役員借入金とは何か
「役員借入金」とは、法人(会社)が役員個人(代表取締役・取締役等)から資金を借り入れることを指します。不動産投資法人(不動産保有・賃貸を目的として設立した合同会社・株式会社等)においては、以下のような場面で役員借入金が活用されます。
- 物件取得時の頭金・諸費用の充当
- 金融機関融資が難しい局面でのつなぎ資金
- 運転資金(空室期間中の修繕費・返済原資等)の補填
個人から法人への貸し付けであるため、法人の財務上は「借入金(負債)」として計上されます。法人を使った不動産投資の全体像についてはコラム一覧のtaxカテゴリも参考になります。
役員借入金の主なメリット
1. 金融機関審査なしで迅速に資金調達できる
金融機関融資と異なり、審査・稟議・融資実行までの時間がかかりません。役員個人の手元資金がある場合、即座に法人口座へ振り込むことで物件取得や緊急の修繕に対応できます。
2. 金利・手数料が柔軟に設定できる
役員からの借入金利は、法人と役員の合意で設定できます。金融機関融資よりも低い金利(または無利息)での借入も可能です。
ただし、無利息・低利率設定には税務上の注意点があります(後述)。
3. 利息を法人の経費に計上できる
法人が役員に支払う利息は、一定の条件を満たせば法人の経費(支払利息)として損金算入できます。法人の課税所得を圧縮する効果があります。
4. 返済スケジュールの柔軟性
役員借入金は法人・役員間の合意で返済条件(月額・返済時期)を柔軟に設定できます。空室期間中は返済を止め、入居率が戻ったら返済再開するなどの対応が可能です。
税務上の注意点
1. 利息の適正水準
役員が法人に無利息または著しく低い金利で貸し付ける場合、原則として貸す側の役員に対する課税上の問題は少ないとされています。ただし、利息を支払う場合、役員が受け取る利息は「雑所得」として個人の確定申告が必要になります。税務上の取り扱いについては、用語集で関連用語を確認するとともに、必ず税理士に相談しましょう。
2. 役員借入金残高と法人財務の健全性
役員借入金が多額になると、法人の貸借対照表上の負債が膨らみ、金融機関から見た信用力(自己資本比率)が低下します。追加融資の申請時に、役員借入金の存在が「他の負債」として評価されるため、新規融資の障壁になる可能性があります。
3. 相続時の取り扱い
役員(たとえば親)が死亡した場合、法人への貸付金は役員側から見れば「貸付金債権」として相続財産に含まれます。相続人(子等)が貸付金債権を引き継いだ後に「債権放棄」を行うと、法人に対する債務免除益が発生し、法人税課税の対象となることがあります。相続・事業承継の計画段階から、税理士と事前に対策することが重要です。相続税対策については相続税対策コラムも参照ください。
役員借入金の実務的な処理方法
借用書(金銭消費貸借契約書)の作成
役員からの借入であっても、必ず「金銭消費貸借契約書」を作成し、借入金額・金利・返済期間・返済方法を明記します。書面がない場合、税務調査で実態が問われるリスクがあります。
利息の計算と支払い
利息を支払う場合、法人は適切な利率(市場金利を参考に設定)で利息を計算し、役員の個人口座へ支払います。役員は受け取った利息を雑所得として確定申告します。
法人帳簿への計上
法人の帳簿では「役員借入金」(短期借入金または長期借入金)として計上し、返済時には元本・利息を正確に区別して処理します。
金融機関融資との組み合わせ
役員借入金単独ではなく、金融機関融資と組み合わせることで以下のような活用が考えられます。
- 頭金・諸費用の充当:金融機関融資の自己資金要件(物件価格の20〜30%)を役員借入金で賄い、残額を金融機関融資でカバーする
- リフォーム資金の調達:金融機関融資が付きにくいリフォーム費用を役員借入金で先行調達し、収益改善後に返済する
投資ツールで返済シミュレーションを行い、役員借入金の返済計画も含めたキャッシュフローを事前に試算することをお勧めします。
まとめ
役員借入金は、不動産投資法人の柔軟な資金調達手段として有効です。金融機関審査なしで迅速に資金を投入できる反面、法人財務の健全性・相続時の債権問題・利息の税務処理など、専門的な注意が必要な論点が多数あります。役員借入金を活用する場合は、必ず税理士・弁護士に相談のうえ、適切な契約書・帳簿処理を行いましょう。
