町田市の賃貸市場が持つ構造的な優位性
町田市は人口約43万人を擁する東京都南部の主要都市であり、多摩エリアの中でも際立った賃貸需要の安定性を誇ります。その最大の強みは「二方面ターミナル」としての立地です。小田急線で新宿方面、JR横浜線で横浜方面へのアクセスが可能なことで、東京都内に勤務する層と神奈川県に勤務する層の双方を入居ターゲットにできます。これは他の郊外都市では得られない希少な特性であり、入居者の絶対数を底上げする構造的な優位性となっています。
また、町田駅周辺には百貨店・大型ショッピングモール・飲食店が密集しており、神奈川県相模原市や横浜市北部からの商業流入を含めた実質的な商圏人口は200万人を超えます。この規模の商圏が形成される郊外都市は全国でも稀であり、商業施設で働く従業員の居住需要が賃貸市場を持続的に下支えしています。
需要を支える3つの柱
1. 都心・横浜への二方面通勤圏
小田急線急行で新宿まで約35分、JR横浜線快速で横浜まで約30分。この二方向へのアクセス性は、入居者が転職や勤務先変更を行った際にも退去に至りにくいという実務上の強みをもたらします。一般的に郊外の賃貸では「勤務先が変わって引っ越した」という退去理由が上位に挙がりますが、町田の場合は東京・神奈川のいずれかに勤務先があれば通勤圏が維持されるため、長期入居率が高くなる傾向があります。
実際、町田市内の築10年以内のワンルーム・1Kでは平均入居期間が3年を超えるケースも多く、単身者向け物件の稼働率は都心物件と遜色ない水準に達しています。
2. 大学・専門学校からの学生需要
桜美林大学、玉川大学、和光大学、国士舘大学など複数の高等教育機関が市内および近隣に立地しており、学生向けワンルーム需要が安定しています。特に各大学の入学シーズンである2〜4月には周辺エリアで空室率が急低下し、家賃も強含みに推移します。
学生需要の特性として、保護者が連帯保証人となるケースが多く貸し倒れリスクが低いこと、また大学在学期間中は同一物件に住み続ける傾向があることが挙げられます。ただし卒業・就職時に一斉退去が発生しやすいため、物件の立地が大学通学圏に特化しすぎていると供給過多になるリスクもあります。複数大学の通学圏が重なるエリアを選定することがリスク低減につながります。
3. 商業・物流拠点の就業者需要
町田市内には大型商業施設のほか、相模原市との境界付近に物流倉庫や工業施設も点在しています。これらの施設で働く層の住居需要も無視できません。特に外国人労働者を含む就業者向けの賃貸需要は近年増加傾向にあり、管理会社の対応力次第では高稼働を維持できるセグメントです。
エリア別の投資特性と利回り水準
- 町田駅周辺(徒歩10分圏内):家賃相場6.5〜8.5万円(ワンルーム・1K)。商業集積の中心で単身者需要が最も強いエリアです。築浅物件(築5年以内)の利回りは5〜7%と控えめですが、空室リスクが低く安定したキャッシュフローが期待できます。築10〜20年の中古物件では7〜9%程度の表面利回りも視野に入り、リノベーション投資との相性が良いエリアです。
- 鶴川エリア:家賃相場5〜6.5万円。小田急線鶴川駅周辺は和光大学・国士舘大学の通学圏が重なるゾーンで、学生需要を中心とした堅実な賃貸市場が形成されています。表面利回り7〜9%の物件が流通しており、初期投資を抑えたい投資家にとって入口として検討しやすいエリアです。
- 成瀬・つくし野エリア:家賃相場5.5〜7万円。JR横浜線沿線のファミリー層向けエリアです。横浜・東神奈川方面への通勤需要が厚く、2LDK以上のファミリー向け物件でも表面利回り6〜8%が見込めます。子育て世帯が定着しやすい環境であるため、長期安定入居が期待できます。
- 相原・橋本方面:家賃相場4.5〜6万円。JR横浜線の相原駅・橋本駅(相模原市)周辺は利回りが高く10%前後も視野に入りますが、商業集積が薄いため入居者ターゲットが限定的です。物件選定は慎重に行う必要があります。
リスクと注意点
町田市で投資を検討する際に見落とせないのが、多摩エリア全体の人口動態です。東京都の将来推計では多摩地域の人口は2025年以降、緩やかな減少局面に入ると見られており、長期保有前提の投資では出口戦略を事前に設計しておく必要があります。
また、新築アパート・マンションの供給が継続している点も注意が必要です。特に大学周辺では築浅の競合物件が増加すると既存物件の競争力が低下します。購入時の利回りに満足せず、10年後・20年後の家賃下落リスクを加味したシミュレーションを行うことが肝要です。
加えて、建築コストの高騰により新築物件の価格水準が上昇しており、利回り5%台の物件が増えています。このような環境下では、適切にリノベーションされた中古物件の相対的な優位性が高まっています。
2026年の市場見通しと投資戦略
町田市の2026年賃貸市場は、全体として「緩やかな安定」と評価できます。23区に比べて物件価格の高騰が抑制されており、利回りと安定性を両立できるエリアとして投資家の関心は継続的に集まっています。
特に注目されるのは、リモートワーク定着後の「適度な都心距離」への需要です。毎日通勤する必要がない就業者にとって、新宿まで35分・家賃が比較的安価な町田は十分な選択肢となります。こうした需要は今後数年間、町田の賃貸市場を緩やかに押し上げる方向に作用すると考えられます。
投資戦略としては、駅徒歩10分以内・築15〜20年程度の中古ワンルームマンションを取得し、水回りと内装を中心にコンパクトなリノベーションを施すアプローチが費用対効果の面で優れています。表面利回り7〜9%を確保しつつ、管理会社による空室対策を徹底することで安定したキャッシュフローの確保が見込めます。
二方面アクセスという地理的優位性と大学需要による安定した入居層を背景に、町田市は2026年においても郊外投資の有力候補エリアであり続けるでしょう。
