アパートの駐車場に知らない車が停まっている、退去した入居者の車が残されたままになっている、といった相談は賃貸経営で起こりがちです。区画を貸せない損失が続くと、すぐにでも車を動かしたくなりますが、所有者の同意なく移動・処分すると、オーナー側が責任を問われるおそれがあります。この記事では、自力で撤去してはいけない理由、所有者の調べ方、撤去を求める法的手続きの流れを整理します。個別の対応は弁護士に相談してください。
自力で動かしたり処分したりしてはいけない理由
自分の土地に無断で停められた車であっても、法律の手続によらずに自分の力で権利を実現すること(自力救済)は、原則として認められないと一般に解されています。車は所有者の財産なので、勝手に動かして傷をつけたり、処分したりすると、次のような責任を問われるおそれがあります。
- 他人の物を損壊した場合の器物損壊等(刑法261条)(e-Gov 法令検索 刑法)
- 故意または過失で他人の権利を侵害した場合の損害賠償責任(民法709条)(e-Gov 法令検索 民法)
レッカーで敷地の外へ出す、解体業者に引き渡す、といった対応は避けます。タイヤロックで出られなくする、車体に剥がれにくい張り紙を貼る、といった方法も、トラブルを大きくするもとになりやすいので、行う前に弁護士に相談してください。
まず現場で記録と確認をする
最初にするのは、状況の記録と、契約者の車かどうかの確認です。
- 車の全体とナンバープレート、停めている区画を写真で残し、確認した日時を記録する
- 駐車場の契約台帳と照らし、契約者や入居者の車でないかを確かめる
- 管理会社に委託している場合は、管理会社に連絡して対応を相談する
- 車を傷めない方法(ワイパーに挟むなど)で、移動を求める文書を置く
- 長く放置されている場合は、盗難車などの可能性もあるため、最寄りの警察署に相談しておく
私有地の駐車場の問題に警察がどこまで対応できるかは、状況によって異なります。相談した日時と担当部署は記録しておくと、後の手続きでも経緯を説明しやすくなります。
所有者の調べ方:登録事項等証明書の請求
普通自動車などの登録車は、運輸支局等で登録事項等証明書を請求すると、登録上の所有者や使用者を確認できます。国土交通省の案内では、原則としてナンバープレートの文字・数字のすべてと車台番号の下7桁が必要で、請求の事由を具体的に書く必要があり、不当な目的に使われるおそれがある場合は交付を断ることがあるとされています。手数料は現在の登録事項のみの証明書が400円、過去の登録事項を含む証明書が1,200円です(国土交通省 登録事項等証明書の交付請求)。
私有地に放置された車両の所有者・使用者を確認する場合は、自動車登録番号のみで請求できます。ただし、関東運輸局の案内では、別途「車両が放置されている場所」「見取り図」「放置期間」「放置車両の写真」が必要とされています(関東運輸局 登録事項等証明書交付請求)。
軽自動車は、運輸支局等では請求できず、軽自動車検査協会に問い合わせるよう案内されています(北海道運輸局 登録事項等証明書請求)。軽自動車検査協会の検査記録事項等証明書は、車検証に記録された所有者が証明を受ける手続きとして案内されており、請求書には所有者の氏名・住所の記入が必要とされています(軽自動車検査協会 検査記録事項の証明)。ナンバーだけで所有者が分かるとは限らないため、弁護士に調べ方を相談してください。
撤去を求め、応じなければ法的手続きへ
所有者が分かったら、期限を区切って撤去を求める文書を送ります。送った日付と内容を証明できるよう、内容証明郵便を使うのが一般的です。
応じない場合は、車の撤去と土地の明渡し、損害賠償を求めて裁判所に訴えを起こすことになります。判決などを得ても相手が従わないときは、強制執行の手続で履行を強制します。民法414条は、直接強制・代替執行・間接強制などの方法による履行の強制を裁判所に請求できると定めています(e-Gov 法令検索 民法)。代替執行は、債務者の費用で第三者にその行為をさせる方法です(e-Gov 法令検索 民事執行法171条)。
損害として請求できるのは、実際に生じた損害が基本です。看板に「無断駐車は罰金」と金額を書いていても、その額がそのまま認められるとは限りません。
無断駐車・放置車両を防ぐためにできること
- 区画番号と契約者用であることを表示し、無断駐車を禁止する看板を出す
- 駐車場の契約で、車両のナンバーと車種の届出と、変更時の連絡を求める
- 退去の立ち会いで、駐車場の明渡しと車両の撤去まで確認する
- 防犯カメラで出入りを記録する
駐車場を収入源として運用する考え方は収益物件の駐車場・駐輪場の収益化と運用改善で解説しています。車の撤去は時間がかかることが多いため、早い段階で記録を残し、弁護士に相談しながら進めてください。
