積算評価と収益還元法の違い|銀行の物件評価方法を理解する
銀行が物件を評価する2つの方法
不動産投資で融資を受ける際、金融機関は独自に物件の価値を評価します。この評価額が融資額や融資条件に大きく影響するため、投資家として評価方法を理解しておくことは非常に重要です。
金融機関が物件評価に用いる代表的な手法は「積算評価(原価法)」と「収益還元法」の2つです。銀行によってどちらの評価方法を重視するかは異なりますが、多くの場合は両方の評価を行い、総合的に融資判断を行います。融資の基本的な仕組みや申込みの流れは不動産投資ローンの基本と融資を受けるコツで解説しています。
積算評価(原価法)の仕組み
積算評価は、「その物件を今からもう一度建てたら、いくらかかるか」という考え方に基づく評価方法です。土地と建物をそれぞれ別に評価し、合計したものが積算価格となります。
土地の評価: 主に路線価(国税庁が公表する相続税評価の基準となる価格)を基準に算出されます。「路線価 × 土地面積」が基本的な計算式で、土地の形状(整形か不整形か)や接道状況などにより補正が加わります。
建物の評価: 建物の構造ごとに定められた再調達単価(1平方メートルあたりの建築費の目安)に延床面積を掛け、そこから経年による減価分を差し引いて算出します。減価の計算には法定耐用年数が用いられ、木造は22年、鉄骨造は構造により19〜34年、RC造は47年が目安です。
積算評価は客観的な指標に基づくため、評価のブレが少ないという特徴があります。地方銀行や信用金庫など、保守的な融資姿勢の金融機関では、積算評価を重視する傾向が見られます。
収益還元法の考え方
収益還元法は、「その物件が将来生み出す収益に基づいて価値を算出する」評価方法です。賃貸物件としての収益力に着目する点が、積算評価との最大の違いです。
収益還元法には大きく分けて2つの手法があります。
直接還元法: 年間の純収益(家賃収入から経費を差し引いた金額)を還元利回り(キャップレート)で割り戻して物件価格を算出する方法です。計算がシンプルで、物件の収益性を直感的に把握しやすいのが特徴です。
DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法): 保有期間中に得られるキャッシュフローと、売却時の想定価格を、それぞれ現在価値に割り引いて合計する方法です。直接還元法より精緻な分析が可能ですが、将来の家賃変動や売却価格の前提に影響されるため、前提条件の設定が重要になります。
収益還元法は、物件の「稼ぐ力」を重視する評価方法であるため、都市部の収益物件や高利回り物件の評価に適しています。
積算評価と収益還元評価の乖離が起きるケース
実際の物件では、積算評価と収益還元評価の結果が大きく異なるケースが少なくありません。この乖離を理解することが、融資戦略や物件選びのポイントになります。
積算評価が高く、収益還元評価が低いケース: 土地の路線価が高いエリアにあるが、賃料水準が低い物件が典型例です。担保評価は出やすいものの、実際のキャッシュフローは限定的になる場合があります。
収益還元評価が高く、積算評価が低いケース: 高い賃料収入が得られる人気エリアの築古物件が該当します。建物の減価が進んで積算価格は低くなりますが、賃料はしっかり取れている状態です。この場合、積算評価を重視する金融機関では希望額の融資が受けにくくなることがあります。築年数と投資の関係については築古物件と新築物件の比較も参考にしてください。
評価額が融資に与える影響
金融機関は物件評価額を基に融資額の上限を設定します。一般的に「融資額 ÷ 評価額」の比率が一定の範囲内に収まるように融資額が調整されます。つまり、評価額が高ければ多くの融資を受けられ、低ければ自己資金を多く用意する必要があります。
評価額と売買価格の差も重要なポイントです。売買価格が評価額を大きく上回っている場合、金融機関から見ると「割高な物件を買おうとしている」と判断される可能性があり、融資のハードルが上がります。逆に、評価額が売買価格を上回る物件は、金融機関から見て担保余力があると判断され、融資条件が有利になる傾向があります。
投資家として評価方法を理解する意義
物件評価の仕組みを理解することで、融資戦略を立てやすくなるだけでなく、物件の適正価格を自分なりに判断する力が身につきます。販売価格が妥当かどうかを見極める目は、不動産投資で失敗を避けるための基本的なスキルです。
融資を有利に進めるためには、金融機関がどの評価方法を重視しているかを事前にリサーチし、自分が狙う物件の特性に合った金融機関を選ぶことも大切です。利回りの基本を押さえたい方は表面利回りと実質利回りの違いもあわせてご覧ください。投資判断にあたっては利回りシミュレーターで収益性を確認してみましょう。
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