鳥取市の再開発が投資に与える影響
鳥取市は鳥取県の県庁所在地で、住民登録人口は175,443人(令和8年8月31日現在、鳥取市「鳥取市の人口・世帯数」)と減少が続いています。市は鳥取駅周辺の再整備と中心市街地の活性化を進めていますが、駅周辺の再整備は2026年10月時点で「鳥取駅周辺再生整備計画(素案)」の段階にあり、工事はこれからです。地方都市の再開発は規模こそ大都市に劣りますが、限られた中心部に機能を集める取り組みは、立地の良い物件の相対的な価値を支える要因になり得ます。県庁所在地としての行政機能の集積と、鳥取砂丘という全国的な観光資源が市の経済基盤を支えています。物件価格が低くインカムゲインを確保しやすい一方、再開発の効果が表れるまでには長い時間がかかる点を前提にしておきたいところです。
鳥取駅前再開発の概要
市は令和6年6月に「鳥取駅周辺再生基本計画」を策定し、令和8年8月に整備イメージをまとめた「鳥取駅周辺再生整備計画(素案)」を公表しました。素案への市民政策コメントの募集は令和8年9月1日〜10月12日に行われ、すでに締め切られています。市は、提出された意見の概要を、市の考え方とともに後日公式ウェブサイトで公表するとしています(鳥取市「鳥取駅周辺再整備の最新情報」、鳥取市「鳥取駅周辺再生整備計画(素案)に関する市民政策コメントを募集します」)。素案の概算事業費(公共整備部分、税込)は120億円で、バスターミナルの完成は概ね5〜7年後、北口・南口の駅前広場と複合施設の完成は概ね8〜12年後と想定されています。事業費は概算で、今後変わる可能性があると市は明記しています(鳥取駅周辺再生整備計画(素案)概要版)。
鳥取駅南口周辺
鳥取駅は新幹線が通っていない在来線の駅です。南口側には鳥取市役所本庁舎や駅南庁舎があります。素案では、南口広場を山白川に続く緑と水の憩いの空間とし、南口交通広場と駐車場を再編する方針です。
- 南口広場には親水空間を設け、日常的な憩いの場とする方針。駅の南北をつなぐ人中心の広場空間も素案に盛り込まれている
- 第4期中心市街地活性化基本計画には、南口の鉄道記念物公園をリノベーションし周辺の市道と一体的に活用する「鳥取駅南口賑わい交流空間創出事業」(令和5年度〜)が位置付けられている
- 中心市街地の中でも袋川以南(駅側)は、人口が平成15年から令和4年3月末までに13.3%増えた(第4期計画の分析)
鳥取駅北口エリア
北口側は、駅前の商店街から若桜街道・智頭街道を通って鳥取城跡方面へ続く中心市街地の玄関口です。素案では、北側に集約型のバスターミナルを設け、北口広場を賑わいの空間とし、子育て支援や市民活動などの機能を持つ複合施設を建てる方向です。駅前の市道駅前太平線には、可動式の大屋根と芝生広場の「バード・ハット」がすでにあります。
- 鳥取駅周辺再生基本計画では、バス交通が駅北側に集中することなどが慢性的な渋滞の要因とされ、集約型バスターミナルへの再編が柱になっている
- 商店街は空き店舗の解消が課題。中心市街地の空き店舗数は平成19年の53店舗から令和3年には72店舗に増え、令和3年7月時点の空き店舗率は若桜街道で29.7%だった(第4期計画)
- 若桜街道は、昭和27年の鳥取大火の後に全国で初めて防火建築帯の指定を受けた耐火建築物群が今も街並みをつくる、市のメインストリート
中心市街地活性化の取り組み
第4期中心市街地活性化基本計画は令和5年3月17日に内閣総理大臣の認定を受け、鳥取駅周辺と鳥取城跡周辺の二つの核を若桜街道・智頭街道の二つの軸で結ぶ約210haを区域としています(鳥取市「第4期鳥取市中心市街地活性化基本計画」、計画書 4〜8章、1章)。市は第5期計画に向けて令和8年度中に「中心市街地グランドデザイン」を作成するとしており、「依然として中心市街地の衰退に歯止めがかからない状況」とも書いています(鳥取市中心市街地グランドデザイン)。
まちなか居住促進
