
不動産投資で家賃収入を得たら、確定申告が必要です。初めての方でも迷わないよう、8つのステップで申告手順を分かりやすく解説します。さらに、青色申告65万円控除の要件、減価償却の計算、経費にできるもの・できないもの、損益通算と繰越控除まで掘り下げて解説します。
不動産投資で得た家賃収入は「不動産所得」として確定申告が必要です。給与所得がある会社員でも、給与以外の所得(不動産所得など)の合計が年間20万円を超える場合は所得税の確定申告義務があります。なお、20万円以下で所得税の申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要です。不動産所得は給与所得などと合算して総合課税の対象となるため、損益通算も可能です。不動産所得がマイナス(赤字)の場合は、給与所得などと相殺して税負担を軽減できます。
確定申告に必要な書類を事前に準備しましょう。日頃から領収書や契約書を整理しておくことで、申告時の負担が大幅に軽減されます。青色申告を行う場合は、原則としてその年の3月15日まで(新規開業の場合は開業日から2ヶ月以内)に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出しておく必要があります。
1年間(1月1日〜12月31日)の不動産収入の合計を計算します。家賃だけでなく、礼金・更新料・共益費なども収入に含まれます。敷金・保証金のうち退去時に返還する部分は預り金であり収入に計上しませんが、返還しないことが確定している部分(償却分など)は収入となります。
不動産所得を計算する上で、必要経費として認められる項目を漏れなく計上することが重要です。経費を適切に計上することで、課税所得を圧縮し、税負担を軽減できます。ただし、生活費との混同がないよう、不動産投資に直接関連する支出のみを経費として計上しましょう。
建物は年数の経過とともに価値が減少するため、その減少分を「減価償却費」として毎年の経費に計上できます。土地は時の経過により価値が減少しないため減価償却の対象外です。取得価額を建物と土地に按分し、建物部分のみを耐用年数に応じて償却します。1998年4月1日以後に取得した建物、および2016年4月1日以後に取得した建物附属設備・構築物は、定額法のみで償却します。減価償却は不動産投資における節税の柱となる重要な項目です。
収入から経費を差し引いて不動産所得を算出します。青色申告の場合は、さらに青色申告特別控除(最大65万円)を差し引くことができます。算出した不動産所得は、給与所得などの他の所得と合算して課税所得を計算します。所得税は超過累進税率で、課税所得の各区分ごとに段階的に税率が上がる仕組みです。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の案内に沿って入力するだけで申告書を作成できます。会計ソフトを使用している場合は、データを直接e-Taxに連携することも可能です。判断に迷う点が多い初年度などは、税理士に相談することをおすすめします。
確定申告の提出期限は原則として翌年の2月16日から3月15日までです(土日祝日にあたる場合は翌平日にずれます)。e-Tax(電子申告)、郵送、税務署窓口への持参の3つの方法があります。青色申告特別控除65万円を受けるには、複式簿記による記帳・貸借対照表の添付に加えて、e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存のいずれかが必要です(これらを満たさない場合は控除額は最大55万円)。
青色申告特別控除は、満たす要件によって控除額が65万円・55万円・10万円に分かれます。65万円控除には「事業的規模」と「複式簿記」、さらに「e-Tax申告または電子帳簿保存」の3つすべてが必要です。一つでも欠けると控除額が下がります。
| 控除額 | 事業規模の要件 | 記帳・申告の要件 |
|---|---|---|
| 65万円控除 | 事業的規模(おおむね5棟10室以上) | 複式簿記+貸借対照表添付+e-Tax申告または電子帳簿保存 |
| 55万円控除 | 事業的規模(おおむね5棟10室以上) | 複式簿記+貸借対照表添付(e-Tax・電子帳簿保存なし) |
| 10万円控除 | 事業的規模に満たない場合も対象 | 簡易簿記でも可(複式簿記でない、または事業的規模未満) |
