不動産投資を始めようとすると、最初に目につくのが「利回り」の数字です。ポータルサイトには「利回り10%!」「高利回り物件!」といった魅力的な文言が並んでいます。
しかし、この数字だけを頼りに物件を選んでしまうのは、初心者が最も陥りやすい失敗パターンの一つです。なぜなら、サイトに掲載されている利回りのほとんどは「表面利回り」であり、実際に手元に残る収益とは大きくかけ離れていることが多いからです。
この記事では、利回りだけで判断することの危険性と、本当に見るべき指標について解説します。
「表面利回り12%」という数字に惹かれて、地方の築古アパートを購入。しかし実際には空室率が高く、修繕費も想定以上にかかり、手元に残るキャッシュフローはほぼゼロ、場合によってはマイナスになるケースがあります。
物件資料に記載されている利回りが「満室想定」であることに気づかず購入。実際には8室中3室が空室で、想定していた家賃収入の6割しか得られないという事態に陥ります。
表面利回り8%の物件を購入したものの、管理費・修繕積立金・固定資産税・火災保険料などを差し引くと、実質利回りは3%台に。さらにローン返済を加味すると、キャッシュフローはほとんど残りません。
表面利回りは、年間想定家賃収入を物件価格で割っただけのシンプルな指標です。
表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
一方、**実質利回り(NOI利回り)**は、年間家賃収入から実際にかかる経費を差し引いて計算します。
実質利回り =(年間家賃収入 − 年間経費)÷(物件価格 + 購入諸費用)× 100
この「年間経費」には、管理費、修繕費、固定資産税、火災保険料、空室損失分などが含まれます。物件の収益性を正しく判断するには、必ず実質利回りで比較しましょう。
満室想定ではなく、エリアの平均空室率を反映させた収入で計算することが重要です。地方物件や築古物件は特に空室リスクが高いため、10〜20%の空室率を見込んでおくのが安全です。
一般的に、家賃収入に対する経費率は20〜30%程度です。区分マンションの場合は管理費・修繕積立金だけで15〜20%かかることもあります。
| 項目 | 金額 | |------|------| | 管理委託費(家賃の5%) | 15万円 | | 修繕費積立 | 24万円 | | 固定資産税・都市計画税 | 18万円 | | 火災保険料 | 6万円 | | 空室損失(20%想定) | 60万円 | | 入居者募集広告費 | 12万円 | | 年間経費合計 | 135万円 |
表面利回り10%が、実質利回りでは5.1%にまで下がりました。ここからさらにローン返済を差し引くと、手元に残るキャッシュフローはかなり限られることがわかります。
仮にこの物件を全額ローン(金利2.5%、30年返済)で購入した場合、年間のローン返済額は約142万円です。
税引前キャッシュフロー = 165万円 − 142万円 = 23万円/年
月に換算すると約1.9万円。ここから所得税・住民税を支払うと、手残りはほとんどありません。さらに空室が1室増えるだけで赤字に転落します。「表面利回り10%」という数字の裏側に、こうした厳しい現実が隠れているのです。
すべての物件で表面利回りと実質利回りの差が同じわけではありません。以下のような物件は、特にその差が大きくなりやすいため注意が必要です。
差が大きくなりやすい物件
差が比較的小さい物件
物件を比較する際は、「表面利回りの高い物件」ではなく「実質利回りの高い物件」を選ぶ意識を持ちましょう。表面利回りが低くても、経費が少なければ実質利回りでは逆転するケースも珍しくありません。
物件を検討する際は、以下の項目を必ず確認しましょう。
正確な利回り計算には、以下のツールが便利です。
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利回りの高さは物件を選ぶうえで重要な指標ですが、表面利回りだけを見て判断するのは非常に危険です。必ず実質利回りを計算し、空室率やランニングコストを現実的に見積もったうえで投資判断を行いましょう。
最初はシミュレーションに時間がかかるかもしれませんが、この手間こそが不動産投資の成功と失敗を分ける分岐点です。焦らず、一つひとつの数字を丁寧に確認する習慣をつけていきましょう。
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