不動産投資において、物件の購入と同じくらい重要なのが管理会社の選定です。特にサラリーマン大家の場合、日常的な管理業務を管理会社に委託するのが一般的です。しかし、管理会社のクオリティは会社によって大きく異なり、選び方を間違えると物件のパフォーマンスに深刻な影響を及ぼします。
本記事では、管理会社選びに失敗し、空室率の悪化と物件価値の低下に悩まされた投資家の事例を紹介します。
不動産投資を始めたばかりのEさん(40代会社員)は、築12年の一棟アパート(6戸)を購入しました。物件購入後、管理会社を選ぶ段階で、3社から見積もりを取得。管理委託費はそれぞれ家賃の5%、4%、3%でした。
Eさんは「管理業務の内容はどこも同じだろう」と考え、最も安い3%のF社に委託を決定しました。年間で見ると、5%の会社と比べて約7万円の節約になる計算です。
委託から半年後、最初の問題が発生します。退去した部屋の原状回復が完了したにもかかわらず、1ヶ月以上経っても入居者の募集が始まりません。Eさんが確認すると、F社は自社のウェブサイトにのみ物件情報を掲載しており、大手ポータルサイトへの掲載を行っていなかったのです。
さらに深刻だったのは、入居者からのクレーム対応の遅さです。ある入居者から「給湯器が故障した」と連絡があったにもかかわらず、F社の対応は3日後。入居者は不満を募らせ、契約更新を待たずに退去してしまいました。
こうした問題が続いた結果、2年後には6戸中3戸が空室という状態に。年間の家賃収入は購入時の想定から約40%減少し、キャッシュフローはほぼゼロになりました。
物件の共用部分の清掃も不十分で、エントランスや廊下の汚れが目立つようになりました。内見に来た入居希望者が共用部分の状態を見て入居を敬遠するという悪循環に陥ったのです。
危機感を感じたEさんは、ようやく管理会社の変更を決断。地域密着型で評判の良いG社に切り替えました。管理委託費は家賃の5%と高くなりましたが、G社は大手ポータルサイトへの掲載、迅速なクレーム対応、定期的な共用部清掃を徹底。半年後には空室が1戸に改善しました。
しかし、立て直しまでの2年間で失った家賃収入は約200万円以上。管理委託費を年間7万円節約するために、その30倍近い損失を被ったことになります。
管理会社の最も重要な能力は「空室を埋める力」です。以下の点を確認しましょう。
入居者からのクレームへの対応スピードは、入居者の満足度と退去率に直結します。24時間対応のコールセンターの有無、緊急時の対応体制、過去のクレーム対応実績などを確認することが重要です。
その管理会社が管理している他の物件を実際に見に行くことも有効な方法です。共用部分の清掃状態、植栽の手入れ、掲示板の管理状況などを確認することで、管理のクオリティを肌で感じることができます。
管理戸数や管理歴の長さも判断材料になりますが、数だけでは質はわかりません。可能であれば、その管理会社に物件を委託しているオーナーの評判を聞くことが最も確実です。不動産投資のセミナーやコミュニティを通じて情報収集するのも一つの方法です。
以下のような兆候が見られたら、管理会社の変更を検討すべきタイミングです。
管理会社の変更自体は、適切な手続きを踏めば比較的スムーズに行えます。変更に伴う一時的なコストよりも、管理品質の向上による長期的なメリットの方がはるかに大きいケースがほとんどです。
Eさんの事例は、管理委託費の安さだけで管理会社を選ぶことの危険性を如実に示しています。
管理委託費は「コスト」ではなく「投資」と考えましょう。質の高い管理会社に適正な費用を支払うことが、長期的な収益の最大化につながります。管理会社選びの詳細な基準については管理会社の選び方ガイドも参考にしてください。