低未利用土地等の特別控除とはどんな制度か
不動産投資で長年保有してきた空き地や低収益の土地、あるいは相続で引き継いだが活用できていない郊外の土地を売却する際に活用できる税務特例がある。「低未利用土地等の上に存する権利の譲渡に係る長期譲渡所得の特別控除」、通称「低未利用土地等の100万円特別控除」だ(租税特別措置法第35条の3)。
この制度は2020年に創設され、その後延長・拡充が繰り返されている。2026年6月時点では適用期間が延長されており、一定の要件を満たせば長期譲渡所得から最大100万円を控除できる。
活用が期待される不動産投資家の典型的なシナリオは以下の通りだ。
- 都市部の駐車場や更地として長年保有してきたが、収益性が低く売却を検討している
- 相続した郊外の土地を管理できず、空き地のまま固定資産税だけ払い続けている
- 地方の投資物件を取り壊したあとの跡地が不要になった
適用要件を正確に理解する
この特例は誰でも・どんな土地でも使えるわけではない。主な適用要件を整理しよう。
土地の所在・状態に関する要件:
売却価格に関する要件:
- 売却価格(譲渡対価)が500万円以下であること(一定の都市計画区域においては800万円以下など上限の異なる場合がある)
- この価格上限は1筆の土地の価格が基準となる(複数筆まとめて売るとオーバーする場合があるので注意)
保有期間に関する要件:
- 売却した年の1月1日現在で保有期間が5年超の「長期」保有であること
買主・使途に関する要件:
- 売却後に買主が低未利用状態を解消すること(活用予定の確認書類が必要)
- 親族・同族会社への売却は対象外
空き家特例(3000万円特別控除)との違い
不動産オーナーが混同しやすいのが、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の3000万円特別控除」との違いだ。両者は異なる特例であり、適用要件も目的も別物だ。
空き家特例(3000万円控除)の主な特徴:
- 相続した被相続人の居住用財産が対象(居住していた空き家)
- 1981年5月31日以前の建築(旧耐震)または取り壊し後の更地が対象
- 売却価格(対価)に上限なし(ただし2024年1月以降は相続人が3人以上の場合は2000万円特別控除に引き下げ)
- 耐震リフォームまたは取り壊し後に売却する条件あり
低未利用土地100万円特別控除の主な特徴:
- 現在「低未利用状態」であれば居住用でなくてよい(更地・投資目的で保有した遊休地も対象)
- 対価500万円以下(または800万円以下)の小規模な取引が対象
- 保有期間は長期(5年超)であれば相続財産に限らない
- 取り壊しや耐震リフォームが不要な更地も対象
つまり空き家特例は「相続した旧耐震の居住用物件」向け、低未利用土地特例は「長期保有の小規模遊休地」向けとざっくり理解するとわかりやすい。
実際の節税効果はどのくらいか
長期譲渡所得の税率(所得税15%+住民税5%=合計20.315%)に照らすと、100万円の控除は約20万円の税額軽減になる。売却益が少額の土地なら、これだけで課税所得をゼロに近づけることも可能だ。
計算例:
- 取得費:150万円(相続で取得、路線価ベース)
- 売却価格:400万円
- 譲渡費用:仲介手数料等12万円
- 長期譲渡所得:400万円 − 150万円 − 12万円 = 238万円
- 特別控除後の課税所得:238万円 − 100万円 = 138万円
- 税額:138万円 × 20.315% ≈ 28万円(特例なしだと約48万円)
- 節税効果:約20万円
ただし取得費が極端に小さく(概算5%適用)、かつ売却価格が500万円に近い場合は、節税効果が大きくなる。
適用手続きと必要書類
この特例の適用を受けるためには確定申告が必要だ。申告時に以下の書類を添付または保管する。
- 売買契約書のコピー
- 市区町村長が発行する「土地の適正な利用・管理が確保されることについての市区町村長の確認書」(買主の活用計画が確認された証明)
- 市街化区域内であることを示す都市計画図など
「市区町村長の確認書」の取得が実務上の一つのハードルだ。買主が活用計画を持っている(建物を建てる、駐車場として整備するなど)前提で、売却前後に市区町村の窓口で申請を行う流れになる。
買主が決まったら早めに確認書の取得手続きを進め、確定申告期限(翌年3月15日)に間に合わせることが重要だ。
まとめ:遊休地売却の出口戦略として活用する
低未利用土地の100万円特別控除は、500万円以下という価格制限はあるものの、長期保有の郊外遊休地・空き地を売却する際の有力な税務ツールだ。空き家3000万円特例との対比で自分の物件にどちらが使えるかを把握し、売却前に税理士と相談して申告準備を整えることが大切だ。市街化区域内の空き地・跡地を保有している場合は、候補に挙げておく価値がある制度だ。
