2棟目以降の融資戦略と金融機関の開拓法
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不動産投資の1棟目を購入し、実際に賃貸経営を始めると、そこから得られる経験と実績は次の物件購入に大きな影響を及ぼします。金融機関は2棟目以降の融資審査において、1棟目の経営状態を重要な判断材料として見ています。
1棟目の物件が安定した家賃収入を生み出し、ローン返済も滞りなく進んでいるのであれば、金融機関からの評価はプラスに働きます。「この借主は実際に賃貸経営を行い、きちんと返済できている」という実績は、机上の事業計画書以上に説得力があります。
逆に、1棟目の物件で空室が多く、キャッシュフローが赤字になっていたり、ローン返済に苦しんでいたりする状況では、2棟目の融資を受けることは非常に難しくなります。2棟目以降の規模拡大を視野に入れるのであれば、まずは1棟目の経営を安定させることが何よりも重要です。
2棟目以降を見据えて、1棟目の段階から意識しておくべきことがあります。
まず、適正な借入額で購入することです。1棟目で無理な借入をしてしまうと、返済比率が高くなり、2棟目の融資余力が残りません。不動産投資ローンの基礎知識でも解説されている通り、融資の審査では既存の借入状況が重視されるため、1棟目の時点から次を見据えた借入額の設定が求められます。
次に、確定申告をきちんと行うことです。不動産所得の申告は、金融機関に対して賃貸経営の実績を証明する最も重要な書類となります。経費を過大に計上して不動産所得を極端に赤字にすることは、節税効果はあるかもしれませんが、2棟目の融資審査ではマイナスに働く可能性があります。
また、金融機関との関係を大切にすることも重要です。1棟目の融資を受けた金融機関の担当者とは定期的にコミュニケーションを取り、経営状況の報告を行うなど、良好な関係を維持しましょう。
1棟目の融資審査と比較して、2棟目以降ではいくつかの追加的な視点で審査が行われます。
最も重要なのが、すでに保有している物件の経営状況です。金融機関は確定申告書や決算書を通じて、既存物件の収支状況を詳細に確認します。
家賃収入が安定しているか、空室率はどの程度か、修繕費用はどのくらいかかっているか、ローン返済を含めた実質的なキャッシュフローはプラスかなど、賃貸経営者としての実力が問われます。1棟目の経営が順調であれば、「この借主はさらに規模を拡大しても問題なく経営できる」と判断されやすくなります。
2棟目を購入する場合、1棟目の既存借入に新たな借入が加わるため、総借入額は増加します。金融機関は、本業の収入と不動産所得を合わせた総収入に対する総返済額の比率(返済比率)を確認し、新たな借入が加わっても安全な水準に収まるかどうかを判断します。
返済比率の上限は金融機関によって異なりますが、一般的に返済比率が高くなりすぎると新規の融資は難しくなります。複数物件の運用戦略と管理の最適化でも触れられている通り、規模拡大においては一物件あたりの収益性とポートフォリオ全体のバランスが重要です。
1棟目の購入時に自己資金をどれだけ使い、現在どのくらいの金融資産が残っているかも確認されます。1棟目の購入で自己資金をほとんど使い切ってしまっている場合、2棟目の審査では不利になることがあります。
1棟目の購入後も計画的に自己資金を積み立て、2棟目の頭金や諸費用に充てられる資金を準備しておくことが大切です。
2棟目以降の融資戦略を考える上で重要なテーマが、金融機関の分散と新規開拓です。
1棟目と同じ金融機関で2棟目の融資を受けることも選択肢の一つですが、同一の金融機関からの借入が増えすぎると、その金融機関の「一借主あたりの融資上限」に達してしまい、3棟目以降の融資が受けられなくなる可能性があります。
また、特定の金融機関に依存すると、その金融機関の融資方針が変わった場合にリスクとなります。メインバンク戦略で解説されている通り、メインバンクとの関係を軸にしつつも、複数の金融機関との取引関係を構築しておくことが、長期的な規模拡大を支える基盤となります。
新しい金融機関を開拓する方法としては、いくつかのアプローチがあります。
物件所在地の地元金融機関に相談するのは最も基本的な方法です。地方銀行や信用金庫は、自行の営業エリア内にある物件への融資には積極的な場合があります。2棟目の物件が1棟目とは異なるエリアにある場合は、そのエリアの地元金融機関に相談してみるとよいでしょう。
自分の居住地・勤務地近くの金融機関に相談する方法もあります。金融機関は借主の居住地や勤務地を営業エリアとして捉えており、そのエリアに住む・働く顧客への融資には前向きなことがあります。
不動産会社からの紹介を受けることも有効な手段です。実績のある不動産会社は複数の金融機関と提携関係にあり、借主の属性や物件に合った金融機関を紹介してくれることがあります。仙台エリアの銀行別融資比較のように、エリアごとに金融機関の特徴を把握しておくと、効率的な開拓が可能です。
金融機関のセミナーや相談会に参加するのも一つの方法です。多くの金融機関が不動産投資家向けのセミナーや融資相談会を開催しており、そこで担当者と直接つながりを作ることができます。
新規の金融機関にアプローチする際は、事前にしっかりとした準備をしておくことが重要です。
