築年数が古い物件は購入価格が安く、計算上の利回りが高くなるため、初心者投資家にとって魅力的に映ります。しかし、築古物件には建物の老朽化に伴う修繕リスクが潜んでおり、購入前にこのリスクを正しく評価できなければ、大きな痛手を負うことになります。
本記事では、修繕費用を甘く見積もったまま築古物件に投資し、想定外の出費に苦しんだ投資家の事例を紹介します。
会社員のFさん(40代後半)は、退職後の収入源として不動産投資を検討していました。予算の制約から新しい物件には手が出せず、地方郊外にある築30年の木造アパート(6戸)を1,200万円で購入しました。満室時の年間家賃収入は約192万円で、表面利回りは16%。「この利回りなら5年で元が取れる」とFさんは期待に胸を膨らませました。
購入前に不動産会社から「建物の状態は年相応」と説明を受けましたが、Fさんは「多少の修繕は家賃収入から賄える」と軽く考え、詳細なインスペクション(建物状況調査)は実施しませんでした。
購入後わずか3ヶ月で最初の問題が発覚します。入居者から「天井から雨漏りがする」と連絡があり、調査の結果、屋根の防水層が全面的に劣化していることが判明。修繕費用は約120万円でした。
その後も修繕が次々と発生します。
購入から2年間で発生した修繕費用の合計は約485万円。物件価格の約40%に相当する金額です。
修繕費用の捻出に追われ、Fさんの預貯金は急速に減少しました。修繕工事中は入居者が退去する部屋もあり、入居率は70%程度に低下。家賃収入の減少と修繕費用の増加というダブルパンチに見舞われました。
最終的に、Fさんはこれ以上の修繕費用に耐えきれず、築30年超のアパートを約500万円で売却。購入費用1,200万円に修繕費用485万円を加えた総投資額は1,685万円。2年間の家賃収入約300万円を差し引いても、約885万円の損失となりました。
築年数ごとに発生しやすい主な修繕項目と、一棟アパート(6〜8戸程度)での費用目安は以下のとおりです。
築年数が20年を超える物件を購入する際は、専門家によるインスペクション(建物状況調査)の実施を強くおすすめします。費用は5〜15万円程度ですが、購入後に発生する修繕費用を事前に把握できるため、投資判断の精度が大幅に向上します。
築古物件を検討する際は、今後10年間で必要となる修繕費用を見積もり、投資計算に組み込みましょう。目安として、築20年超の物件では購入価格の15〜25%程度の修繕費用が今後5〜10年で発生する可能性を想定しておくべきです。
利回りシミュレーターで修繕費用を含めた実質利回りを計算し、それでも投資として成立するかを冷静に判断してください。
売主に過去の修繕履歴を確認し、主要な設備・部位がいつ最後にメンテナンスされたかを把握しましょう。修繕履歴が不明瞭な物件は、十分なメンテナンスが行われていない可能性が高く、リスクが高いと判断すべきです。
物件を購入した後は、毎月の家賃収入から一定額を修繕積立として確保しましょう。目安として、家賃収入の5〜10%程度を修繕積立に回すことが推奨されます。大規模修繕が発生した際に資金ショートしないよう、計画的な積立が重要です。
Fさんの事例は、築古物件の「見かけの安さ」に惑わされることの危険性を示しています。
築古物件への投資自体が悪いわけではありません。建物の状態を正しく評価し、修繕費用を適切に見積もった上で投資判断を行えば、高い収益を得ることも可能です。重要なのは、「安いから買う」ではなく「状態を見て判断する」という姿勢です。