相続した不動産を売却するときの税金の概要
相続で取得した不動産を売却すると、売却益(譲渡所得)に対して所得税・住民税が課税されます。ただし、相続不動産の売却には通常の不動産売却と異なる固有のルールが存在します。
主な論点は以下の3つです。
- 取得費の引き継ぎ(被相続人の取得費を使う)
- 保有期間の引き継ぎ(被相続人の保有開始から計算)
- 相続税の取得費加算特例(相続税を取得費に上乗せできる)
取得費の引き継ぎ
相続で取得した不動産の「取得費」は、被相続人(亡くなった方)が実際に購入した価格を引き継ぎます。
例:
- 被相続人が1,000万円で購入した土地
- 相続人が2,500万円で売却した場合
- 取得費:1,000万円(被相続人の購入価格)
- 譲渡費用:100万円(仲介手数料等)
- 譲渡所得:2,500万円 - 1,000万円 - 100万円 = 1,400万円
相続自体は「無償取得」ですが、税務上は被相続人の取得価格を引き継ぐため、取得費が低い古い物件を相続した場合は多額の譲渡所得が発生しやすくなります。
取得費が不明な場合:被相続人が購入した時の領収書・契約書が見つからない場合は、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使います。取得費が極めて低くなるため、可能な限り実際の取得費を証明することが重要です。
保有期間の引き継ぎ
譲渡所得税率は保有期間5年超(長期・約20%)か5年以内(短期・約40%)かで大きく異なります。
相続した不動産の保有期間は、被相続人が取得した日から計算します。被相続人が10年前に購入した物件なら、相続後すぐに売却しても「長期保有」として約20%の税率が適用されます。
この点は相続不動産売却における大きなメリットです。相続開始後に慌てて売却しても長期譲渡所得として計算できます。税金シミュレーターで譲渡所得税の試算を行うと、売却タイミングの判断に役立ちます。
相続税の取得費加算特例
相続不動産を相続開始日から3年10か月以内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例があります(租税特別措置法第39条)。
加算できる相続税額の計算式:
加算額 = 支払った相続税 × (売却する不動産の相続税評価額 ÷ 相続税の課税価格の合計額)
例:
- 支払った相続税:1,000万円
- 売却不動産の相続税評価額:2,000万円
- 相続税の課税価格合計:5,000万円
- 加算できる相続税額:1,000万円 × 2,000万円 ÷ 5,000万円 = 400万円
この400万円を取得費に加算できるため、譲渡所得を400万円圧縮できます。相続税を多く支払っているケースほど効果が大きい特例です。
空き家の3,000万円特別控除(特定の空き家)
親が住んでいた自宅を相続し、一定条件を満たす形で売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります(租税特別措置法第35条第3項)。
主な適用条件(2024年以降の改正後):
- 昭和56年5月31日以前に建築された戸建て(旧耐震基準)
- 相続開始直前、被相続人が1人で居住していた
- 相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却
- 売却価格が1億円以下
- 耐震リフォームを行うか、建物を解体して更地にして売却
この特例は複数の相続人で不動産を共有していても、各相続人がそれぞれ控除を利用できます。ただし2024年改正により、取得した相続人が3人以上の場合は1人あたりの控除上限が2,000万円に縮減されます(2人以下なら各3,000万円)。
売却前に確認すべき事項
相続登記の完了:2024年4月1日から相続登記が義務化されました(3年以内に登記)。売却には所有権移転登記が必要なため、先に相続登記を済ませます。
遺産分割協議書の作成:不動産が複数の相続人で分割されていない場合は、売却前に遺産分割協議を完了させ、協議書を作成する必要があります。
確定申告の要否:譲渡所得が発生した年の翌年2〜3月に確定申告が必要です。取得費加算特例・空き家特例等を使う場合も確定申告で適用を受けます。税務手続きの流れは税務カレンダーで確認できます。
まとめ
相続した不動産を売却する際は、取得費の引き継ぎ・保有期間の引き継ぎ・相続税の取得費加算特例という3つのルールを正確に把握することが重要です。
特に取得費加算特例は相続開始から3年10か月以内の売却が条件のため、売却タイミングの判断が税負担に大きく影響します。相続税申告を担当した税理士に相談しながら売却計画を立てることをお勧めします。
