用途地域とは
用途地域とは、都市計画法に基づいて定められた土地の利用区分です。住居系、商業系、工業系の3つの大分類のもと、全13種類の用途地域が設定されており、それぞれの地域で建てられる建物の種類や規模が制限されています。
不動産投資において用途地域は、建物の建築制限を通じて物件の収益性や将来の活用可能性に直接影響する重要な要素です。にもかかわらず、利回りや立地に注目するあまり用途地域の確認が不十分なまま購入してしまうケースも見られます。
住居系用途地域と賃貸経営
住居系の用途地域は8種類あり、最も規制が厳しい「第一種低層住居専用地域」から比較的緩やかな「準住居地域」まで段階があります。
第一種・第二種低層住居専用地域では、建物の高さ制限(原則10mまたは12m)があるため、高層の賃貸マンションは建てられません。建ぺい率・容積率も低く設定されているため、限られた土地面積に対して建てられる延床面積が小さくなります。閑静な住宅街としての環境が守られる一方、土地あたりの収益効率は低くなりがちです。
第一種・第二種中高層住居専用地域では、低層住居専用地域よりも高い建物が建てられ、一定の店舗なども許容されます。賃貸マンションの建設が可能であり、駅周辺にこの地域が指定されていることも多いため、賃貸需要と建築自由度のバランスが比較的取れた地域です。
第一種・第二種住居地域、準住居地域では、住宅のほかに一定規模の店舗や事務所、ホテルなども建てられます。幹線道路沿いに指定されていることが多く、多様な用途に活用できる柔軟性がある反面、周辺環境は低層住居専用地域ほど静かではない場合があります。
商業系・工業系用途地域の特徴
近隣商業地域・商業地域は、建ぺい率・容積率が高く設定されており、高層の建物を建てやすい地域です。商業地域では容積率が最大で1,300%に達する場合もあり、土地の収益効率を最大化できる可能性があります。ただし、風俗営業施設なども建てられるため、賃貸物件としての住環境には注意が必要です。
工業系の用途地域のうち、「準工業地域」は住宅も建てられますが、工場との混在が前提の地域です。「工業地域」でも住宅の建築は可能ですが、住環境として敬遠される傾向があります。「工業専用地域」では住宅の建築自体が禁止されています。
建ぺい率・容積率の投資判断への影響
建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の割合の上限です。容積率は敷地面積に対する延床面積の割合の上限です。この2つの数値によって、その土地にどの程度の規模の建物を建てられるかが決まります。
投資判断において特に注意すべきなのは、既存の建物が現在の建築基準に適合しているかどうかです。建築当時は適法であっても、その後の法改正や用途地域の変更により現在の基準に適合しなくなった建物は「既存不適格建築物」と呼ばれます。
既存不適格建築物は現状のまま使用し続けることは問題ありませんが、建て替え時には現行基準に適合させる必要があるため、同規模の建物を再建築できない可能性があります。これは物件の将来的な資産価値に大きく影響するため、購入前に必ず確認しましょう。
見落としがちな規制のポイント
日影規制
中高層の建物が周囲に落とす日影の時間を制限する規制です。住居系の用途地域で適用されることが多く、建物の高さや形状に影響します。土地の容積率に余裕があっても、日影規制によって想定した高さの建物が建てられないケースがあります。
斜線制限
道路斜線、隣地斜線、北側斜線の3種類があり、建物の高さや形状を一定の角度で制限します。同じ用途地域でも前面道路の幅員によって制限の度合いが変わるため、個別の敷地条件を確認する必要があります。
防火地域・準防火地域
用途地域とは別に指定される防火に関する規制です。防火地域や準防火地域では、建物の構造に耐火性能が求められ、建築コストが高くなる傾向があります。一方で、防火地域内の耐火建築物は建ぺい率の緩和を受けられるメリットもあります。
用途地域を投資判断に活かすために
用途地域の情報は、物件そのものの評価だけでなく、将来の周辺環境の変化を予測するうえでも役立ちます。
たとえば、自分の物件が住居系の用途地域にあっても、隣接地が商業系の用途地域であれば、将来大型商業施設が建つ可能性があります。これは利便性の向上として賃貸需要にプラスに作用する場合もあれば、日照や騒音の問題としてマイナスに作用する場合もあります。
契約不適合責任でも触れた法律的な不適合を防ぐためにも、用途地域と建築規制を正しく理解し、物件の将来的な可能性と制約を見据えた投資判断を行いましょう。