持参すべき書類としては、直近の確定申告書(数年分)、既存物件の賃貸借契約書や収支資料、金融資産の一覧、購入を検討している物件の概要書、収支シミュレーション、事業計画書などがあります。
特に重要なのは、既存物件の経営状況を示す資料です。1棟目の物件が安定した収益を上げていることを具体的な数字で示すことで、「この方にお貸ししても大丈夫だ」という安心感を金融機関に与えることができます。
2棟目以降は、単に「良い物件かどうか」だけでなく、「融資が付くかどうか」も含めた総合的な判断が求められます。
金融機関によって評価の高い物件の特徴は異なりますが、一般的に以下のような物件は融資が付きやすい傾向があります。
駅からの距離が近い物件、人口が増加している(または減少が少ない)エリアの物件、築年数が比較的新しい物件、RC造やSRC造の物件(耐用年数が長く、融資期間を長く設定できるため)、賃貸需要が安定しているエリアの物件などが挙げられます。
一方で、築年数が古く耐用年数の残存期間が短い物件は、融資期間が短くなりやすく、毎月の返済額が大きくなるため、キャッシュフローが出にくくなります。利回りが高くても融資条件が厳しければ、投資としての魅力は大きく損なわれることを理解しておく必要があります。
2棟目以降は、1棟目との組み合わせ(ポートフォリオ)の観点も重要です。1棟目がワンルームであれば2棟目はファミリータイプにする、1棟目が都心部であれば2棟目は郊外にするなど、リスクを分散させる視点が求められます。
ポートフォリオの分散投資戦略で解説されている通り、物件タイプ・エリア・築年数などを分散させることで、特定のリスク要因に対する耐性が高まります。金融機関の審査においても、リスク分散が図られたポートフォリオは評価されやすい傾向があります。
ローンの返済額と総返済額をシミュレーションできます
ローン返済シミュレーターで今すぐ計算してみる2棟目以降の融資戦略を考える上で、「どのくらいのペースで規模を拡大するか」という視点も重要です。
短期間で物件数を増やしたいという気持ちは理解できますが、拡大ペースが速すぎると以下のようなリスクが生じます。
まず、自己資金が枯渇するリスクです。物件購入のたびに頭金や諸費用が必要になるため、短期間に複数の物件を購入すると手元資金が大幅に減少します。突発的な修繕や空室の発生に対応できなくなる危険性があります。
次に、管理の質が低下するリスクです。物件数が増えると、それだけ管理に必要な時間と労力も増えます。特に本業を持つ会社員投資家の場合、多くの物件を抱えることで管理が行き届かなくなり、結果として空室率の上昇や物件の劣化を招く可能性があります。
さらに、借入総額が膨らむリスクです。総借入額が大きくなるほど、金利上昇時の返済負担増加や、不動産市況の悪化による資産価値の下落など、外部環境の変化に対する脆弱性が高まります。
適切な拡大ペースは個人の状況(年収、金融資産、家族構成、本業の忙しさなど)によって異なるため、一律の正解はありません。しかし、以下のような基準を参考にするとよいでしょう。
1棟目の経営が安定し、年間を通じて安定したキャッシュフローが出ていることを確認してから2棟目を検討するのが基本です。少なくとも1年程度は1棟目の経営に集中し、賃貸経営のノウハウを蓄積した上で次のステップに進むことをおすすめします。
2棟目の購入後も一定の金融資産が手元に残ることを確認することも重要です。物件購入後に手元資金がゼロに近くなるような無理な購入は避けるべきです。
返済比率が健全な水準に収まっていることも大切です。既存物件のローン返済と新規物件のローン返済を合わせた総返済額が、総収入に対して過大になっていないかを確認しましょう。
2棟目以降は、1棟目とは異なるタイプの金融機関を活用することも戦略の一つです。
日本政策金融公庫は、民間の金融機関とは異なる審査基準を持っています。年齢や年収の面でメリットがある場合もあり、民間金融機関で融資が難しいケースでも相談してみる価値があります。融資額や融資期間には制限がありますが、低金利の固定金利で利用できる場合がある点は魅力的です。
信用金庫や信用組合は、地域密着型の金融機関として、営業エリア内の物件への融資に前向きなことがあります。取引のない状態からでも、口座開設や定期預金の利用などを通じて取引関係を構築していくことで、融資相談がしやすくなります。担当者との距離が近く、細かな相談がしやすい点もメリットです。
1棟ごとに異なる金融機関から融資を受けることで、各金融機関の「一借主あたりの融資上限」を分散させることができます。また、金融機関ごとに得意な物件タイプやエリアが異なるため、物件に合った金融機関を選ぶことで、より良い融資条件を引き出せる可能性があります。
ただし、金融機関の数が増えるほど管理の手間も増えるため、無制限に増やせばよいというものではありません。メインバンクを軸にしつつ、2〜3行程度に分散させるのが現実的な戦略です。
2棟目以降の融資獲得は、1棟目以上に戦略的なアプローチが求められます。1棟目の経営実績を積み上げること、金融機関との関係を構築すること、新規金融機関を計画的に開拓すること、そして適切な拡大ペースを守ることが、持続的な規模拡大の鍵となります。
焦って拡大を急ぐのではなく、一棟一棟の経営を安定させながら着実にステップアップしていく姿勢が、長期的に見て最も確実な成長戦略です。不動産投資ローンの基礎知識で融資の基本を再確認しつつ、自身の状況に合った規模拡大計画を立ててみてください。