不動産投資の物件情報を見ていると、表面利回り12%、15%といった高利回り物件が目に留まることがあります。他の物件が5〜8%程度の中で、これらの物件は非常に魅力的に映るでしょう。しかし、利回りが高いということは、それだけのリスクが内包されているということでもあります。
本記事では、表面利回りの高さだけを根拠に物件を購入し、大きな損失を被った投資家の事例を詳しく解説します。同じ失敗を繰り返さないために、何が問題だったのか、どうすれば防げたのかを一緒に考えていきましょう。
会社員のAさん(40代)は、老後の資産形成を目的に不動産投資を始めることを決意しました。インターネットで物件を探す中で、地方都市にある築25年の木造アパート(8戸)を発見します。物件価格は2,400万円、満室想定の年間家賃収入は360万円で、表面利回りは15%という魅力的な数字でした。
都心部では表面利回り5〜6%程度が相場であることを考えると、15%は破格に見えました。Aさんは「地方だから利回りが高いのは当然」と考え、現地調査もそこそこに購入を決断します。
購入後、すぐに問題が表面化しました。まず、8戸中3戸が空室で、実際の入居率は62.5%。年間家賃収入は満室想定の360万円ではなく、実際には225万円にとどまりました。
さらに、以下の経費が次々と発生します。
経費合計は年間約243万円。家賃収入225万円に対して年間キャッシュフローはマイナス18万円という赤字経営に転落しました。
Aさんは3年間この物件を保有しましたが、空室状況は改善せず、毎年20〜30万円の持ち出しが続きました。さらに外壁の大規模修繕が必要となり、約180万円の追加出費が発生。最終的に、購入価格2,400万円に対して1,600万円で売却し、トータルで約1,000万円の損失となりました。
表面利回りは「年間家賃収入÷物件価格×100」という単純な計算式で求められます。しかし、この計算には経費が一切含まれていません。管理費、修繕費、税金、保険料、空室損失などを差し引いた実質利回りは、表面利回りから大きく低下するのが一般的です。
Aさんのケースでは、表面利回り15%に対して、実際の実質利回りはマイナスでした。この差を事前に把握できていれば、購入の判断は変わっていたはずです。利回りシミュレーターで表面利回りと実質利回りの差を事前に計算しておくことが重要です。
利回りが高い物件には、必ず理由があります。主な原因としては以下が挙げられます。
これらの要因によって物件価格が下がり、計算上の利回りが高くなっているだけです。「なぜこの利回りなのか」を徹底的に調べることが不可欠です。
物件広告に記載されている利回りは、ほとんどの場合「満室想定」で計算されています。実際の入居率を確認し、空室が発生した場合の利回りを自分で計算しましょう。周辺エリアの平均空室率も調査し、将来的な空室リスクを見積もることが大切です。
築古物件を検討する際は、過去の修繕履歴を必ず確認しましょう。屋根、外壁、給排水管、電気設備などの主要設備がいつ最後に更新されたかを把握し、今後必要となる修繕費用を見積もります。目安として、築20年以上の物件では購入後5年以内に物件価格の10〜15%程度の修繕費用が発生する可能性を想定しておくべきです。
人口動態、世帯数の推移、近隣の大学や企業の動向、再開発計画の有無など、周辺エリアの賃貸需要に影響する要素を多角的に調査しましょう。人口が減少しているエリアでは、いくら利回りが高くても長期的な安定運用は困難です。
高利回りの物件は一見魅力的ですが、その裏には必ずリスクが隠れています。表面利回りだけで投資判断をするのは、地図を見ずに旅に出るようなものです。
投資判断の際には、以下の3つを必ず実行しましょう。
キャッシュフローシミュレーターを活用して、購入前に複数のシナリオを検証することを強くおすすめします。「利回りが高い=良い物件」ではないことを常に意識して、冷静な投資判断を心がけてください。