不動産所得の必要経費は「賃貸経営に直接かかった費用」が原則です。判断に迷いやすい項目を、計上できるものとできないものに整理しました。
中古物件は「簡便法」で耐用年数を短く計算でき、その分1年あたりの減価償却費を大きく取れます。1998年4月1日以後取得の建物は定額法(毎年同額を償却)で計算します。
木造アパート(法定耐用年数22年)、築20年で取得。建物部分の取得価額を1,500万円とする(土地部分は減価償却の対象外のため除く)。
経過年数が法定耐用年数未満のため「(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%」で計算。(22年 − 20年)+ 20年 × 0.2 = 2 + 4 = 6年(1年未満切り捨て)。
耐用年数6年の定額法償却率は 0.167。
1,500万円 × 0.167 = 年間 約250.5万円。これを耐用年数の6年間、経費として計上できる。
※ 法定耐用年数をすべて経過した中古物件は「法定耐用年数 × 20%」で計算します(例: 木造22年 × 0.2 = 4年)。実際の取得価額の按分・端数処理は物件ごとに異なるため、減価償却計算ツールや税理士で確認してください。
減価償却計算ツールを使う不動産所得が赤字になった場合、給与所得など他の黒字の所得と相殺できます。これを損益通算といい、源泉徴収された税金の還付につながることがあります。ただし、損益通算には制限があります。
不動産所得の赤字は、給与所得・事業所得などの黒字と通算でき、合算後の課税所得を引き下げられます。給与から源泉徴収されていた所得税が還付される場合があります。
不動産所得が赤字のとき、その赤字のうち「土地等を取得するための借入金の利子」に対応する部分は損益通算の対象になりません。建物分の借入金利子は対象になります。
青色申告者は、損益通算してもなお控除しきれなかった純損失を、原則として翌年以降3年間にわたって繰り越し、各年の所得から控除できます(純損失の繰越控除)。
減価償却が終わると経費が減り、所得・納税額が増える傾向があります。損益通算による還付は永続しないため、出口戦略まで見据えた資金計画が重要です。
給与を1か所から受けている会社員でも、給与所得・退職所得以外の所得(不動産所得など)の合計が年間20万円を超える場合は所得税の確定申告が必要です。20万円以下で所得税の申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要です。また、赤字を損益通算して還付を受けたい場合は、20万円以下でも確定申告を行います。
65万円控除には、(1) おおむね5棟10室以上の「事業的規模」であること、(2) 複式簿記による記帳と貸借対照表の添付、(3) e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存、の3つすべてが必要です。(3)を満たさない場合は最大55万円、事業的規模に満たない、または簡易簿記の場合は最大10万円控除となります。
経費にできるのは利息部分のみで、元金返済部分は経費になりません。ローン返済予定表で利息と元金を区分し、利息部分だけを計上します。なお、不動産所得が赤字のとき、土地等を取得するための借入金の利子に対応する赤字部分は損益通算の対象外となる点にも注意が必要です。
法定耐用年数の一部を経過した中古物件は「(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%」、法定耐用年数をすべて経過した物件は「法定耐用年数 × 20%」で耐用年数を計算します(簡便法、1年未満切り捨て・最低2年)。例えば築20年の木造(法定22年)なら(22−20)+20×0.2=6年となり、新築より短い期間で大きく償却できます。
期限(原則3月15日)を過ぎて申告すると、無申告加算税や延滞税が課される場合があります。納めるべき税額があるのに申告しないと、ペナルティが重くなる可能性があります。期限後でも気づいた時点で早めに申告することが大切です。判断に迷う場合は税務署や税理士に相談しましょう。
※ 本ガイドは一般的な税務の取り扱いを解説したものであり、個別の申告内容を保証するものではありません。税制は改正される場合があり、具体的な判断は物件・契約内容により異なります。実際の申告にあたっては、最新の国税庁情報を確認のうえ、税理士など専門家にご相談ください。