1棟アパートの売却と区分マンションの売却の違い
売却の前提が異なる2つの物件タイプ
不動産投資において、1棟アパートと区分マンションは購入時の戦略が異なるように、売却においてもその進め方や注意点が大きく異なります。それぞれの物件タイプには独自の市場構造があり、買い手層も異なるため、売却戦略を物件タイプに合わせて考えることが重要です。
1棟アパートと区分マンションの基本的な違いについては1棟アパートと区分マンションの比較で解説していますが、本記事では「売却」にフォーカスして、それぞれの違いを掘り下げていきます。
買い手層の違い
1棟アパートの買い手は、ある程度の資金力と不動産投資の経験を持つ投資家が中心です。購入価格が数千万円から数億円規模になるため、融資を利用するケースがほとんどです。買い手の融資審査に時間がかかることもあり、また金融機関の融資姿勢によって買い手の数が大きく変動する傾向があります。
一方、区分マンションの買い手は、初心者の個人投資家からベテラン投資家、さらには実需(自分で住む目的)の個人まで幅広い層が対象となります。特にワンルームマンションは比較的少額で購入できるため、融資のハードルも1棟物件と比べると低い傾向にあります。自己居住用として購入する場合は住宅ローンが利用できるケースもあり、投資用ローンより有利な条件で購入できることもあります。
このように、区分マンションは買い手層が広い分、流動性が高いと一般的に言われています。ただし、物件のエリアや築年数、管理状態によって状況は大きく変わるため、一概には言えません。
査定方法の違い
収益物件の査定方法にはいくつかの手法がありますが、1棟アパートと区分マンションでは重視される手法が異なります。査定手法の詳細は収益物件の査定方法と価格の考え方をご参照ください。
1棟アパートの査定では、収益還元法が中心的な手法として用いられます。物件が生み出す年間の賃料収入をもとに、投資家が求める利回り水準で割り戻して価格を算出する方法です。そのため、稼働率の高さ、賃料水準の適正さ、将来の賃料下落リスクなどが査定価格に直結します。土地・建物を一体として評価するため、土地の形状や接道状況、建物の構造・築年数・修繕状況なども考慮されます。
区分マンションの査定では、取引事例比較法が主に用いられます。同じマンション内や近隣の類似物件の成約価格を参考に、階数・方位・リフォーム状況などを加味して価格を算出します。投資用として売却する場合は収益還元法も参考にされますが、実需の買い手も想定できる場合は、居住用としての市場価格が査定の基準になることもあります。
売却期間の違い
一般的な傾向として、区分マンションのほうが1棟アパートよりも売却に要する期間は短いと言われています。これは前述のとおり買い手層が広いことに加え、価格帯が低いため意思決定がしやすいことも要因です。
1棟アパートは、買い手にとって金額が大きいため検討期間が長くなりがちです。融資審査にも時間がかかり、金融機関から融資が下りずに契約が流れるケースもあります。また、建物の状態を確認するためのインスペクション(建物状況調査)を実施する買い手もおり、その分の時間も考慮する必要があります。
ただし、売却期間は物件の価格設定に大きく左右されます。適正な価格で売り出せば比較的早期に買い手が見つかる場合もありますし、逆に高すぎる価格設定をすればどちらの物件タイプであっても長期化します。
それぞれの売却時の注意点
1棟アパート売却の注意点
修繕履歴と建物の状態。 1棟アパートは建物全体がオーナーの責任範囲です。屋根・外壁・給排水管・共用部の設備など、修繕が必要な箇所があると買い手から値引き交渉の材料にされます。修繕履歴を整理し、建物の管理状態が良好であることを示せると、交渉を有利に進めやすくなります。
レントロールの正確性。 各部屋の賃料が周辺相場に比べて適正かどうかは、買い手が必ずチェックするポイントです。長期入居者の賃料が相場より高い場合、退去後に賃料が下がる可能性を織り込まれることがあります。
土地の価値。 建物が古くなっても土地の価値は残ります。接道状況、用途地域、容積率の消化状況など、土地としての評価が高ければ、建物の築年数が進んでいても一定の価格で売却できる可能性があります。
区分マンション売却の注意点
管理組合の状況。 区分マンションは管理組合の運営状態が物件価値に大きく影響します。修繕積立金の残高不足、大規模修繕の遅延、管理費の滞納率が高いといった問題があると、買い手が慎重になります。
管理費・修繕積立金の水準。 毎月の管理費や修繕積立金が周辺相場と比較して高いと、利回りが低下するため投資用としての魅力が下がります。将来的な値上げの予定がないかも確認ポイントです。
賃貸中の売却制限。 賃貸中のまま売却する場合(オーナーチェンジ)、買い手は投資家に限定されます。空室にして実需向けに売却したほうが高く売れるケースもありますが、賃貸借契約を終了させることは容易ではないため、慎重な判断が必要です。
出口戦略を見据えた物件選び
売却のしやすさは、購入時点である程度決まっています。将来の売却を見据えるなら、購入時から出口戦略を意識した物件選びが重要です。出口戦略の立て方では、保有期間や売却タイミングの考え方を詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
1棟アパートであれば、土地値の割合が高い物件、駅から徒歩圏内の物件、建蔽率・容積率に余裕がある物件などが、将来の売却時にも買い手がつきやすい傾向があります。区分マンションであれば、管理状態の良い大規模マンション、駅近の好立地物件、実需と投資の両方の需要が見込める物件が、流動性の高い選択肢と言えます。
いずれの場合も、購入前に利回り計算ツールやキャッシュフローシミュレーターを活用して、保有期間中の収益と売却時の想定価格を含めたトータルの投資判断を行うことをおすすめします。
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