を行った場合、是正命令や罰則の対象となります。また、2m超の盛土・掘削等の工事には技術的基準への適合が求められます。
既存不適格盛土への対応
法施行時点で既に存在する盛土のうち、危険性が高いものについては、行政が改善命令・撤去命令を出すことができます。
不動産投資への具体的影響
土地取得・開発への影響
開発コストの増加 新たな規制区域内で土地の造成・盛土を行う場合、許可取得・技術基準への適合が義務付けられます。開発計画の変更や追加費用が発生する可能性があります。
許可取得に伴う工期延長 許可申請から取得まで一定の期間がかかるため、開発スケジュールに余裕を持たせる必要があります。
既存物件のリスク評価
盛土地盤物件の購入リスク 過去に盛土が行われた土地に建つ既存物件を購入する場合、地盤の安全性確認が重要です。特に斜面地・造成地・旧農地転用地では、地盤調査(スウェーデン式サウンディング試験等)を実施することが推奨されます。
行政命令リスク 既存の盛土が新法の基準に照らして危険と判断された場合、行政から改善・撤去命令が出る可能性があります。土地を保有しているオーナーは費用負担を求められるリスクがあります。
売却時の影響
物件情報の開示義務 売買契約時の重要事項説明において、対象物件が盛土規制法の規制区域内に位置するかどうかの説明が求められます。規制区域内の物件は買主の懸念材料となり、売却価格や交渉条件に影響する可能性があります。
物件選定時のチェックポイント
1. 規制区域の確認
物件が「宅地造成等工事規制区域」または「特定盛土等規制区域」に指定されているかどうかを確認します。各都道府県のウェブサイトやハザードマップ、役所の窓口で確認できます。
2. 造成履歴の確認
物件の造成履歴(もともと農地・山林だったか、切土か盛土か)を公図・航空写真・旧地図で調べることが重要です。特に以下の場合は注意が必要です。
- 傾斜地や谷地形を埋めた造成地
- 比較的新しい宅地(1970年代以降の土地区画整理・ニュータウン開発地等)
- 元農地・水田の転用地
3. 地盤調査の実施
盛土地盤に建つ建物を購入する際には、売主や仲介業者が地盤調査結果を持っているか確認し、ない場合は購入前調査(買付後・契約前の条件付き調査)を検討します。
4. ハザードマップとの照合
国土交通省のハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ)で土砂災害警戒区域・急傾斜地崩壊危険区域との重複を確認します。
まとめ
盛土規制法は、従来の宅地造成規制の穴を埋める形で施行された重要な法律です。不動産投資家として影響が生じるのは主に(1)造成を伴う開発計画、(2)盛土地盤物件の取得リスク評価、(3)売却時の情報開示の3点です。物件取得時には造成履歴・地盤状況・規制区域の確認を徹底し、長期保有に耐えうる安全な物件を選定することが求められます。
