四国不動産市場の特性
四国は人口約360万人(2026年推計)の小規模エリアですが、4県それぞれに個性があり、単純な「人口減少地域」という括りでは見えない投資機会が存在します。
四国は橋(瀬戸大橋・明石海峡大橋・来島海峡大橋)で本州・淡路島と繋がり、観光・物流のアクセスが確保されています。また、各県の中心都市(高松・松山・高知・徳島)は県内の人口を集約しており、都市部への集中投資でリスクを抑えることが可能です。
四国全体に共通するのは「人口減少の速度」と「中心都市への集中」という二つの傾向です。この傾向を踏まえると、投資判断の第一原則は「中心都市の中核エリアか、明確な需要(大学・観光・移住)が存在するエリアのみ」に絞ることです。
香川県(高松市)
人口動向: 四国で最も人口密度が高い県。高松市は四国の交通・経済のハブとして安定。岡山との交流も活発(マリンライナー)。高松市の人口は四国4県の県庁所在地の中で最も安定しており、人口流出が相対的に緩やかです。
利回り水準: 高松市内で6〜9%台。瀬戸大橋・高松空港周辺エリアはビジネス需要も一定量。
雇用環境: 行政・流通・製造業(印刷・紙・醤油産業等)の雇用が安定。直島・豊島など芸術観光のインバウンドも増加。香川大学・高松大学等の大学拠点もあります。
投資の実務ポイント:
- 中心部の安定性: 高松市中心部(栗林公園・瓦町周辺)は単身・ファミリー双方の賃貸需要があり、四国内で最も空室リスクが低いエリアです。
- 宇多津・坂出: 瀬戸大橋効果で岡山方面へのアクセスが良く、ビジネス需要も存在。高松市内より利回りがやや高め(8〜11%台)で費用対効果に優れることがあります。
- アートインバウンド: 直島・豊島・小豆島への観光客(特に海外富裕層)の増加に伴い、高松市内のゲストハウス・短期滞在型賃貸への需要が高まっています。
- 注意点: 物件の流動性は都市圏と比べると低い。売却時の買い手を確保しにくい点を踏まえた出口戦略が必要です。
愛媛県(松山市・今治市・新居浜市)
人口動向: 松山市への集中が続く。今治市はタオル産業・造船業で経済基盤がある。新居浜市は住友化学等の大企業工場が立地し、工業都市として安定した人口を維持しています。
利回り水準: 松山市内で6〜10%台。今治市・新居浜市で8〜12%台。
雇用環境: 松山市は行政・医療・観光(道後温泉)。今治は造船・タオル製造の雇用が特徴的。新居浜は大手化学・非鉄金属製造の工場雇用が安定しています。
投資の実務ポイント:
- 道後温泉エリア: 松山市の道後温泉周辺は国内外のインバウンド観光需要が年々増加。古い旅館・民家の民泊転換や、観光客向け短期賃貸への投資機会があります。ただし旅館業法・民泊新法の遵守と地元住民との関係管理が必要です。
- 今治市の製造業需要: タオル産業・今治造船グループ関連の転勤者・単身赴任者向け賃貸需要が安定。月次の入退去管理が重要です。
- 新居浜の企業城下町需要: 大手製造業の工場移転・縮小リスクに注意しつつも、安定した工場勤務者向け需要は継続しています。供給が限られる分、空室率が低いエリアもあります。
- 松山市の大学需要: 愛媛大学・松山大学・松山東雲大学周辺は学生賃貸の需要が安定しており、四国内では比較的良好な投資環境です。
高知県(高知市)
人口動向: 高知県は全国でも人口減少が速い地域のひとつ。ただし高知市への集中は継続。2026年時点で高知市への集中度は高まっており、中心部への投資集中が一層重要になっています。
利回り水準: 高知市内で8〜12%台と高め。
雇用環境: 行政・医療・観光が主要雇用源。農業・一次産業への新規参入者の移住需要も一定量。高知大学・高知工科大学等の大学拠点もあります。
投資の実務ポイント:
- 高知市中心部への集中: 帯屋町・追手筋周辺など高知市中心部のみが投資対象と考えるべきです。郊外エリアは人口減少の影響が大きく、空室率上昇リスクが高い。
