減価償却の方法の届出と変更手続き|建物は定額法、設備や器具備品の扱いを整理する
不動産投資の減価償却を学ぶと「定額法」と「定率法」という2つの方法が出てきます。一見すると自由に選べるように思えますが、不動産投資で中心となる建物については定額法に統一されており、実際に方法を選べる資産は限られます。本稿では、どの資産でどの方法が使えるのか、方法を選んだり変えたりするときの届出はどうなるのかを、誤解しやすい点を整理しながら解説します。
なお、減価償却の細かな取り扱いは資産の種類や取得時期で異なり、税制改正の影響も受けます。具体的な計算や届出は税理士に確認してください。
建物は定額法に統一されている
まず押さえるべき大前提として、建物の減価償却は定額法に統一されています。かつては建物にも定率法が使えた時期がありましたが、現在の取得分は定額法で計算します。したがって「建物の減価償却で定額法か定率法かを選ぶ」という場面は、新たに取得する建物では基本的に生じません。
さらに、建物附属設備や構築物についても、一定時期以降に取得したものは定額法に一本化されています。不動産投資で大きな割合を占める建物・附属設備・構築物の多くは、方法を選ぶ余地がなく定額法になる、というのが実務感覚です。
方法を選べるのは限られた資産
定額法・定率法のどちらを選ぶかという「選択」が現実に意味を持つのは、器具備品など一部の減価償却資産に限られます。たとえば家具家電付き物件の備品など、建物本体や附属設備・構築物に該当しない資産が、選択の対象になり得ます。
ただし、不動産投資全体に占めるこれらの資産の割合は大きくないことが多く、節税インパクトという観点では建物の取り扱いほど大きくならないのが一般的です。「定額法か定率法かで大きく変わる」というイメージは、建物中心の不動産投資ではあまり当てはまらない点に注意します。
償却方法の届出の考え方
減価償却の方法には、資産の種類ごとに法律で定められた「法定償却方法」があります。法定の方法をそのまま使う場合は、特段の届出をしなくてもその方法が適用されます。一方、法定とは異なる方法を選びたい場合には、原則として届出が必要になります。
個人と法人で法定償却方法の扱いや届出の様式は異なります。新たに事業を始めたときや、新しい種類の資産を取得したときに、どの方法を採るかを意識し、必要なら期限内に届出を行う、という流れになります。
償却方法を「変更」したいとき
いったん採用した償却方法を途中で変更したい場合は、変更の承認を求める手続きが必要になるのが原則です。任意のタイミングで自由に切り替えられるわけではなく、申請して認められて初めて変更できるという建付けです。
実務上は、建物が定額法に統一されている以上、不動産投資で償却方法の変更が問題になる場面は多くありません。器具備品などで方法を変えたいといった限定的なケースで、変更手続きの存在を思い出せれば十分なことが多いでしょう。
具体例:中古区分マンションを購入したとき
たとえば家具家電付きの中古区分マンションを購入した場合、資産は「建物」「建物附属設備」「器具備品」に分けて考えます。建物本体と給排水・電気・空調などの附属設備は定額法で償却し、取り外し可能なエアコンや冷蔵庫・洗濯機などの備品は、金額や区分によっては償却方法の選択や少額資産の特例の対象になり得ます。売買契約書で建物価額が一括表示されている場合は、固定資産税評価額などを参考に土地と建物を按分し、そのうえで附属設備や備品をどう切り出すかを検討する、という順序になります。
よくある落とし穴
- 古い解説記事を信じてしまう:建物附属設備に定率法が使えた時期の記事が、いまも検索上位に残っていることがあります。取得時期によって適用できる方法が異なるため、いつ取得した資産の話なのかを必ず確認します。
- 届出の期限を過ぎてしまう:法定外の方法を選びたい場合の届出には期限があります。確定申告の直前に気づいても間に合わないことがあるため、資産を取得した年のうちに方針を決めておくのが安全です。
- 中古資産の耐用年数との混同:償却「方法」の選択と、中古資産の耐用年数の「見積もり」は別の論点です。両者を混ぜて考えると計算を誤りやすいので、方法→耐用年数→償却率の順に整理して考えます。
まとめ
不動産投資の減価償却は、「定額法か定率法かを自由に選ぶ」というより、「建物・附属設備・構築物は定額法に統一されており、選べるのは器具備品など一部」という理解が実態に近いです。法定の方法をそのまま使うなら届出は不要で、異なる方法を採るときや方法を変更するときに届出・承認が関わります。まずは自分の資産がどの区分に当たるかを整理し、迷う部分は税理士に確認するのが確実です。
