損益通算とは、ある所得で生じた赤字(損失)を、他の所得の黒字と相殺できる制度です。所得税法上、損益通算が認められている所得は限られており、不動産所得はその一つです。不動産投資で赤字が出た場合、給与所得や事業所得など他の所得と相殺することで、課税所得を減らし、結果として所得税・住民税の負担を軽減できます。
たとえば、給与所得がある会社員が不動産投資を行い、不動産所得で赤字が出た場合、その赤字分を給与所得から差し引くことができます。これにより、源泉徴収で納めた所得税の一部が還付される可能性があります。確定申告の基本については不動産投資の確定申告ガイドをご確認ください。
損益通算の対象となるのは、不動産所得の計算上生じた赤字です。ただし、すべての赤字が損益通算の対象になるわけではありません。以下のケースでは、赤字の一部または全部が損益通算の対象外となります。
不動産投資の初年度は、取得にかかる諸費用(登記費用、仲介手数料、不動産取得税など)が大きく、帳簿上は赤字になることが珍しくありません。また、減価償却費は実際の支出を伴わない経費であるため、キャッシュフローは黒字でも帳簿上は赤字になるケースがあります。これが不動産投資における損益通算の大きなメリットです。経費にできるものの詳細は確定申告で経費にできるもの・できないもので解説しています。
損益通算を行っても赤字が残る場合、青色申告者であれば、その残った赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。これを「純損失の繰越控除」といいます。
繰越控除を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
つまり、赤字の年だけでなく、翌年以降も継続して確定申告を行う必要がある点に注意してください。青色申告の詳細は青色申告と白色申告の違いで解説しています。
不動産投資の初年度に大きな赤字が出た場合を考えてみましょう。初年度の赤字を給与所得と損益通算しても、まだ赤字が残ったとします。この残った赤字を翌年に繰り越し、翌年の不動産所得や給与所得と相殺できます。それでも相殺しきれなければ、さらにその翌年に繰り越すことが可能です(最長3年間)。
このように、初年度に集中する諸費用を3年間にわたって所得から控除できるため、投資開始後の数年間は税負担を大きく軽減できる可能性があります。
損益通算による節税効果は、不動産投資の副次的なメリットであり、それ自体を目的にすべきではありません。「赤字にして節税できるから」という理由だけで収益性の低い物件を購入すると、長期的には資産を減らす結果になりかねません。投資判断はあくまで物件の収益性を軸に行い、節税効果はプラスアルファとして考えるのが健全です。初心者がやりがちな失敗は不動産投資の失敗パターンでまとめています。
減価償却によって帳簿上の赤字を作り出し、損益通算で節税する手法は広く知られています。しかし、減価償却費を多く計上すると、建物の帳簿価額(簿価)が下がります。将来物件を売却した際には、売却価格と簿価の差額が譲渡所得として課税されるため、保有期間中に節税した分が売却時に課税される側面があります。
つまり、減価償却による損益通算は「税金の繰延べ」の側面が強く、税金が完全になくなるわけではない点を理解しておく必要があります。売却時の税金については不動産売却時の税金ガイドもあわせてご確認ください。
前述のとおり、土地の取得に係るローン利息は損益通算の対象外です。物件を購入する際、建物と土地の按分割合を明確にしておくことが重要です。按分割合によってローン利息のうち「建物分」と「土地分」の金額が変わり、損益通算できる赤字額に影響します。
仙台で不動産投資を始める場合、物件の取得価格は首都圏と比べて低い傾向にあるため、取得にかかる諸費用も相対的に小さくなります。一方で、木造アパートなど耐用年数が短い物件を取得した場合は、年間の減価償却費が大きくなり、帳簿上の赤字が出やすくなるケースがあります。
仙台で複数物件を段階的に取得していく戦略をとる場合、新規取得のたびに初年度の諸費用で赤字が出ることがあるため、損益通算と繰越控除を計画的に活用することで、投資拡大期の税負担を抑えることが可能です。長期的な収支はキャッシュフローシミュレーターで確認しておきましょう。
損益通算と損失の繰越控除は、不動産投資家にとって有効な税務上の仕組みです。ただし、あくまで適正な経費計上の結果として赤字が生じた場合に活用できるものであり、節税ありきで投資判断を行うことは避けるべきです。青色申告の届出、土地ローン利息の取り扱い、売却時の課税関係など、制度を正しく理解したうえで活用しましょう。判断に迷う場合は税理士への相談をおすすめします。
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