平成21年から平成22年にかけて購入した土地を売るとき、譲渡所得から最大1,000万円を差し引ける特例があります(国税庁 No.3225)。取得した時期が限られているため、見落とされやすい特例です。この記事では、租税特別措置法35条の2と国税庁の案内に沿って、対象になる土地の要件、控除額の考え方、ほかの特例と併用できない点、申告の手続きを整理します。実際に適用できるかどうかの判断は、税理士に相談してください。
平成21年・22年に取得した土地等の1,000万円特別控除とは
この特例は、個人が平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に取得した国内にある土地等を譲渡したとき、その年の長期譲渡所得の金額から1,000万円を控除できるものです(国税庁 No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除)。根拠は租税特別措置法35条の2で、条文の見出しは「特定期間に取得をした土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」です(e-Gov 法令検索 租税特別措置法)。
ここでいう「土地等」は、土地と土地の上に存する権利(借地権など)を指します。建物は含まれません。アパートや貸家を土地ごと売る場合でも、この特例の対象になるのは土地等の譲渡に係る部分だけです。売買代金を土地と建物に分ける必要があるため、契約書での内訳の書き方も申告に影響します。
対象になる土地の要件
国税庁の案内と条文をもとに、要件を並べると次のとおりです(国税庁 No.3225・e-Gov 法令検索 租税特別措置法35条の2)。
- 平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に取得した土地等であること
- 国内にある土地等であること
- 売った年の1月1日において、所有期間が5年を超えていること(平成21年に取得した土地等は平成27年以降、平成22年に取得した土地等は平成28年以降の譲渡が対象)
- 親子や夫婦など特別な間柄にある者から取得した土地等ではないこと(生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人などが含まれます)
- 相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済および所有権移転外リース取引により取得した土地等ではないこと
つまり、平成21年・22年に第三者から購入した土地が典型的な対象です。親から相続した土地は、親がその時期に買ったものであっても、相続人は相続で取得しているため要件5を満たさず、対象外です。現行の条文は取得の期間と保有期間で要件を定めており、売る年を区切る文言は置かれていません。
控除額は1年の譲渡全体で1,000万円が上限
控除できる金額は1,000万円で、該当する土地等の譲渡に係る譲渡所得の金額が1,000万円に満たない場合は、その金額が控除額になります(国税庁 No.3225)。
条文は「その年中にその譲渡をした土地等の全部」について長期譲渡所得の金額から1,000万円を控除する形になっています(e-Gov 法令検索 租税特別措置法35条の2)。同じ年に対象の土地を2か所売っても、控除は合計で1,000万円までです。土地ごとに1,000万円ずつ引けるわけではありません。
ほかの特例と併用できない点
この特例は、ほかの譲渡所得の特例と重ねて使えません。条文上の制限は2つの層に分かれています(e-Gov 法令検索 租税特別措置法35条の2)。
- その年の譲渡全体が対象外になるもの: その年に譲渡した土地等の全部または一部について、収用等の場合の課税の特例(33条から33条の3)、36条の2、36条の5、特定の事業用資産の買換えの特例(37条)、37条の4、37条の8の適用を受ける場合は、その年の土地等の譲渡全部についてこの控除を使えません
- その譲渡自体が対象から外れるもの: 固定資産の交換の特例(所得税法58条)、収用等の5,000万円特別控除(33条の4)、34条から35条までの特別控除(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除などを含む)の適用を受ける譲渡は、この特例の対象となる譲渡に含まれません
国税庁の案内も、要件として「収用等の特別控除や事業用資産の買換えの課税の繰延べなど他の譲渡所得の特例の適用を受けないこと」を挙げています(国税庁 No.3225)。たとえば自宅の敷地を平成21年に買っていた場合、居住用の3,000万円控除とこの1,000万円控除を同じ譲渡で重ねることはできず、どちらか一方を選ぶことになります。どちらが有利かは譲渡益の額や翌年以降の売却予定でも変わるため、税理士に試算を依頼してください。
適用を受けるための申告と添付書類
この特例は、確定申告書に適用を受ける旨を記載し、所定の書類を添付した場合に限り適用されます(e-Gov 法令検索 租税特別措置法35条の2第3項)。控除によって税額がゼロになる場合でも、申告をしなければ特例は受けられません。
国税庁の案内が挙げる添付書類は次のとおりです(国税庁 No.3225)。
登記事項証明書は、不動産番号を所定の書類に記載することで添付を省略できる場合があると案内されています。
売却前に確認しておきたいこと
平成21年・22年の取得から年数がたっているため、書類が手元に残っていないこともあります。売り出す前に次の点を確認しておくと、申告の段階で慌てずに済みます。
- 取得の日と原因: 登記事項証明書の権利部で、所有権移転の日付と原因(売買か、相続・贈与か)を確かめます。取得の日を契約日と引渡日のどちらで考えるかで判定が変わりそうな場合は、早めに税理士に確認します
- 売主との関係: 親族や自分が関係する法人から買っていないかを確認します
- 取得時の売買契約書: 取得費の計算にも使うため、保管場所を確かめておきます
- 土地と建物の価格の内訳: 収益物件を一括で売る場合は、土地部分の譲渡所得を計算できるように内訳を決めておきます
- 同じ年に予定しているほかの売却: 自宅の売却や事業用資産の買換えを同じ年に予定している場合は、併用できない特例との関係を整理します
譲渡所得の計算の基本や長期・短期の区分は、不動産売却時の税金完全ガイドで解説しています。特例を使うかどうかで手取りが大きく変わることもあるため、売買契約の前に税理士へ相談し、必要書類をそろえたうえで申告に臨んでください。
