2026年の税制改正は相続税評価に大きな変更をもたらします。特に貸付用不動産(賃貸物件)の評価方法が見直され、購入後5年以内の相続では「通常取引価格」が適用される予定です。これは不動産投資の相続対策戦略に直結する重要な改正です。
現行の貸付用不動産評価と改正の背景
現在、相続税評価における貸付用不動産は、通常、相続税路線価に基づく「固定資産税評価額の1.1倍~1.3倍」で評価されます。これは時価(通常取引価格)よりも低い評価となることがほとんどです。
例えば、通常取引価格で5000万円の賃貸アパートであれば、相続税評価は路線価に基づいて3000~3500万円程度となることが多く、評価額が30~40%低く圧縮されるため、相続税負担が大幅に軽減されていました。
この「低い評価」を活用した相続対策として、金利が低い環境で多くの不動産投資家が物件を購入し、「キャッシュフロー+節税」の2つのメリットを享受してきました。
2026年改正の内容と「購入後5年以内」の意味
改正により、購入後5年以内の相続では、貸付用不動産が「通常取引価格」で相続税評価されることになります。つまり、先ほどの例なら5000万円がそのまま相続税評価額となり、路線価ベースの圧縮がなくなります。
この改正の趣旨は、短期間での物件購入と相続を組み合わせた「極端な節税戦略」を抑制することです。例えば、60歳の投資家が意図的に短期で複数の物件を購入し、相続税評価を圧縮したまま相続させるケースが増加していたため、税務当局が規制に動きました。
購入後5年を超える物件については、従来どおりの相続税路線価ベースの評価が適用される見込みです。ただし路線価公開は例年7月1日のため、正式な評価額は当該時期の公開まで不明確です。
現在の投資判断への影響
この改正は、今後の不動産購入タイミングを大きく左右します。「今から買った物件が相続評価で圧縮されない」という前提で投資を検討する必要があります。つまり、購入価格=相続税評価額と見なされるため、節税メリットなしで投資採算を検証しなければなりません。
逆に「今から5年以上保有して相続させる物件」であれば、5年以上経過後は従来の圧縮評価が戻る可能性があります(ただし評価方法の詳細は今後の通達待ち)。
現在60代の投資家が「相続税対策として物件を購入」する場合、平均的な人生スパンでは相続は数年以内に発生する可能性が高いため、購入後5年以内の評価圧縮なしという制約が直接響きます。
相続前購入タイミングの戦略的転換
改正前(2026年6月15日時点では実施前)に物件を購入すれば、購入後5年以内の改正ルール適用を回避できる可能性があります。ただし相続が予見不可能である以上、「確実に5年以上経過してから相続が発生する」という前提は立てられません。
むしろ、相続予定がある投資家にとって重要な選択肢は以下の通りです:
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現在から購入する物件: 相続税評価が圧縮されないため、時価=評価額の前提で採算判定。節税メリットなしでもキャッシュフロー黒字なら購入。
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既保有物件(購入後5年超): 改正後も現行の圧縮評価が維持される可能性が高い。継続保有で相続税メリットを享受。
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相続対策としての物件購入: タイミングを急ぐ必要がないなら、改正の詳細通達(2026年6月以降)を待つ。評価方法の最終確定後に判断。
路線価公開と具体的評価額の確定
相続税路線価は例年7月1日に国税庁から公開されます。2026年の改正に伴う評価方法の詳細は、国税庁から通達として発表される予定です。
現在は「購入後5年以内は通常取引価格」という基本方針のみで、具体的な経過措置(例:2026年1月以前購入の物件は現行ルール、2026年2月以降購入は新ルール、等)は未発表です。
相続税額の実例計算と対応策
改正による相続税額増加の例を見てみましょう。5000万円の賃貸物件を保有している場合:
現行制度(購入後5年超): 相続税評価3000万円 → 相続税課税対象額3000万円 新制度(購入後5年以内): 相続税評価5000万円 → 相続税課税対象額5000万円
相続税率を40%と仮定すれば、差分800万円(2000万円×40%)の相続税増加が発生します。このため、短期での多数物件購入による節税戦略は成立しなくなります。
相続税対策と不動産投資の統合戦略
2026年改正は「相続税節減=不動産投資の主要メリット」という従来の構図を変えます。これからの不動産投資は「相続税対策ありき」ではなく、まずキャッシュフロー(月次の手取り収入)が黒字であることを最優先に判定し、その上で相続税評価が圧縮されれば「ボーナス」という捉え方にシフトします。
この転換により、相続税対策を理由とした採算度外視の物件購入は減少し、市場全体の物件選定基準が更新されていくと予想されます。既保有物件の5年以上保有と新規購入の慎重な検討が、今後の投資戦略の基本となるでしょう。
