滋賀県大津市(人口約34.5万人、2026年5月時点の住民基本台帳ベース)は県庁所在地でありながら、京都市に隣接する立地から「京都のベッドタウン」としての側面が強い都市です。近年は大津駅前やびわ湖浜大津駅周辺を中心に再開発が進み、2026年時点では「既存整備の定着期」と「県有地を活用した次のフェーズ」が重なる変曲点に差し掛かっています。本稿では大津駅前・びわ湖浜大津駅周辺の整備状況に加え、着工・竣工タイムラインの影響、草津・膳所など周辺エリアとの比較投資視点、そして賃貸需要を支える多層構造までを投資目線で整理します。
大津市の再開発と都市変革
大津市は琵琶湖の南西岸に位置する歴史的な都市であり、京都市と隣接してJR琵琶湖線・湖西線・京阪石山坂本線が通る交通利便性の高い都市です。京都への利便性の高さから居住地としての人気が高く、近年の京都市内の家賃・物価上昇に伴って大津市への流入が増加傾向にあります。大津市が目指すのは単なる京都のベッドタウンではなく、独立した経済圏としての機能強化であり、駅前再開発はその実現に向けた重要なステップとなっています。
大津駅前再開発
再開発の背景と意義
大津駅は京都駅からわずか2駅(約10分)という好立地にもかかわらず、駅前の商業機能が弱く、駅利用者の多くが京都方面に流出していました。この課題に対応するため、駅前エリアの再整備が進められてきました。駅前広場の再整備により通勤・通学者の安全性と利便性が向上し、商業施設の充実によって従来京都で買い物をしていた利用者の一部が大津に留まる可能性が高まります。
大津駅西地区では、市街地再開発事業として2013年11月に商業・住宅複合施設「COCOLAS(ココラス)大津」が竣工しています。準備組合の設立からわずか6年というスピードで実現した事例で、駅前広場に面する街区の再整備はこの段階で一定の完成を見ています。現在の焦点は、この既存整備をどう活かしつつ次のフェーズに進むかという点に移っています。
県有地を活用した医療福祉拠点整備
大津駅に近く滋賀県庁に隣接する約7,200平方メートルの県有地について、滋賀県は「医療福祉拠点」として再開発する方針を示しています。医療福祉関連団体を集積させる「医療福祉センター施設」は県が「(仮称)第二大津合同庁舎」として整備し、看護職・歯科衛生士などを育てる専門学校といった「人材養成施設」は民間事業者による公募で整備する枠組みです。人材養成施設については複数の教育事業者との協議が進められてきた経緯があり、具体的な竣工時期は本稿執筆時点(2026年7月)で公式に確定した情報は確認できていませんが、駅至近の公有地活用として大津駅前の機能強化に直結するプロジェクトです。今後の投資判断では、この県有地活用の進捗を大津市・滋賀県の公式発表で確認することが欠かせません。
なお、老朽化した大津市役所本体の建替え(新庁舎整備)は、大津駅とは別の駅であるJR湖西線・大津京駅に近い皇子山総合運動公園(御陵町)が整備予定地とされています。大津駅前再開発と混同されがちですが、対象エリアが異なる点には注意が必要です。
中心市街地活性化基本計画という上位の枠組み
これらの個別プロジェクトは独立して動いているわけではなく、「大津市中心市街地活性化基本計画」という上位計画に位置づけられています。第2期計画は2013年3月29日に内閣総理大臣認定を受け、2013年度から大津市中心市街地活性化協議会と連携して推進されてきました。計画には大津駅西第一土地区画整理事業、大津駅西地区第一種市街地再開発事業(COCOLAS大津)、県庁周辺の県有地活用事業に加え、旧東海道沿いの伝統的町家の保存事業も含まれています。びわ湖浜大津駅周辺の大津百町のまちづくりと合わせて見ると、大津市は駅前の商業機能強化と歴史的町並みの保全を同一の政策軸で進めていることが分かります。投資家にとっては、個別プロジェクトの単発ニュースだけでなく、この基本計画の改定・更新動向を追うことで、市全体の開発方針を先読みしやすくなります。
主な整備内容
| プロジェクト | 概要 |
|---|---|
| COCOLAS大津(完了済) | 大津駅西地区第一種市街地再開発事業、2013年11月竣工の商業・住宅複合施設 |
| 県有地医療福祉拠点整備 | 県庁隣接の約7,200平方メートルの県有地に医療福祉センター施設+人材養成施設 |
| 住宅開発 | 駅近マンションの供給が継続 |
賃貸市場への影響
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単身家賃相場 | 4.5〜6.0万円程度 |
| ファミリー家賃相場 | 7.0〜10.0万円程度 |
| 特徴 | 既存再開発の定着効果で需要は底堅く、京都通勤者の取り込みが継続 |
