2026年10月の火災保険料改定とは
2026年10月、損害保険各社は火災保険料を一斉に引き上げます。損害保険料率算出機構が参考純率の改定を実施し、住宅総合保険・建物のみ補償を含む幅広い商品で10〜15%程度の値上げが見込まれています。
近年の値上げ推移を振り返ると、2015年・2019年・2021年・2022年に段階的な引き上げが繰り返されており、10年前と比べると保険料が1.5〜2倍になったケースも珍しくありません。2026年10月の改定はその中でも「過去最大規模」と位置づけられ、不動産投資家にとって無視できないコスト要因になります。
値上げの主な背景
- 自然災害の頻発化・大規模化:台風・豪雨・豪雪による支払い保険金が増大しており、純率計算に反映される
- 建材・人件費の高騰:修繕・再調達費用が上昇し、保険金支払いの原価が上がっている
- 長期契約の満期到来:2015年の改定で最長10年に短縮された契約が2025年以降に一斉満期を迎え、値上げ後の保険料で更新される件数が急増している
収益物件オーナーへの実務的な影響
火災保険は不動産投資において避けられない固定費です。保険料は確定申告で必要経費として計上できますが、キャッシュフローへの影響は現実の支出として発生します。
保有棟数別・影響試算(目安)
現在の年間保険料を基準に、15%値上げが適用された場合の増加額を試算すると次のようになります(あくまで概算。物件規模・構造・所在地・補償内容により大きく異なります)。
| 保有棟数 | 現在の年間保険料(目安) | 15%値上げ後の年間増加額 |
|---|---|---|
| 1棟 | 5万円 | +7,500円 |
| 3棟 | 15万円 | +22,500円 |
| 5棟 | 25万円 | +37,500円 |
| 10棟 | 50万円 | +75,000円 |
10棟規模のオーナーであれば、年間7〜10万円単位の支出増が続きます。複数棟を10年・15年保有していくと、累積コストの差は相当な額になります。
特に注意が必要なケース
- 2015〜2016年に10年契約で加入した物件:ちょうど2025〜2026年に満期を迎えるため、値上げ幅が最も大きく感じられる
- 長期一括払いで割引を受けていた物件:更新時に一括払い額が大幅に跳ね上がる
- 木造アパートの複数棟保有:木造は保険料率が高いため、値上げの影響が絶対額で大きい
- 台風・水害リスクの高いエリアの物件:地域係数が高く設定されているため、さらに割高になる可能性がある
今すぐ取るべき対策
1. 現在の契約内容を確認する
まず手元の保険証券を確認し、以下を把握します。
- 満期日:2026年10月前に満期が来る契約は、改定前料率での更新が可能かどうか確認する
- 補償内容:水災補償・家財補償が不要な収益物件に付いていないか確認する(外せる場合は削除でコスト削減)
- 再調達価額の設定:建物の時価に対して再調達価額が大きくかけ離れている場合、適正値に是正する
2. 必要な補償のみに絞り込む
賃貸収益物件に必ず必要な補償と、不要なことが多い補償を区別します。
必要性が高い補償
- 火災・落雷・爆発・破裂
- 風災・雹(ひょう)災・雪災
- 水漏れ(配管老朽化を考慮)
- 施設賠償責任(入居者・第三者への賠償)
収益物件では不要なことが多い補償
- 家財(入居者の家財は入居者自身が保険をかける)
- 水災(ハザードマップで浸水リスクが低いエリアでは外せる場合がある)
- 盗難(賃貸用途では実損が限定的)
不要な補償を外すだけで保険料を10〜20%削減できるケースがあります。
3. 見積もりの複数社比較(火災保険の保険料率は会社によって差がある)
損保料率算出機構の参考純率に従いつつも、付加保険料部分(会社の経費・利益)は各社で異なります。複数社の見積もりを取って比較することで、同等の補償内容でも年間数千〜数万円の差が生まれることがあります。
保険代理店(不動産管理会社が提携していることも多い)か、インターネット見積もりを活用します。
4. 長期一括払い vs 年払いの選択を見直す
従来、長期一括払いは割引メリットが大きかったため多くのオーナーが利用していましたが、料率が頻繁に改定される現状では以下の観点で再検討が必要です。
- 長期一括払い(例:5年)をした場合、その期間中は途中での料率変更を回避できる
- ただし、更新時に大きな支出が一度に発生する
- 現金ポジションを確保しておきたいオーナーには年払いが向く場合もある
2026年10月以降に更新する物件については、できるだけ長期一括払いを検討するのが一般的なアドバイスです。改定後は再び値上げまでの猶予期間が数年あることが多いためです。
保険料の経費計上と税務上の注意点
火災保険料は不動産所得の必要経費として計上できます。
- 年払い:支払った年の全額を経費計上(期間按分不要)
- 長期一括払い:支払い全額を支払った年に一括経費計上できます。実務上は税務署が期間按分を求めるケースもあるため、顧問税理士に確認することを推奨します
なお、積立型(満期返戻金付き)の火災保険は、積立部分が資産計上となるため、保険料全額を費用計上することはできません。収益物件には掛け捨て型が適しています。
管理会社・代理店との交渉ポイント
管理会社が火災保険の代理店を兼ねているケースでは、管理委託費とセットで保険料の見直し交渉が可能です。保険料の競合他社見積もりを取ったうえで提示することで、現行の保険を適正価格で継続できる場合があります。
また、複数棟保有のオーナーは**フリート契約(複数物件一括契約)**を検討することで、単棟契約より割引率が高くなる保険商品があります。管理会社や専門の保険代理店に相談してみてください。
まとめ:2026年10月前に必ず確認を
2026年10月の火災保険料改定は、収益物件を長期保有するオーナーにとって避けられないコスト増要因です。重要なのは、改定前に現在の契約を見直しておくこと。
- 満期日を確認し、改定前に更新できるか確認する
- 不要な補償を外してコストを最適化する
- 複数社の見積もりを比較する
- 長期一括払いの活用を検討する
これらの手順を踏むことで、値上げの影響を最小限に抑え、収益物件の実質キャッシュフローを守ることができます。
