イールドギャップとは
イールドギャップとは、不動産投資の利回りと借入金利の差のことです。融資を活用して不動産投資を行う際に、投資によって得られるリターンが借入コストをどの程度上回っているかを示す指標であり、レバレッジ効果の源泉を数値で把握するために使われます。
利回りが高くても、借入金利も高ければ手元に残る収益は限られます。逆に、利回りがそれほど高くなくても、低金利で融資を受けられればイールドギャップは確保できます。物件の収益力と融資条件を一体的に評価できる点が、イールドギャップの大きな特徴です。
イールドギャップの計算方法
イールドギャップには、表面利回りを使う簡易的な方法と、実質利回り(FCR)を使うより正確な方法があります。
簡易的な計算:表面利回り − 借入金利
たとえば、表面利回りが8%で借入金利が2%であれば、イールドギャップは6%です。物件の比較検討を素早く行いたい場合に便利ですが、経費を考慮していないため精度には限界があります。
正確な計算:実質利回り(FCR) − 借入金利
実質利回り(FCR:Free and Clear Return)は、年間の純営業収益(NOI)を物件の総投資額(購入価格+諸費用)で割った数値です。管理費、修繕費、固定資産税、保険料などの経費を差し引いた後の利回りであるため、実態に即した評価が可能です。
投資判断の精度を高めるためには、実質利回りベースのイールドギャップを使うことをおすすめします。利回りの種類と計算方法も参考にしてください。
なぜイールドギャップが重要なのか
レバレッジ効果の判断基準
イールドギャップがプラスであれば、借入を活用することで自己資金に対するリターンを高められる可能性があります。これがいわゆるレバレッジの「正のレバレッジ」です。
逆にイールドギャップがマイナス、つまり利回りが借入金利を下回っている状態では、融資を使うほど自己資金に対するリターンが悪化します。この状態を「逆レバレッジ」と呼び、借入が投資の足かせになります。
レバレッジの基礎で解説されているように、レバレッジは諸刃の剣です。イールドギャップの大きさによって、レバレッジが味方になるか敵になるかが決まります。
異なる条件の物件を比較できる
エリアや築年数が異なる物件を比較する際、利回りだけで判断すると融資条件の違いを見落とします。地方の高利回り物件でも融資金利が高ければイールドギャップは小さくなり、都心の低利回り物件でも低金利の融資が受けられればイールドギャップが確保できます。
融資条件まで含めた総合的な比較を行うために、イールドギャップは有用な物差しとなります。
イールドギャップの目安
イールドギャップの適正水準は、物件の特性やリスク度合いによって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
実質利回りベースで2%以上のイールドギャップがあれば、空室率の変動や経費の増加にもある程度耐えられる余裕があるとされます。1%台では余裕が少なく、わずかな条件変化でキャッシュフローが悪化するリスクがあります。1%未満やマイナスは、よほどの値上がり益を見込まない限り、融資を使った投資としてはリスクが高い水準です。
ただし、この数値はあくまで目安です。融資期間や返済方法(元利均等・元金均等)によって実際のキャッシュフローは変わるため、イールドギャップだけでなくDSCRやBER(損益分岐入居率)も組み合わせて判断しましょう。
金利上昇局面でのイールドギャップ
変動金利で融資を受けている場合、金利が上昇するとイールドギャップは縮小します。現時点でイールドギャップが十分にあっても、金利上昇によってギャップが消失し、逆レバレッジに転じるリスクがあります。
金利が1〜2%上昇した場合にイールドギャップがどこまで縮小するかをシミュレーションしておくことが、金利上昇局面のリスク管理として重要です。購入時のイールドギャップに余裕がある物件を選ぶことが、金利変動リスクへのバッファーとなります。
イールドギャップを改善する方法
イールドギャップを拡大するには、分子(利回り)を上げるか、分母(金利)を下げるかの2つの方向性があります。
利回りの改善としては、賃料の適正化、空室率の改善、運営経費の見直しなどでNOIを向上させる方法があります。物件のバリューアップ投資によって賃料を引き上げられれば、イールドギャップの改善に直結します。
金利の引き下げとしては、複数の金融機関に融資を打診して最も有利な条件を引き出す、取引実績を積んで既存の取引金融機関と金利交渉する、金利が有利な融資への借り換えを検討するといった方法が考えられます。
イールドギャップは物件購入時だけでなく、保有期間中も定期的に確認し、投資の健全性をモニタリングする指標として活用していきましょう。