駅前の商業・住宅整備が積み重なってきたことで、エリア全体の賃貸需要は底堅く推移しています。一方で既存物件との競争環境も生まれるため、物件選定時は立地・築年数・設備を慎重に検討する必要があります。
大津駅前・びわ湖浜大津駅周辺の状況と市場への影響
既存整備の定着とこれからの焦点
COCOLAS大津の竣工から10年以上が経過し、駅前エリアの基礎的な商業・住宅機能は一定程度定着しています。大津市内の新築マンション・アパート供給量は京都・大阪に比べ絶対数が少なく、供給過剰になりにくい構造にあります。今後は前述の県有地医療福祉拠点整備が具体化するタイミングが、駅前エリアの次の需要創出局面になると見られます。
県有地整備が完成時に生む需要
医療福祉センター施設・人材養成施設が実際に稼働すれば、医療福祉分野の職員や教育機関の学生・スタッフの転入需要が発生します。こうした需要を先読みで取り込むには物件取得のタイミングが重要ですが、現時点では竣工時期が公式に確定していないため、事業の公募状況や着工発表を継続的にウォッチする姿勢が求められます。
びわ湖浜大津駅周辺の整備
エリアの特徴と歴史的背景
びわ湖浜大津駅は京阪電車の主要駅であり、琵琶湖畔に位置する大津市の中心市街地の一角を形成しています。古くから水運の中心として栄えた地域であり、戦前からの建物も残る旧市街地が広がっています。「大津百町」と呼ばれる歴史的街区を活かしたまちづくりが進行中で、歴史と現代が融合した都市空間の創造が目指されています。「まちづくり大津百町館」ではこの商店街の歴史や大津絵などの展示が行われ、地域イベントの拠点にもなっています。
新・琵琶湖文化館構想と整備の方向性
滋賀県はびわ湖浜大津駅周辺エリアに(仮称)新・琵琶湖文化館を整備する構想を示しており、これを契機にエリアを歴史文化の学びや文化芸術の創造の場として、にぎわいを創出する方針を打ち出しています。県有施設の新規整備は、周辺の回遊性向上や来訪者増加を通じて、飲食・小売テナントの立地環境にプラスに働く可能性があります。
- 湖畔景観の活用:琵琶湖の眺望を活かした住環境の整備。レイクビューの付加価値が物件の競争力向上につながる
- 歴史的街並みの保全:大津百町の活用による観光資源としての価値向上
- 文化拠点の強化:新・琵琶湖文化館構想による集客力向上
びわ湖浜大津駅周辺はレイクビューの付加価値がある物件が存在し、通常の賃貸物件よりも高い家賃設定が可能なケースがあります。特にリノベーション済みの物件は都心とは異なる形での価値評価が可能です。ただし観光需要に依存する民泊運用は規制面の確認が必要で、滋賀県内の民泊規制は変更されることがあるため、投資前に最新情報を確認することが重要です。
瀬田・南草津エリアの発展
大津市南部の成長と人口流入
大津市南部の瀬田エリアから草津市にかけては、大学や研究施設の集積に伴い人口流入が続いています。龍谷大学瀬田キャンパスの存在がこのエリアの人口基盤を形成しており、学生・若年層の安定した需要が見込まれます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単身家賃相場 | 4.0〜5.5万円程度 |
| ファミリー家賃相場 | 6.5〜9.0万円程度 |
| 特徴 | 大学需要と新興住宅地としての人口流入 |
このエリアは近年の開発が進み新しい住宅地が増加しています。大学の受験期には学生向けの賃貸需要が集中するため、時期的な空室リスク対策が必要です。龍谷大学瀬田キャンパスは複数学部が集積する大規模キャンパスであり、進級・卒業のタイミングで入退去が集中する傾向があるため、繁忙期を見据えた入居者募集のスケジューリングが安定稼働のカギになります。
南草津駅周辺の発展動向
南草津駅は近年急速に発展しており、商業施設やマンションの建設が活発です。滋賀県内でもトップクラスの乗降客数を誇り、投資エリアとしての注目度が高まっています。大型ショッピングモールや新しいオフィスビルが立地し、周辺の賃貸需要も堅調に推移しているため、初心者投資家にも比較的取り組みやすいエリアです。
草津・膳所エリアとの比較投資判断
草津エリアの優位性
草津市(大津市の隣、滋賀県内第2位の人口)は、立命館大学の大規模キャンパス(びわこ・くさつキャンパス)が立地し、学生需要が分厚い市場です。JR草津駅前の再開発も並行して進んでおり、駅徒歩圏のワンルーム・1K物件は高い稼働率を維持しています。大津市と比較すると草津の物件取得単価はやや低めで、利回りを重視する投資家には草津が選ばれやすい傾向があります。一方、大津市の「京都直結の通勤需要」という差別化軸は草津では代替できないため、両市を比較する際はターゲット入居者像を明確にした上で判断することが重要です。滋賀県全体の投資環境を俯瞰したい場合は滋賀県の不動産投資ガイドも参考にしてください。