市は「若年層のまちなか暮らしの促進」を計画の目標に掲げ、空き家の改修支援などを行っています。中心市街地の人口は令和4年3月末で12,250人とほぼ横ばいで、中高層(7階以上)の民間集合住宅は41棟(2,140戸)が完成しています。新しい供給が続くことは、築古物件を持つ投資家にとっては競合が増えることでもあります。
| 施策 | 内容(市の公表) | 投資への見方 |
|---|---|---|
| まちなか空き家改修支援事業 | 中心市街地の戸建て・長屋の空き家を居住用や店舗等に改修する費用の2分の1を補助(上限50万円)。居住は45歳未満で区域外から転入し10年以上住むことなどが要件 | 共同住宅は対象外。戸建て賃貸で使うなら入居者の要件を満たせるか事前に確認したい |
| 空き店舗対策事業 | 空き店舗で新規開業する人に店舗賃貸料・改装料・広告宣伝費を補助 | 店舗付き物件の後押しになるが、空き店舗は増えたままで、制度だけで埋まるとは限らない |
| 100円循環バス「くる梨」 | 鳥取駅と鳥取城跡を結び中心市街地を回る循環バス。令和5年4月から交通系ICカードに対応 | 駅から離れた物件でも、停留所までの距離を立地の評価に入れられる |
空き家改修支援の要件は鳥取市「まちなか空き家改修支援事業」で確認できます。
鳥取城跡周辺の整備
国史跡の鳥取城跡では、石垣や櫓門などを復元する「鳥取城跡大手登城路復元整備事業」が平成19年度から令和9年度までの予定で進められています。令和8年度からは、久松公園に複合型ビジターセンターを整備し、バリアフリー化を含めて公園全体を再整備する事業も計画に位置付けられています。城跡周辺は桜の名所でもあり、観光拠点としての魅力向上が周辺の滞在や宿泊の需要につながる可能性はありますが、効果は整備の進み具合を見て判断したいところです。
砂丘観光との連携
鳥取県の集計では、鳥取砂丘の入込客数は2025年が約124万人(1,235,735人)でした(鳥取県「主要観光施設入込客数」)。駅周辺再生基本計画では観光情報の発信機能の充実が課題に挙げられており、砂丘の観光客を中心市街地の回遊につなげられれば、飲食・宿泊施設の需要を下支えする要因になり得ます。
投資エリア別の分析
鳥取駅徒歩圏(徒歩10分以内)
再整備の恩恵を最も受けやすいエリアです。単身向けの家賃は大都市圏より低い水準で、相場は地元の管理会社などで確かめたいところです。市役所の庁舎や商業施設があり、学生以外の社会人の需要も見込めます。ただし駅前広場の完成は概ね8〜12年後の想定で、その間は段階的な工事が続くため、長期保有を前提に考える必要があります。
総務省の住宅・土地統計調査(令和5年10月1日時点)では、鳥取市の民営借家(専用住宅)の1か月当たり家賃は平均48,333円でした。鉄筋コンクリート造などの共同住宅(非木造)では、29㎡以下が平均36,105円、30〜49㎡が平均48,370円で、全国平均(29㎡以下54,955円、30〜49㎡68,189円)を下回ります。直近では、小売物価統計調査(2025年平均)の鳥取市の民営家賃が3.3㎡当たり3,806円です。統計は共益費・管理費を含まない既存の契約の平均で、築年・広さ・駅からの距離で大きく違い、募集中の家賃はこれより高く出やすくなります(総務省「令和5年住宅・土地統計調査」第130表、総務省統計局「小売物価統計調査(動向編)」)。
この家賃と鳥取市全体の中古マンション等の取引価格の中央値で、表面利回りを試算しました。
| 専有面積 | 家賃の統計(共同住宅(非木造)の平均) | 中古マンション等の取引価格の中央値 | 表面利回りの試算 |
|---|---|---|---|
| 29㎡以下 | 36,105円 | 2021〜2025年の取引が4件のみ | 試算しない |
| 50〜69㎡ | 58,475円 | 1,400万円(47件、建築年の中央値2001年) | 試算:58,475円×12か月÷1,400万円=約5.0% |