- 大学周辺需要: 高知大学(朝倉キャンパス)周辺は学生賃貸の安定需要が存在。工科大学のある永国寺キャンパス周辺も同様です。
- 移住促進の活用: 高知県は移住支援策が充実しており、移住者向けの賃貸需要も一定量あります。「農業・漁業体験移住」を目的とした中長期滞在需要が増加傾向。
- 注意点: 四国4県で最も人口減少が速く、出口戦略(売却先の確保)が最難関。長期保有・地元業者との連携が必要です。
徳島県(徳島市・阿南市)
人口動向: 徳島市への集中は続くが、全体的に人口流出が顕著。近畿圏(大阪・神戸)への人口流出が課題です。しかし、鳴門・徳島市周辺はテレワーク移住先として全国的に認知が高まっています。
利回り水準: 徳島市内で7〜11%台。
雇用環境: 鳴門・半田のフードバレー構想(食品製造業の集積)、医療・行政が雇用基盤。日亜化学工業(LED製造世界大手)の徳島本社・工場は県内雇用の重要な柱です。
投資の実務ポイント:
- テレワーク移住需要: 明石海峡大橋経由での大阪・神戸へのアクセスが良好なため、「テレワーク×週1〜2回出社」スタイルの移住先として人気が高い。徳島市内・鳴門市周辺の中古戸建て・広めのアパートへの需要が増加しています。
- 日亜化学関連需要: 阿南市・徳島市の日亜化学工業周辺は社員・関連企業社員の賃貸需要があり、安定したニッチ需要が存在します。
- 徳島大学周辺: 蔵本キャンパス(医・歯・薬学部)周辺は医療系学生の需要が安定。医療系は在学期間が長く(6年制)安定入居につながります。
- 注意点: 大阪・神戸への人口流出が続いており、人口流入策の継続性には不確実性があります。テレワーク需要の長期持続性を慎重に評価したうえで投資判断することが重要です。
四国全体に共通する投資原則
中心都市への絞り込み: 人口減少が続く中でも、各県の中心都市(高松・松山・高知・徳島)への投資集中がリスク管理の基本です。中心都市から離れるほど空室リスクが急上昇します。
大学周辺の堅実需要: 四国各地に国公立大学が存在し(愛媛大学・高知大学・徳島大学・香川大学)、大学周辺の学生賃貸需要は比較的安定しています。特に医療系・工学系の学部は在学期間が長く、入居の安定性が高い傾向があります。
観光資源の活用: 道後温泉・金刀比羅宮・直島・四万十川など全国的な観光地が各県にあり、民泊・ゲストハウス型の投資機会があります。ただし観光業のシーズン変動と初期投資コスト(設備・許認可)を慎重に試算してください。
移住促進政策の活用: 四国各県は移住促進に積極的で、各種補助金・支援策が充実しています。移住者の賃貸需要が増加しているエリアは投資先として注目です。移住者は定住意向が高く、長期入居につながるケースが多い点もメリットです。
四国投資のリスク管理チェックリスト
投資判断前に確認すべき項目:
- 市区町村単位の人口推計(国立社会保障・人口問題研究所の最新推計を参照)
- 対象エリアの空室率(地元管理会社への聞き込みが有効)
- 大学・工場・行政機関の移転・縮小リスク
- 出口戦略:売却時の買い手確保(地元投資家・地元業者との関係構築)
- 管理体制:現地管理会社の対応力と費用
- 自然災害リスク:南海トラフ地震の想定浸水域・土砂災害リスク(四国は太平洋側で特に高い)
まとめ
四国の不動産市場は人口減少という課題があるものの、各県中心都市への集中・大学周辺需要の活用・観光型投資の組み合わせで収益機会を見出すことができます。四国全体では香川(高松)が最もリスクが低く、愛媛(松山・今治)が安定した雇用に裏打ちされた需要を持ちます。高知・徳島は高利回りが期待できる反面、人口動態リスクを慎重に判断した上での投資が求められます。
四国投資で重要なのは「人口が多い地域への投資」ではなく「選別したエリアに集中し、現地管理体制を整えた上で長期保有する」という姿勢です。現地調査と管理会社との関係構築を投資の前提条件として位置づけてください。
