太陽光発電を導入した収益物件オーナーにとって、FIT(固定価格買取制度)の買取期間終了後の対応は重要な経営課題です。住宅用の10kW未満システムは2009年から普及が加速しましたが、FIT期間(10年間)が終了したシステムが年々増加しており、「FIT卒業」後の方針を決めなければならない時期が到来しています。本記事では、収益物件オーナーが知るべきFIT卒業後の選択肢と判断基準を解説します。
FIT卒業とは何か
FIT(Feed-in Tariff:固定価格買取制度)は、太陽光発電などで生産した余剰電力を一定期間、国が定めた固定価格で電力会社が買い取る制度です。住宅用(10kW未満)の場合、買取期間は10年間に設定されており、2009〜2015年頃に設置されたシステムのFIT期間はすでに終了または終了が近づいています。
FIT期間終了後は、固定の高単価(設置時期によっては42円/kWh以上)での売電ができなくなり、「卒FIT」単価(2025〜2026年度は7〜9円/kWh程度)での売電か、他の活用方法を選ぶ必要があります。
FIT卒業後の4つの選択肢
選択肢1:余剰電力を引き続き売電(卒FIT電力買取サービス)
FIT期間終了後も、電力会社や新電力各社が提供する「卒FIT買取サービス」に申し込むことで余剰電力の売電を継続できます。ただし、買取単価はFIT期間中よりも大幅に低下します。
- FIT期間中(例: 2009年設置): 42円/kWh(固定)
- 卒FIT後: 7〜12円/kWh程度(新電力各社の提示単価)
賃貸物件の共用部電力として活用できない場合、あるいは蓄電池導入が経済的に合わない規模の場合は、この低単価での売電継続が現実的な選択肢となります。
選択肢2:自家消費型へ転換(蓄電池併設)
蓄電池を設置することで、日中に太陽光で発電した電力を夜間や曇天時に活用する「自家消費」へ移行できます。電力の自家消費は売電よりも高い経済メリットをもたらすことがあります。
例えば、夜間の電力単価が30円/kWhの場合、売電単価8円/kWh対比で、自家消費すれば1kWhあたり22円のコスト削減となります。
蓄電池のコストと回収期間
- 設置費用の目安: 容量4〜10kWhの家庭用蓄電池で50〜150万円程度
- 回収期間: 電気代削減効果・売電単価・システム容量によって10〜15年が目安
- 補助金: 国・自治体の省エネ補助金が利用できる場合あり(毎年度要確認)
収益物件では共用部の電力消費量が比較的少ないため、蓄電池投資の費用対効果は個別に試算が必要です。
選択肢3:入居者への電力供給(自家消費型マンション電力プラン)
賃貸マンション・アパートで各戸に電力を供給する「自家消費型電力サービス」を活用する方法です。太陽光発電で作った電力を入居者へ供給し、入居者の電気代を削減しながらオーナーが電力販売収益を得る仕組みです。
一定規模以上の集合住宅で有効な手法ですが、電力販売には「特定供給」に関する法令の確認と、専門事業者との連携が必要です。
選択肢4:設備の撤去または更新
設置から15年以上経過したシステムは、パネルの発電効率低下・パワーコンディショナーの故障リスクが高まります。メンテナンスコストが発電収益を上回る見込みの場合は、設備の撤去・処分または新型システムへの更新も選択肢です。
- 撤去・処分費用: 10kW未満で10〜30万円程度(パネルの廃棄処理費含む)
- 新型パネルへの更新: 最新パネルは変換効率が高く、旧設備との交換で発電量増加も期待できる
FIT卒業後の判断フロー
FIT期間終了に際して、以下の順序で検討することをおすすめします。
- 現在のシステム発電量と健全性の確認: パネル・パワーコンディショナーの点検で異常がないか確認
- 自家消費可能な電力需要の把握: 共用部・各戸の電力消費量を確認し、自家消費の余地を算出
- 蓄電池投資のシミュレーション: 蓄電池コスト・補助金・電気代削減効果で回収期間を試算
- 売電継続か自家消費かの判断: 卒FIT単価と自家消費単価(節約分)を比較
- 設備状態に応じた更新・撤去の検討: 発電効率の大幅低下・修繕コスト増加が見込まれる場合
収益物件としての活用ポイント
賃貸経営の観点からは、太陽光発電の「FIT卒業後問題」をリスクではなく機会として捉える視点も重要です。
- 物件の差別化: 蓄電池・太陽光設備を「電気代節約物件」として入居者にアピール
- 省エネ基準適合: 2025年省エネ基準への対応として評価される
- ZEH水準への転換: 断熱改修と組み合わせることで、より高い省エネ性能の物件への転換も
まとめ
FIT期間終了は、太陽光発電を設置した収益物件オーナーが避けられない課題です。売電継続・蓄電池自家消費・入居者電力供給・設備更新のいずれが最適かは、物件の規模・電力消費量・設備状態・補助金の活用可否によって異なります。FIT終了の1〜2年前から計画的に対応を検討し、専門業者への相談と試算を行うことで、太陽光発電設備を引き続き収益に貢献させる経営を実現できます。
