
不動産投資の確定申告と税金に関するよくある質問を30問厳選。基本的な手続きから経費計上、減価償却、青色申告、法人化、売却時の譲渡所得税、消費税、相続・贈与まで、カテゴリ別にわかりやすく回答します。なお、税制は改正されることがあり、個別の事情によって取り扱いが異なる場合があります。重要な判断は最新の情報を確認のうえ、税理士などの専門家にご相談ください。
毎年2月16日〜3月15日が確定申告期間です(土日祝日の場合は翌営業日にずれます)。1月1日から12月31日までの1年間の所得について申告します。期限を過ぎると無申告加算税や延滞税が課される場合があるため、余裕を持って準備しましょう。
税務署への書面提出、e-Tax(電子申告)、郵送の3つの方法があります。e-Taxを利用すると、自宅からオンラインで申告でき、青色申告特別控除65万円の適用も可能です。マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマートフォン)があれば、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」から手軽に申告できます。
不動産所得は「総収入金額 - 必要経費」で計算します。総収入金額には家賃・礼金・更新料・共益費などが含まれます。必要経費には管理費・修繕費・減価償却費・借入金の利息・固定資産税・火災保険料などが計上できます。なお、敷金は退去時に返還するため収入には含めません(ただし返還しない部分は収入となります)。
主な書類として、(1)確定申告書B、(2)不動産所得の収支内訳書(白色申告)または青色申告決算書、(3)源泉徴収票(給与所得者の場合)、(4)ローン返済予定表、(5)管理費・修繕費の領収書、(6)固定資産税の納税通知書、(7)火災保険料の証明書、(8)不動産取得時の売買契約書のコピーなどが必要です。
主な経費として、管理会社への管理委託料、修繕費、減価償却費、借入金の利息部分、固定資産税・都市計画税、火災保険料・地震保険料、仲介手数料(取得時は取得費に算入)、不動産取得税、司法書士報酬、交通費(物件視察等)、通信費(不動産関連の連絡)、書籍・セミナー費用などが挙げられます。
ローン返済の元金部分は経費になりません(利息部分のみ経費計上可能)。また、所得税・住民税、生計費(私的な支出)、ローンの保証料(繰延資産として償却する場合を除く)、自宅の家賃やローン返済なども不動産投資の経費にはなりません。プライベートとの按分が必要な費用(携帯電話代、車両費等)は、事業使用割合のみ計上できます。
修繕費は原状回復のための支出で、その年の経費として全額計上できます(例:壁紙の張替え、設備の修理)。一方、資本的支出は物件の価値を高める支出で、減価償却資産として耐用年数にわたって償却します(例:間取り変更、高性能設備への交換)。一つの修繕で20万円未満の場合は修繕費として処理できることが多いです。
不動産投資に直接関係する物件視察の交通費(電車代・バス代・ガソリン代・高速代など)は経費として計上できます。ただし、プライベートの旅行を兼ねている場合は事業使用割合で按分する必要があります。領収書やメモ(日付・目的・金額)を保管しておきましょう。
自宅の一部を不動産投資の事務作業に使用している場合、通信費・光熱費・家賃などの一部を経費として計上できます。これを「家事按分」と呼びます。按分方法は、面積比(自宅の作業スペースの面積÷自宅全体の面積)や時間比(作業時間÷24時間)などが一般的です。合理的な根拠をもって按分割合を決め、記録しておくことが重要です。
主な法定耐用年数は、RC造(鉄筋コンクリート)が47年、重量鉄骨造が34年、軽量鉄骨造が19〜27年(鉄骨の厚みによる)、木造が22年です。中古物件の場合は「簡便法」で残存耐用年数を計算します。例えば、築20年のRC造マンションの場合、残り耐用年数は(47-20)+(20×0.2)=31年となります。
売買契約書に土地・建物の内訳が記載されている場合はそれに従います。記載がない場合は、固定資産税評価額の比率で按分する方法が一般的です。例えば、固定資産税評価額が土地1,200万円・建物800万円の場合、建物割合は40%となり、取得費用全体の40%が減価償却の対象となります。
建物の減価償却は定額法で計算します(2016年4月以降取得の場合)。計算式は「建物の取得価額 × 償却率」です。償却率は法定耐用年数に応じて定められています(例:RC造47年の償却率は0.022、木造22年は0.046)。中古物件は残存耐用年数に対応する償却率を使用します。
主なメリットは3つです。(1)最大65万円の青色申告特別控除(e-Taxで電子申告した場合、事業的規模の場合)、(2)赤字の3年間繰越控除(翌年以降の黒字と相殺可能)、(3)事業的規模(5棟10室以上)の場合は事業専従者給与の経費計上が可能。白色申告と比べて大きな節税効果があります。
青色申告を行うには、(1)事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出すること(開業日から2ヶ月以内、または青色申告をしようとする年の3月15日までに提出)、(2)複式簿記で記帳すること、(3)貸借対照表と損益計算書を添付して確定申告することが必要です。会計ソフトを使えば複式簿記の記帳も比較的容易に行えます。
不動産貸付が事業的規模かどうかの判定基準です。おおむね独立家屋5棟以上、またはアパート等10室以上を貸し付けている場合に事業的規模と認められます。事業的規模の場合、青色申告特別控除65万円の適用、事業専従者給与の経費計上、貸倒損失の即時計上など、より有利な税制が適用されます。
