利益が出ない構図
「家賃収入は毎月あるのに、どうして赤字なんだろう?」このような悩みを持つアパートオーナーは意外に多いです。家賃収入は毎月入ってくるのに、なぜ利益が出ないのでしょうか。
家賃収入 ≠ 利益 の理由
アパート経営での利益計算は、単純な「家賃収入 - ローン返済」ではありません。年間利益は家賃収入から各種経費、減価償却、税金を差し引いた額になります。減価償却は現金支出ではありませんが、税務上の経費となるため、税金計算に影響します。
赤字になりやすいアパートの特徴
- 購入価格が高すぎる:融資額が大きく、ローン返済が家賃収入を超える
- 建築年が古い:修繕費が嵩む、賃料が相場より低い傾向
- 空室が多い:投資計画時の想定入居率と乖離
- 低い賃料相場エリア:地方都市、駅から遠い、競合が多い
赤字になる経費の内訳
1. ローン返済(実質金利負担)
新築アパート3,000万円、フルローン30年返済の場合、元金100万円/年、初年度利息90万円で合計190万円のローン返済が発生します。
2. 修繕費(意外と大きい)
初期修繕では雨漏り補修に50~200万円、設備交換に100~300万円、内装リフォームに30~100万円/戸がかかります。定期修繕では屋根・外壁に150~500万円、給水・排水に100~300万円が必要です。年間家賃収入の10~15%を修繕費として見積もるべきです。
3. 管理費・委託費
管理会社に委託する場合、管理手数料は家賃の5~7%、トラブル対応で別途課金、建物保守点検で月0.5~1万円/戸がかかり、10戸想定で年間36~170万円になります。
4. 固定資産税・都市計画税
新築アパート3,000万円の場合、固定資産税は年間30~50万円、都市計画税は年間10~20万円がかかります。
5. 火災保険・損害保険
木造アパートは年15~30万円、鉄骨造は年20~40万円かかり、火災保険料改定(2026年10月)で10~15%値上げが見込まれています。
利益改善のための施策
1. 家賃設定の最適化
競合物件の家賃相場を調査し、「相場より安く貸しているだけ」でないか確認します。室内リフォーム後、家賃を相場レベルに引き上げ、毎年1~2%の緩やかな値上げを検討することが重要です。
2. 空室対策の強化
空室が1ヶ月減るだけで、年間6万円(1戸、月賃料6万円想定)の家賃回収改善になります。物件紹介サイトの最適化、掲載数増加、新入居時の初期費用軽減が効果的です。
3. 修繕費の最適化
複数見積を取り、無駄な修繕を削減します。複数戸の修繕をまとめて発注することで10~20%の単価削減が可能です。
4. 融資条件の改善
金利が2%以上なら借り換えを検討し、0.5%引き下がると3,000万円ローンで年間15万円の利息削減になります。
赤字物件の実例
ケース1:新築オーバープライシング
購入価格4,000万円、融資3,600万円、年間ローン返済180万円、年間家賃収入720万円の場合、修繕費150万円、管理費・保険等100万円、固定資産税60万円を差し引くと年間利益は230万円となります。ただし、10年目以降の屋根・外壁修繕で赤字に転換することが多いです。
ケース2:相場より低い買値での借金超過
購入価格1,500万円、融資1,200万円、年間ローン返済100万円、年間家賃収入324万円の場合、各経費を差し引くと年間利益は64万円になります。一見黒字ですが、減価償却を考慮すると税務上の赤字が発生します。
見落とされがちな「デッドクロス」問題
デッドクロスとは
アパート経営で中盤以降に黒字倒産的な状況を招く代表的な要因が「デッドクロス」です。これは、減価償却費(現金支出を伴わない経費)が年々減少する一方、ローン返済のうち元金部分(現金支出だが経費にならない)が増えていき、ある時点で逆転する現象を指します。デッドクロスを過ぎると、手元のキャッシュフローは変わらないのに課税所得だけが膨らみ、税負担が増えて実質的な手取りが減っていきます。
対策の選択肢
デッドクロスへの備えとしては、購入時に建物比率・設備比率を適正に按分して償却期間を把握しておくこと、繰上返済や借り換えで元金返済カーブを調整すること、デッドクロス到達前後を目安に売却・買い替えを検討することなどが挙げられます。築古物件を短期償却で購入した場合は特に到達が早いため、購入時点で出口までのシミュレーションを作っておくことが重要です。
まとめ
アパート経営で利益を出すには、購入段階で適正価格を設定し、年間経費を正確に把握し、継続的に収入を最適化し、不要な修繕を削減し、必要に応じて売却・乗換することが重要です。
