複数棟所有のメリットと注意点|規模拡大の戦略
1棟目から複数棟へ:規模拡大を考えるタイミング
不動産投資で1棟目の運用が軌道に乗ると、多くの投資家が次の物件の取得を検討し始めます。複数棟を所有することにはさまざまなメリットがある一方で、管理の手間や資金繰りの複雑化など、見落としがちなリスクもあります。
本記事では、複数棟所有の利点と注意すべきポイントを整理し、規模拡大を進める上での判断基準を解説します。
複数棟所有のメリット
スケールメリットの享受
複数の物件を所有することで、さまざまなスケールメリットが生まれます。たとえば、同じ管理会社に複数物件を任せることで管理手数料の交渉がしやすくなったり、修繕工事をまとめて発注することで単価を抑えられたりする場合があります。
また、確定申告や経理処理の面でも、1棟だけの場合と複数棟の場合で手間がそこまで変わらないケースがあり、1棟あたりの管理コスト(時間・費用)が相対的に下がる傾向があります。
リスク分散
1棟だけに投資資金を集中させると、その物件のエリアの市況悪化や大規模修繕、災害などの影響をダイレクトに受けます。複数棟を異なるエリアや異なるタイプ(ワンルーム・ファミリー向けなど)に分散することで、一つの物件で問題が発生しても他の物件の収益で補うことが可能になります。
仙台市内でも、区によって賃貸需要の特性は異なるため、たとえば青葉区の単身者向け物件と太白区のファミリー向け物件を組み合わせるなど、エリアと入居者層を分散させる戦略が考えられます。
キャッシュフローの安定化
複数棟を所有すると、家賃収入の総額が増えるため、1室の空室が全体のキャッシュフローに与える影響が相対的に小さくなります。たとえば、4室の物件を1棟所有する場合、1室の空室で家賃収入は25%減少しますが、同規模の物件を3棟持っていれば、1室の空室が全体に与える影響は大幅に小さくなります。
複数棟所有の注意点
管理の複雑化
物件数が増えると、それに比例して管理の手間も増えます。入退去の対応、設備の修繕、家賃の入金管理、管理会社とのやりとりなど、日常的な業務量が増加します。
この問題への対応策として、信頼できる管理会社の選定が重要になります。管理会社選びを間違えると、物件数が増えるほどトラブルも増え、本業に支障をきたすリスクがあります。管理会社の選び方については管理会社の選び方と付き合い方を参考にしてください。
融資枠の管理
金融機関は、個人に対する融資の総額に一定の上限を設けています。1棟目、2棟目と取得を重ねるうちに融資枠が圧迫され、希望する条件での融資が受けられなくなる場合があります。
融資枠を効率的に使うためには、以下のような点に注意が必要です。
- 既存借入の返済実績を着実に積み上げる
- 物件のキャッシュフローを健全に維持し、金融機関への信用力を高める
- 自己資金の比率を適切に保つ
- 物件の評価が高い(担保価値のある)案件を優先する
融資戦略の詳細は不動産投資の融資戦略でも解説しています。
大規模修繕の重なり
複数棟を所有する場合、外壁塗装や屋上防水、設備の更新といった大規模修繕のタイミングが重なるリスクがあります。同時期に築年数の近い物件を複数取得すると、修繕時期も同時に訪れ、一度に大きな支出が発生する可能性があります。
このリスクを避けるには、購入する物件の築年数を意図的にずらす、修繕積立金を計画的に積み立てるといった対策が有効です。修繕費の計画については修繕積立金の計画も参照してください。
法人化との関係
複数棟を所有する段階になると、法人化(不動産管理法人の設立)を検討する投資家が増えます。法人化にはいくつかの目的があります。
税務上のメリット:個人の所得税は累進課税のため、不動産所得が増えるほど税率が上がります。法人の場合は一定の税率が適用されるため、一定以上の規模になると法人のほうが税負担を抑えられる場合があります。
融資の拡大:個人の融資枠が限界に近づいた場合、法人名義で新たに融資を受けることで、さらなる物件取得が可能になるケースがあります。ただし、法人の実績や信用力が問われるため、法人化すればすぐに融資が増えるわけではありません。
事業承継の容易さ:将来的に物件を次世代に引き継ぐ場合、法人の株式を移転する形で行うことで、個人名義の不動産を一つずつ名義変更するよりもスムーズに対応できる場合があります。
法人化のタイミングや判断基準については法人化のベストタイミングで詳しく解説しています。
規模拡大の適切なペース
複数棟所有を目指す場合でも、急激な拡大は避けるべきです。1棟目の運用を通じて不動産経営の基本を十分に学び、安定したキャッシュフローを確認してから次の物件に進むのが堅実なアプローチです。
目安として、以下のような段階的なステップを意識するとよいでしょう。
- 1棟目の取得と運用の安定化(入居率の維持、管理会社との関係構築)
- 1棟目の実績をもとに金融機関との信頼関係を築く
- 2棟目以降は、1棟目の経験を踏まえてエリアや物件タイプを分散
- 一定規模に達したら法人化を検討
焦って物件を増やすと、管理が行き届かなくなったり、キャッシュフローが悪化して身動きが取れなくなるリスクがあります。「買いたい時が買い時」ではなく、「買える体制が整った時が買い時」という意識が大切です。
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