親や親族から収益物件を相続した場合、「売却する」か「保有し続ける」かという判断に迫られます。自分で購入した物件と異なり、相続物件には独自の事情が絡むため、冷静な判断が求められます。
仙台・東北エリアでは、親世代が建てたアパートや賃貸マンションを相続するケースが少なくありません。相続人が遠方に住んでいたり、不動産投資の経験がなかったりする場合は、なおさら慎重な検討が必要です。
不動産の相続税評価額は、一般的に時価(市場で売却した場合の価格)よりも低く算定されます。土地は路線価方式で時価の約80%程度、建物は固定資産税評価額で時価よりも低い評価となるのが通常です。さらに、賃貸に供されている物件には「貸家建付地」「貸家」としての評価減が適用されます。
相続後に売却する場合は、売却価格から譲渡所得税や仲介手数料、各種の諸費用を差し引いた「手取り額」がいくらになるかを試算する必要があります。
相続で取得した不動産の取得費は、原則として被相続人(亡くなった方)の取得費を引き継ぎます。つまり、親が何十年も前に安く取得した物件の場合、取得費が低いため、売却時の譲渡所得が大きくなり、税負担が重くなる可能性があります。
ただし、相続税を納めた場合は「相続税の取得費加算の特例」を活用できるケースがあります。これは相続税額の一部を取得費に加算できる制度で、相続開始から3年10か月以内の売却が要件です。売却時の税金については収益物件の売却にかかる税金と節税方法で詳しく解説しています。
保有を続ける判断をするためには、現状のキャッシュフローを正確に把握する必要があります。家賃収入から管理費、修繕費、固定資産税、保険料、ローン返済(残債がある場合)を差し引いた「手残り」がいくらになるかを計算しましょう。
相続物件の場合、以下のような点に注意が必要です。
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キャッシュフロー計算で今すぐ計算してみる現時点で黒字であっても、将来のキャッシュフローが安定して見込めるかどうかは別の問題です。築年数の経過に伴う修繕費の増加、周辺の競合物件の供給状況、エリアの人口動態など、中長期的な視点で収益の持続性を評価しましょう。
仙台市内でも、中心部と郊外では今後の賃貸需要の見通しが大きく異なります。地下鉄沿線や大学周辺などは比較的安定した需要が見込めますが、郊外のニュータウンなどでは人口減少の影響が顕著になる可能性があります。仙台の人口動向については仙台市の人口推移と賃貸需要予測も参考にしてください。
相続人が物件の所在地から離れて暮らしている場合、自主管理は現実的ではありません。管理会社に委託するにしても、大きな判断(修繕の可否、入居者トラブルへの対応、空室対策など)はオーナーとして自ら行う必要があります。
不動産投資の経験がない相続人にとって、こうした判断は大きな負担になりえます。「物件はあるが管理に手が回らない」という状態が続くと、空室率の上昇や建物の劣化を招き、資産価値が目減りしていくリスクがあります。
管理を管理会社に全面委託することで負担を軽減する方法もあります。仙台エリアでは賃貸管理を手がける会社が多数ありますので、管理内容や費用を比較検討した上で信頼できる会社に委託することが現実的な選択肢です。管理会社の選び方については管理会社の選び方と見極めポイントで解説しています。
相続人が複数いる場合、物件を共有名義で相続するケースがあります。しかし、不動産の共有はトラブルの温床になりやすいため、注意が必要です。
共有名義の物件では、売却や大規模修繕など重要な意思決定に共有者全員の同意が必要になります。当初は問題がなくても、時間の経過とともに共有者間で考え方の相違が生じ、「売りたい人」と「持ち続けたい人」が対立するケースは珍しくありません。
相続が発生した段階で、相続人全員が集まり、物件の今後の方針を話し合っておくことが重要です。売却するなら早期に行動を起こし、保有するなら管理の分担やコストの負担方法を明確にしておきましょう。
方針の選択肢としては、以下のようなものが考えられます。
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利回りシミュレーターで今すぐ計算してみる以下のような状況では、保有するよりも売却を選んだ方が合理的なケースが多いです。
以下のような状況では、保有を続けることで中長期的にメリットが得られる可能性があります。
相続した収益物件を売るか持ち続けるかは、税金面の有利不利だけでなく、キャッシュフローの状況、管理の負担、相続人間の事情を総合的に判断する必要があります。感情的な判断(「親が建てた物件だから手放せない」など)に引きずられず、数字に基づいた冷静な分析が重要です。
特に相続人が複数いる場合は、早い段階で方針を決め、共有名義のリスクを避けることが将来のトラブル防止につながります。判断に迷う場合は、税理士と不動産の専門家の両方に相談することをおすすめします。相続と不動産に関する税金の詳細は相続税対策としての不動産投資もあわせてご確認ください。