建築材料価格の上昇が止まらない背景
2020年代に入り、建築材料の価格上昇は不動産オーナーにとって無視できないリスク要因となっています。コロナ禍によるサプライチェーン混乱、ウクライナ情勢に伴うエネルギー価格上昇、そして円安による輸入コスト増が重なり、主要建材の価格は2019年比で大幅な上昇を続けています。
国土交通省の建設工事費デフレーターによると、2026年の建築工事費は2015年比で45〜55%程度の上昇となっており、今後も緩やかな上昇が続く見通しです。特に影響が大きいのは、修繕・リフォーム工事において高頻度で使用される素材です。物件の実質コストを把握するにはキャッシュフロー計算ツールを活用することをお勧めします。
主要建材別の価格動向
鉄鋼・鉄筋:高炉メーカーの生産コスト上昇と国際市況の影響を受け、異形棒鋼(D10〜D13)は2020年比で30〜40%高い水準が続いています。RC造マンションの大規模修繕(外壁補修・鉄筋露出修理)ではこの影響が直撃します。2026年は中国の鉄鋼需要動向次第で変動が見込まれますが、高水準維持が基本シナリオです。
木材(製材・合板):ウッドショック後の落ち着きは見られるものの、国内林業の担い手不足・輸送コスト増により国産材・輸入材ともに2019年比15〜25%高の水準が続いています。木造アパートの床・壁修繕、内装リフォームコストに直接影響します。
コンクリート・セメント:燃料費の上昇を背景に生コンクリートの価格は地域によって2020年比20〜30%上昇しています。基礎補修・外構工事・駐車場改修など、コンクリート使用工事の見積額が増加しています。
防水材・断熱材:石油化学製品の原料高騰により、防水シートやウレタン断熱材も高値圏で推移。屋上・バルコニーの防水工事や外断熱改修の単価が上昇しています。
修繕コスト上昇が利回りに与える影響
表面利回り7%の物件を例に試算します。購入価格3,000万円、年間賃料収入210万円の場合、表面利回りは7%です。
このうち年間の修繕費・管理費・固定資産税などの運営コストを除いた実質(NOI)利回りを計算する際、修繕積立費の水準が重要になります。建築材料価格が20%上昇すると、10年に1度実施する外壁塗装(従来100万円想定)が120万円になり、年換算では2万円の費用増となります。単独では小さく見えますが、大規模修繕全体(給排水・電気設備・防水・外壁等)を合算すると、年間の修繕コストが15〜30万円規模で増加するケースも珍しくありません。
購入価格3,000万円の物件で年間修繕コストが20万円増えると、実質利回りは0.67%ポイント低下します。表面利回りが高く見えても、修繕コスト増を反映した実質利回りで判断することが重要です。
2026年に向けた修繕コスト管理の戦略
①修繕積立計画の見直し:既存物件の長期修繕計画を現在の材料単価に基づいて更新し、積立不足がないか確認することが急務です。区分マンションであれば管理組合の修繕積立金の充足状況も確認しましょう。
②見積取得の分散化:特定の工務店に依存せず、複数社から見積もりを取ることで競争原理を働かせます。また、繁忙期(春・秋)を避けた工事発注により、人件費の割増しを抑えられる場合があります。
③予防保全の徹底:修繕コストの上昇局面では「小さな不具合を早期に対処する」予防保全がより重要になります。大規模修繕まで放置することで、修繕範囲が拡大しコストが増大するリスクを避けるためです。
④材料価格が落ち着くタイミングを見極める:緊急性のない修繕工事は、材料価格の変動を見ながら実施時期をコントロールすることも一つの手です。ただし、雨漏りや安全に関わる工事は先延ばし厳禁です。
⑤リノベーションの費用対効果再計算:バリューアップ目的のリノベーション投資も、工事費が上昇した環境では回収年数が長くなっています。賃料増額効果との比較計算を必ず行い、費用対効果を確認してから発注しましょう。リノベーション投資の考え方も参考にしてください。
まとめ:コスト増を前提にした物件選定と運営を
2026年の建築材料価格は、大幅な下落は見込みにくく、高止まりないし緩やかな上昇が続く見通しです。物件取得時の利回り計算には「修繕コスト増」を織り込み、実質キャッシュフローで評価する習慣が不可欠です。
既存物件オーナーは、長期修繕計画の更新と積立不足の解消を優先し、適切なタイミングでの予防修繕を積み重ねることで、コスト上昇局面でも安定した収益を維持できます。
