収益物件を売却して利益が出ると、譲渡所得税が課されます。この税負担が大きいために売却をためらうオーナーも少なくありません。しかし、売却した物件の代わりに新たな物件を購入する「買い替え」の場合、一定の要件を満たせば課税を繰り延べる(将来に先送りする)ことが可能です。
ここで重要なのは、課税が「免除」されるのではなく、あくまで「繰り延べ」であるという点です。繰り延べられた課税は、買い替え先の物件を将来売却した際にまとめて精算されます。それでも、手元資金を温存して次の投資に回せるという大きなメリットがあります。
不動産投資における買い替えの課税繰り延べで最もよく利用されるのが「事業用資産の買換え特例(租税特別措置法第37条)」です。この特例を適用すると、売却価格のうち一定割合について課税を繰り延べることができます。
この特例にはいくつかの要件があります。制度は改正されることがあるため、適用を検討する際は最新の税制を必ず確認してください。
特例が適用されると、売却価格に対して一定の割合(繰延割合)を超える部分についてのみ課税されます。たとえば繰延割合が80%の場合、売却価格の20%部分に対応する譲渡所得のみが課税対象となり、残り80%分の課税は将来に繰り延べられます。
ただし、買い替え先の物件の取得費は、繰り延べた課税分だけ圧縮されるため、将来その物件を売却する際に譲渡所得が大きくなります。あくまでも課税の先送りであることを認識しておく必要があります。
もう一つの課税繰り延べの仕組みとして、「固定資産の交換特例(所得税法第58条)」があります。これは、同じ種類の固定資産を交換した場合に、譲渡がなかったものとみなす制度です。
交換特例の要件は買換え特例とは異なり、交換する資産が同種であること(土地と土地、建物と建物など)、1年以上所有していた資産であること、交換差金の割合が一定以下であることなどが求められます。物件の交換については物件の交換による資産入替戦略で詳しく解説しています。
買い替え特例の適用には詳細な要件があり、判断を誤ると特例が適用されず想定外の税負担が発生するリスクがあります。必ず不動産税務に詳しい税理士に事前相談しましょう。税理士の選び方については不動産投資に強い税理士の選び方を参考にしてください。
買い替えでは、売却と購入のタイミングを調整する必要があります。売却が先行する場合は購入資金の手当てが比較的容易ですが、購入が先行する場合はつなぎ融資が必要になることがあります。タイミングがずれると特例の適用期限に間に合わなくなるリスクもあるため、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
課税繰り延べには確定申告の手続きや税理士費用などのコストも伴います。また、将来の売却時にまとめて課税されるため、そのときの税率や税制によっては繰り延べない方が有利だったという結果になる可能性もゼロではありません。
課税繰り延べのメリットに目を奪われて、買い替え先の物件選びが疎かになるのは本末転倒です。あくまでも投資判断として優良な物件を選ぶことが大前提であり、税制上の特例はその上で活用するものです。物件選びの基本については初めての物件選びチェックリストも参考になります。
小規模な物件を売却し、より大きな物件に買い替えることで、投資規模を拡大する戦略です。課税繰り延べにより手元資金を温存できるため、自己資金と融資を組み合わせてより大きな物件を取得しやすくなります。規模拡大の戦略については物件の買い増し戦略も参考にしてください。
立地や築年数、物件タイプを入れ替えることで、保有物件の質を改善する買い替えです。たとえば、郊外の築古物件を売却し、仙台市中心部の築浅物件に買い替えることで、空室リスクの低減と管理の効率化を図るといった活用方法があります。
将来のリタイアに向けて、管理の手間がかかる物件を売却し、管理が容易な物件に段階的に入れ替えていく戦略です。課税繰り延べを活用しながら計画的に実行することで、税負担を平準化しつつポートフォリオを整理できます。出口戦略の全体像については出口戦略の基本ガイドで解説しています。
買い替え特例を利用する場合、確定申告で所定の書類を提出する必要があります。売却した資産と取得した資産の詳細、特例の適用を受ける旨の明細書などが求められます。不動産の確定申告全般については確定申告ガイドもあわせてご確認ください。
申告期限を過ぎると特例が適用できなくなる場合があるため、売却した年の確定申告スケジュールには十分注意しましょう。売却益のシミュレーションには利回り計算ツールを活用して、買い替え前後の収益性を比較検討することをおすすめします。
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