収益物件の売却活動の流れ|媒介契約から引き渡しまで
売却活動を始める前の準備
収益物件の売却を決断したら、まずは売却に必要な準備を整えることが重要です。物件の登記簿謄本、建物の図面、固定資産税の通知書、レントロール(賃貸借条件一覧表)、管理委託契約書、修繕履歴など、買い手が判断材料として求める書類を事前に整理しておきましょう。
特に収益物件の場合、レントロールは買い手にとって最も重要な判断材料の一つです。各部屋の賃料、共益費、契約開始日、契約期間、敷金の預かり状況などを正確にまとめておく必要があります。情報が不正確だと、後のトラブルや値引き交渉の原因になりかねません。
また、売却前に物件の適正価格を把握しておくことも大切です。収益還元法や取引事例比較法など、査定の考え方については収益物件の査定で見られるポイントで解説しています。売却のタイミングについては売却のベストタイミングとはも参考にしてください。
媒介契約の種類と選び方
不動産会社に売却を依頼する際に締結するのが「媒介契約」です。媒介契約には3つの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
一般媒介契約は、複数の不動産会社に同時に売却を依頼できる契約形態です。売主自身が見つけた買い手との直接取引も可能です。間口が広がるメリットがある一方、不動産会社からすると他社に先を越される可能性があるため、積極的な販売活動を行ってもらえないケースもあります。また、レインズ(不動産流通機構のシステム)への登録義務がありません。
専任媒介契約は、1社の不動産会社にのみ売却を依頼する契約形態です。売主自身が見つけた買い手との直接取引は可能です。不動産会社にとっては独占的に販売活動を行えるため、広告費をかけた積極的な営業が期待できます。レインズへの登録義務があり(契約締結から7営業日以内)、2週間に1回以上の業務報告が義務付けられています。
専属専任媒介契約は、専任媒介と同様に1社のみへの依頼ですが、売主自身が見つけた買い手であっても、必ず不動産会社を通して取引する必要があります。レインズへの登録は5営業日以内、業務報告は1週間に1回以上と、最も手厚いフォローが期待できる反面、売主の自由度は最も低くなります。
収益物件の売却においては、専任媒介契約を選ぶケースが多い傾向にあります。投資家ネットワークを持つ不動産会社であれば、専任で任せることで優先的に買い手を探してもらえる可能性が高まります。
売却活動の実際
媒介契約を締結すると、不動産会社による販売活動がスタートします。主な活動内容としては、レインズへの物件情報の登録、不動産ポータルサイトへの掲載、自社顧客への紹介、チラシの配布などがあります。
収益物件の場合、買い手は投資目的であることがほとんどです。そのため、利回りやキャッシュフローに関する情報が重視されます。物件の収支シミュレーションを事前に用意しておくと、検討がスムーズに進みやすくなります。キャッシュフローシミュレーターを使って収支の概算を出しておくのも一つの方法です。
売却活動中にオーナーとして注意したいのは、入居者への配慮です。特に内覧の際は、入居者に事前に連絡を取り了承を得る必要があります。入居中の部屋については外観や共用部の案内にとどめ、空室がある場合はそこを見学してもらうのが一般的です。
購入希望者への対応と価格交渉
購入希望者が現れると、「買付証明書(購入申込書)」が提出されます。ここには希望購入価格、手付金の額、融資利用の有無、引き渡し希望時期などが記載されています。
買付証明書の提出は法的な拘束力を持つものではありませんが、売却交渉の出発点となります。希望価格が売出価格を下回る場合は、不動産会社を通じて交渉を行います。収益物件の場合、買い手は融資審査の結果次第で購入可否が決まるケースも多いため、買い手の融資状況(金融機関名や事前審査の有無)を確認することも重要です。
複数の購入希望者がいる場合は、価格だけでなく、融資の確実性や引き渡し条件なども含めて総合的に判断します。
売買契約の締結
条件がまとまれば、売買契約の締結に進みます。契約当日は、宅地建物取引士による重要事項説明が行われた後、売買契約書への署名・押印、手付金の授受が行われます。
収益物件の売買契約では、通常の不動産取引に加えて、賃貸借契約の引き継ぎに関する条項が含まれます。入居者の敷金の返還義務の承継、管理委託契約の引き継ぎ、未収賃料の取り扱いなど、オーナーチェンジ特有の確認事項があります。
また、契約時には以下のような条件について明確にしておく必要があります。
- 手付解除の期日と手付金の額
- 融資特約の有無と期日
- 引き渡し日と残代金の支払い日
- 固定資産税・都市計画税の精算基準日
- 賃料の精算方法(日割り計算の基準)
- 設備の修繕負担の範囲
決済・引き渡しの流れ
売買契約から通常1〜2か月程度で、決済・引き渡しの日を迎えます。決済日には、買主の融資実行、残代金の支払い、所有権移転登記の手続きが同時に行われます。場所は通常、買主の融資を行う金融機関で行われることが多いです。
決済日に行われる主な手続きは以下のとおりです。
- 残代金の受領と領収書の発行
- 所有権移転登記・抵当権設定登記の申請(司法書士が代行)
- 固定資産税・賃料などの精算金の授受
- 鍵や書類(賃貸借契約書、管理関連書類など)の引き渡し
- 売主側の抵当権抹消登記の申請
引き渡し後は、入居者への通知(オーナー変更のお知らせ、新しい振込先の案内など)を速やかに行います。管理会社が入っている場合は、管理会社との引き継ぎも同時に進めます。
売却によって生じる譲渡所得税については、収益物件の売却にかかる税金と節税方法で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
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