| 70〜99㎡ | 65,291円 | 2,100万円(127件、建築年の中央値2006年) | 試算:65,291円×12か月÷2,100万円=約3.7% |
注:家賃は第130表の同じ面積帯の築年を問わない平均、取引価格は国土交通省の価格情報(取引価格・成約価格)の2021年第1四半期〜2025年第4四半期の鳥取市全域の中央値で、駅徒歩圏に絞った値ではありません。試算は経費・空室・修繕を引く前の表面利回りで、物件ごとの実際とは大きく違い得ます。29㎡以下は取引が4件しかなく、古い物件の価格をこの平均家賃で割ると実態より大きく出るため試算していません(国土交通省「不動産情報ライブラリ」)。
- 利回りの見方:物件価格は低いが家賃も低く、上の試算では表面利回りは約3.7〜5.0%。空室・修繕を差し引いた実質で比べたい
- 投資適性:再整備の効果を長期で受けられる、優先して検討したいエリア
- 特徴:工事期間中の騒音や交通規制も見込んでおきたい
若桜街道〜鳥取城跡エリア
空き家・空き店舗を改修して付加価値を付ける戦略が考えられ、市も「リノベーションまちづくり」として遊休不動産の活用を後押ししています。ゲストハウスなどへの転用は、旅館業法の許可か住宅宿泊事業法の届出が必要です。届出による住宅宿泊事業は宿泊させる日数が年180日までに限られ(同法第2条第3項)、条例で実施期間が制限されることもあります(同法第18条)。
- 利回りの見方:取得価格を抑えられれば表面利回りは高くなりやすいが、改修費を含めた総額で計算したい。家賃の目安は、第130表の鳥取市の一戸建の民営借家で1か月平均54,147円(広さ・築年を問わない)
- 投資適性:資金力と改修スキルを有する投資家向け
- リスク:改修費が予想を超えることがある。古い木造住宅ではシロアリ被害や耐震性の不足に注意。袋川以北は中心市街地の中でも人口が減っている(平成15年比16.7%減、令和4年3月末)
末広温泉町周辺
末広温泉町は中心市街地の商店街の一つで、令和3年7月時点の空き店舗率は3.1%と主要7商店街で最も低い水準でした(第4期計画)。ただし市は中心市街地で老朽化した建物が増えていると分析しており、築年数の古い物件では設備更新や修繕の費用を見込んでおく必要があります。短期的な収益よりも、中期的な視点で判断するのが適切です。
投資判断のポイント
メリット
リスク
- 再開発の規模が限定的で、大きな地価上昇は見込みにくい。中心市街地で最も地価が高い栄町の公示地価は、令和4年に平成19年の46.8%まで下がっている(第4期計画)
- 人口減少が続いており、郊外は空室の増加が心配される。投資対象は駅前・中心部に絞りたい
- 新幹線が通っておらず、広域的な交通アクセスに課題がある
- 鳥取県は全県が豪雪地帯に指定されている(国土交通省「豪雪地帯及び特別豪雪地帯の指定地域」)。冬季の除雪や交通障害への備えも必要
投資戦略
鳥取市の再開発投資では、キャピタルゲイン狙いよりもインカムゲイン重視の戦略が適しています。駅周辺の築古物件を安く取得し、リノベーションで付加価値を付けて利回りを高める手法が現実的です。10年以上の長期保有を前提に、空室・修繕・管理費を差し引いた実質利回りが借入金利を十分に上回るかで判断しましょう。
今後の展望
鳥取市は令和8年度に立地適正化計画と中心市街地グランドデザインを作成し、その後に第5期中心市街地活性化基本計画を策定する流れを示しています(素案概要版)。郊外の価値低下と中心部の相対的な価値維持という二極化が進む可能性があり、投資対象は駅前・中心市街地に絞ることが重要です。山陰道などの道路網や鳥取空港を含む交通インフラの動きも、国や県の公表で確かめながら、長期的な視点で投資判断を行いましょう。再整備の完成時期を見据えた投資タイミングの検討が、収益性を大きく左右する要因となります。
