収益物件の売却は、不動産投資における「出口」であり、投資全体の成否を左右する重要な局面です。購入時と異なり、売却で失敗した場合のリカバリーは容易ではありません。一度売り出して長期間成約しなかった物件は「売れ残り物件」というイメージが付き、さらに売りにくくなるという悪循環に陥ることもあります。
ここでは、収益物件の売却でよくある5つの失敗パターンと、その対策を解説します。
最も多い失敗パターンが、相場よりも高い価格で売り出してしまうケースです。「自分が購入した価格+諸費用」を回収したいという心理から、市場の実態と乖離した価格を設定してしまうことがあります。
仙台エリアの収益物件は、首都圏と比較すると購入層が限定されるため、相場から大きく外れた価格設定では内見の問い合わせすら入らないということが起こりえます。
逆に、早く売りたい気持ちが先行して、必要以上に安い価格で売りに出してしまうのも失敗です。適正価格よりも安い価格設定は、短期間で成約する可能性は高いものの、本来得られるはずだった利益を逃してしまいます。
複数の不動産会社に査定を依頼し、それぞれの査定根拠を比較検討しましょう。収益還元法で算出した理論値と、周辺の実際の取引事例を照らし合わせることで、適正な価格帯を見極めることができます。査定の考え方については収益物件の査定で見られるポイントも参考にしてください。
大規模修繕が必要になる前に売却することは、有効な出口戦略の一つです。しかし、「もう少し賃料収入を得てから」と先延ばしにしているうちに修繕時期を迎えてしまい、修繕費用を投じた上で売却するか、修繕が必要な状態で安く売るか、という厳しい選択を迫られるケースがあります。
所有期間が5年を超えると譲渡所得税率が約39%から約20%に大幅に下がります。この5年の区切りを意識せずに売却してしまうと、想定外の税負担が生じます。なお、この5年は売却した年の1月1日時点で判定されるため、実際の所有期間が5年を超えていても税制上は短期譲渡に該当する場合がある点には注意が必要です。
売却の検討は早めに始め、複数のシナリオ(今期中に売却、1年後に売却、大規模修繕後に売却など)でシミュレーションを行いましょう。税金については収益物件の売却にかかる税金と節税方法で詳しく解説しています。
毎月の収支とキャッシュフローをシミュレーションできます
キャッシュフロー計算で今すぐ計算してみる収益物件の買い手は投資家です。投資判断に必要な情報が不足していると、検討候補にすら入りません。レントロール、修繕履歴、固定資産税額、管理費の内訳、建物の構造・設備の状態など、買い手が求める情報を事前に整理しておく必要があります。
入居者トラブルの履歴、雨漏りや設備故障の経歴、近隣の嫌悪施設の存在など、ネガティブな情報を意図的に隠して売却すると、後にトラブルになるリスクがあります。不動産取引における告知義務違反は、売買契約の解除や損害賠償請求につながりかねません。
買い手に開示する情報は「出し惜しみしない」のが原則です。ネガティブ情報であっても正直に開示し、それに対する対応策(修繕済み、問題は解決済みなど)をあわせて伝えることで、むしろ信頼感を高めることができます。
不動産会社にはそれぞれ得意分野があります。実需(マイホーム)の売買が中心の会社に収益物件の売却を依頼しても、投資家向けの販売ネットワークが弱く、成約まで時間がかかることがあります。
仙台エリアでは、収益物件を専門的に扱う会社と、住宅の仲介が中心の会社が混在しています。「不動産会社ならどこでも同じ」と考えてしまうと、効果的な売却活動が行われない可能性があります。
複数の不動産会社に査定を依頼した際、最も高い査定額を出した会社を選びたくなるのは自然な心理です。しかし、成約の見込みがない高額査定で売主の歓心を買い、媒介契約を獲得しようとする業者も存在します。高すぎる査定額で売り出して成約せず、結局大幅に値下げするという展開になりかねません。
査定額だけでなく、査定の根拠、収益物件の取引実績、投資家ネットワークの有無、販売戦略の具体性などを総合的に判断して業者を選びましょう。可能であれば、収益物件の売買実績が豊富な複数の業者に相談し、対応の質を比較することをおすすめします。
不動産の売却益(譲渡所得)は、単純に「売却価格-購入価格」ではありません。取得費には購入時の諸費用が含まれる一方、建物の減価償却分を差し引く必要があります。減価償却費の計算を誤ると、実際の税負担が想定よりも大幅に増える可能性があります。
個人の場合、通常は消費税の課税事業者に該当しないため問題になりにくいですが、法人所有の物件や、前々年の課税売上高が一定額を超えている個人の場合は、建物部分の売却に消費税がかかります。高額な収益物件の売却では消費税額も大きくなるため、事前の確認が必要です。
売却前の段階で税理士に相談し、譲渡所得税、住民税、消費税の概算を算出してもらうことを強くおすすめします。特に減価償却の累計額の確認は、正確な取得費の計算に欠かせません。税金の詳細は収益物件の売却にかかる税金と節税方法をご参照ください。
表面利回り・実質利回りをかんたんに計算できます
利回りシミュレーターで今すぐ計算してみる収益物件の売却における5つの失敗パターンを整理しました。価格設定、タイミング、情報開示、業者選び、税金計算のいずれも、事前の準備と正確な情報に基づいた判断が重要です。
特に仙台・東北エリアでは、首都圏と比較すると取引件数が限られるため、一度の判断ミスが売却活動に大きな影響を与えます。売却を検討し始めた段階で、出口戦略全体の計画を立てておくことが失敗を避ける最善の方法です。売却活動の全体の流れについては収益物件の売却活動の流れもあわせてご確認ください。