法人化のメリットとしては、(1)一定以上の所得がある場合に法人税率の方が個人の所得税率より低くなる、(2)経費にできる範囲が広がる(役員報酬、出張旅費規程など)、(3)損失の繰越が最大10年間(個人は3年)、(4)相続対策として活用できる、などが挙げられます。ただし、設立・維持のコストや手間もあるため、規模や所得水準に応じた判断が必要です。
損益通算とは、不動産所得の赤字を給与所得など他の所得と相殺して、課税所得を減らすことができる制度です。例えば、減価償却費により不動産所得が赤字になった場合、その赤字分を給与所得から差し引くことで、所得税と住民税が軽減されます。ただし、土地の取得に関する借入金の利息部分は損益通算の対象外となる点に注意が必要です。
物件数が少なく収支がシンプルな場合は、会計ソフトを使って自分で申告することも可能です。ただし、複数物件の運用、法人化の検討、大規模修繕がある場合など、税務が複雑になるケースでは税理士への依頼を検討しましょう。不動産投資に詳しい税理士であれば、節税アドバイスも受けられるメリットがあります。報酬は年間数万円〜数十万円程度が一般的です。
譲渡所得は「譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算します。取得費は購入代金と購入時の諸費用の合計から、保有期間中に経費計上した減価償却費の累計額を差し引いた金額です(建物のみ減価償却分を控除)。譲渡費用には仲介手数料・印紙税・測量費などが含まれます。この譲渡所得に所有期間に応じた税率を掛けて税額を算出します。給与所得など他の所得とは分けて課税される「分離課税」である点が特徴です。
所有期間が5年以下の「短期譲渡所得」は税率39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)、5年を超える「長期譲渡所得」は税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)です。短期と長期で約2倍の差があります。なお復興特別所得税は2037年まで課されます。
所有期間は「売却した年の1月1日時点」で5年を超えているかどうかで判定します。実際の取得日からの経過年数ではない点に注意が必要です。例えば2020年7月に取得した物件を2025年8月に売却した場合、実際には保有期間が5年を超えていても、2025年1月1日時点では取得から4年6か月のため短期譲渡(税率39.63%)となります。長期譲渡の低い税率を適用するには、取得年の翌年から数えて6年目の1月1日以降に売却する必要があります。
居住用財産(マイホーム)を売却した場合の3,000万円特別控除は、自分が住んでいた家屋とその敷地が対象であり、投資用(賃貸用)物件の売却には原則として使えません。賃貸に出している収益物件は居住用財産に該当しないためです。投資物件の譲渡では、取得費や譲渡費用を漏れなく計上することが節税の基本になります。なお、過去に自宅として住んでいた物件を賃貸に転用していた場合などは適用可否が複雑になるため、税理士に確認してください。
用途によって異なります。居住用の住宅の家賃は消費税が非課税です。一方、事務所・店舗など事業用建物の賃料は課税対象です。また、土地の貸付け(1か月以上)は非課税ですが、駐車場として整地・区画した土地の貸付けは課税対象になるなど、区分は細かく定められています。居住用アパート・マンションのみを運用している個人投資家であれば、家賃収入は基本的に非課税売上となります。
課税売上高(事務所・店舗賃料などの課税対象収入)が基準期間(個人は前々年)で1,000万円を超えると、原則として消費税の課税事業者となり納税義務が生じます。居住用住宅の家賃だけであれば非課税売上のため、原則として消費税の納税義務は生じません。ただし、賃貸併用や事業用テナントを保有する場合、また課税事業者を選択した場合などは取り扱いが変わるため、個別に確認が必要です。
土地の譲渡は消費税が非課税で、建物の譲渡は課税対象です(売主が課税事業者の場合)。そのため売買代金のうち建物部分にのみ消費税がかかります。なお、売主が個人(非事業者)の中古住宅などでは建物にも消費税がかからないケースがあります。建物価格の内訳は減価償却の基礎にもなるため、売買契約書での土地・建物の区分は重要です。仲介手数料や司法書士報酬などのサービス対価にも消費税がかかります。
一般に、現金よりも不動産で保有するほうが相続税の評価額が低くなる傾向があります。土地は路線価方式などで評価され時価より低めに、建物は固定資産税評価額で評価されるためです。さらに賃貸している土地・建物は「貸家建付地」「貸家」として評価が一定割合減額されます。ただし、評価額の引き下げだけを目的とした極端な対策は否認されるリスクもあり、収益性・流動性・資金繰りを含めた総合的な判断が欠かせません。具体的な効果は物件や地域によって大きく異なります。
相続税の基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算します。例えば法定相続人が配偶者と子2人の合計3人の場合、基礎控除は3,000万円 +(600万円 × 3)=4,800万円となります。遺産の総額(債務などを差し引いた課税価格)がこの基礎控除以下であれば、相続税は課されず申告も原則不要です。
貸付事業に使っている宅地(貸付事業用宅地等)は、一定の要件を満たせば「小規模宅地等の特例」により、200㎡までの部分について相続税評価額が50%減額されます。被相続人の貸付事業を相続人が引き継いで継続するなどの要件があります。なお、相続開始前3年以内に新たに貸付事業を始めた宅地は原則として対象外です(事業的規模で継続している場合などの例外あり)。要件が細かいため、適用を見込む場合は早めに税理士へ相談しましょう。