不動産の売買契約を締結した後、最終的な所有権移転と代金の授受が行われる「決済(残代金決済)」は取引の最重要フェーズです。書類の不備や手続きの漏れが後日のトラブルにつながる可能性があるため、事前準備と当日の流れを正確に理解しておくことが重要です。本記事では売買契約から決済・引渡しまでのプロセスを体系的に解説します。
売買契約締結後〜決済日までの流れ
売買契約締結直後
契約締結後、買主は手付金を売主に支払い、売買契約書と重要事項説明書を受領します。この時点で以下を確認・手配します。
買主側の確認事項は次のとおりです。
- 住宅ローン・投資ローンの申込開始(融資特約期限内に承認を得る)
- 融資承認後の融資条件確認(金利・期間・月返済額)
- 司法書士の選定(登記手続きを依頼する)
- 火災保険の加入手配(決済日までに保険証券を取得)
売主側の確認事項は次のとおりです。
決済日に必要な書類
売主が用意する書類
権利証(登記識別情報通知または旧来の権利証)は所有権移転登記に必須です。そのほか、売主は次の書類を用意します。
既存ローンがある場合は金融機関の担当者も決済に立ち会う場合があり、抵当権抹消のための書類一式(登記完了証・抵当権抹消登記申請書等)を金融機関が用意します。
買主が用意する書類
買主が用意するものは次のとおりです。
- 残代金(融資分+自己資金の合計)の振込または小切手の準備
- 実印と印鑑証明書
- 住民票(新住所への引越し後に取得する場合は注意)
融資利用の場合は、金銭消費貸借契約書(ローン契約)への署名も決済当日に行うことが多いです。
司法書士が準備する書類
司法書士が所有権移転登記申請書を作成します。登記申請は通常、決済当日または翌営業日に法務局に提出されます。登記完了(法務局の処理完了)まで通常1〜2週間程度かかります。
決済当日の流れ
決済は通常、売主の取引金融機関(住宅ローン等の融資銀行)の応接室または不動産会社の会議室で行われます。
決済の進行手順
- 関係者全員が集まります。参加者は通常、売主・買主・各々の仲介担当者・司法書士・買主の融資銀行担当者(融資を使う場合)、売主側の融資銀行担当者(既存ローンがある場合)です。
- 司法書士が書類確認を行います。権利証・印鑑証明書・実印・各種書類の真正確認が行われ、登記申請に必要な書類へ署名・捺印をします。
- 融資実行が行われます。買主の融資銀行から買主の口座に融資額が振り込まれ、買主が売主の口座へ残代金を振り込みます。振込完了後、着金確認をします(通常は銀行アプリやATMで即日確認可能)。
- 決済完了の確認後、売主から買主へ鍵・設備の取扱説明書・付属品一式を引き渡します。司法書士が登記申請書類一式を法務局に提出します。
日割り精算
引渡し日を基準に日割り計算して精算されるのは、主に次の費用です。
精算方法は不動産慣習により異なる場合がありますが、一般的に「引渡し日以降の税金・費用は買主負担」として精算します。
投資物件(オーナーチェンジ物件)の引渡し特有の手続き
収益物件の売買では、通常の居住用物件に加えて以下の手続きが必要です。
- 賃貸借契約の引き継ぎ:売主から買主へ全賃貸借契約書が引き渡されます。入居者には「賃貸人(オーナー)が変わった旨の通知」を書面で送付する義務があります(民法605条の3)。
- 敷金の引き継ぎ:売主が預かっていた敷金の残額を決済金額から差し引く(または別途授受する)形で引き継がれます。決済書に敷金引継額が明記されることを確認します。
- 賃料の精算:引渡し日に入居者が支払っている当月分の賃料を日割り計算し、売主と買主間で精算します。
- 入居者への通知:引渡し後速やかに、新オーナー(買主)の氏名・振込先口座・管理会社連絡先を入居者全員に書面で通知します。
決済後に行うこと
決済後は主に次の対応を行います。
- 登記完了確認:登記完了後に法務局から「登記完了証」が発行され、司法書士経由で受け取ります。合わせて「登記識別情報通知(新権利証)」も取得し、大切に保管します。
- 火災保険の始期確認:決済日(引渡し日)に合わせて火災保険が有効になっているか確認します。特に共用部の保険(マンションの場合は管理組合保険)と個人所有部の保険が重複・漏れなく設定されているかチェックします。
- 確定申告の準備:購入後の登記費用・仲介手数料・不動産取得税等の領収書をすべて保管しておきます。減価償却計算の基礎になる取得価額の証明書類として重要です。
不動産売買決済は、準備が整っていれば当日は1〜2時間程度で完了します。しかし一つの書類漏れや手続きミスが決済を延期させる原因になります。仲介業者・司法書士と密に連絡を取り合い、前日までに全書類の準備完了を確認しておくことが重要です。