膳所エリアの穴場性
膳所駅(JR琵琶湖線)は大津駅の隣駅で、京都まで10〜13分というアクセス性はほぼ大津駅と同等です。しかし知名度・地価は大津駅前より低く抑えられているため、利回りを高めやすい穴場エリアとして注目されています。膳所エリアでは大規模再開発は計画されていませんが、周辺の生活利便性(スーパー・クリニック・学校)が充実しており、京都への通勤を重視するファミリー層・共働き夫婦の需要が安定して存在します。
大津市の賃貸需要を支える多層構造
大津駅周辺の賃貸需要は、単一要因でなく複数の層に支えられている点が強みです。
- 行政機関の集積:大津駅から徒歩圏に県庁・裁判所・警察本部などが立地し、官公庁勤務者の安定した賃貸需要があります
- 滋賀県南部の企業集積:日東電工・オムロンなど大手の工場・研究所が多数立地し、単身赴任者・技術者向け需要が安定しています
- 琵琶湖観光と民泊需要:比叡山延暦寺・石山寺・琵琶湖といった観光資源を背景に、インバウンド回復で民泊・ゲストハウス需要が高まっています(運営には地域ごとの条例対応が必要)
- 大学需要:滋賀大学・滋賀医科大学等の学生・医療従事者向け需要も市場の下支え要因です
- 医療福祉分野の潜在需要:前述の県有地医療福祉拠点整備が具体化すれば、医療福祉分野の職員・学生の需要が新たに加わる可能性があります
企業需要は景気変動の影響を受けやすい面もありますが、行政・教育・医療の公共セクター需要と組み合わさることで多層的なリスク分散になっています。
京都・大阪へのダブルアクセスが生むバリュー投資の機会
大津市の最大の強みは京阪神エリアへのアクセス性です。JR大津駅から京都駅まで最速10分、大阪駅まで約40〜50分というロケーションは通勤圏として十分な水準にあります。家賃水準が京都・大阪市内より1〜2割安いことも需要を支える要因で、大津市は京阪神への近接性と相対的に低い不動産価格水準を活かした「バリュー投資」が可能なエリアといえます。特に大津駅・石山駅・瀬田駅周辺は安定した稼働率を示す地域として投資家の評価が高くなっています。
賃料インパクト試算と投資判断のポイント
再開発による賃料上昇の一般的な傾向
再開発完了後にエリアの利便性・価値が向上すると、周辺の賃料水準は一般的に3〜8%程度の上昇圧力がかかるとされています。大津市では特に、駅徒歩5分圏内の新規商業施設・飲食店増加、官公庁・医療施設の集約による就業者増加、県有地整備によるエリアイメージ向上が重なるエリアで賃料上昇が期待されます。ただしこれはあくまで傾向値であり、個別物件の賃料は設備・間取り・管理状態によって大きく異なります。机上の試算を過信せず、直近の成約賃料データを確認することが不可欠です。
有望エリア選定とエリア別利回り見通し
- 大津駅徒歩10分圏内:既存再開発の定着効果と京都通勤の利便性が複合
- 瀬田駅周辺:大学需要と通勤需要のダブル需要が存在
- 石山駅周辺:新快速停車駅で交通利便性が高い
| エリア | 戦略 | 想定利回り |
|---|---|---|
| 大津駅周辺 | 京都通勤者向け単身・ファミリー | 6〜8%程度 |
| 瀬田・南草津 | 学生・若年社会人向け | 7〜9%程度 |
| びわ湖浜大津 | レイクビュー付加価値物件 | 5〜7%程度 |
京都通勤者向けの物件は長期保有向き、学生向けの物件は回転率の高さを見込んだ経営が必要です。
リスク要因と中長期的な展望
主なリスク要因
- 県有地医療福祉拠点整備など今後の開発案件による既存物件の競争力低下。具体化する内容次第では周辺で新築供給が増える可能性がある
- 京都市内の家賃水準が下がった場合、大津市への居住メリットが薄れる可能性。京都市の経済動向を常に監視する必要がある
- 琵琶湖沿岸部は水害リスクの確認が必要。河川氾濫や豪雨時の影響を物件選定時に十分に検討すること
- 中心市街地活性化基本計画の改定サイクルにより、優先事業の顔ぶれが変わる可能性がある。県有地医療福祉拠点整備のような個別事業も、計画全体の見直しに伴い進め方が変更されることがある
人口動態と京都との関係性
大津市の人口は近年横ばいから微減傾向に転じていますが、京都通勤圏としての利便性から急激な人口減少は想定しにくい状況です。京都市の住宅価格・家賃の高騰が続く限り、特に子育て世帯の流入が期待できます。教育施設の充実や自然環境の豊かさはファミリー世帯のニーズに合致しており、長期的には人口安定化が見込まれます。
まとめ
大津市の再開発は、COCOLAS大津の竣工によって大津駅前の基礎整備が一段落した後、県有地を活用した医療福祉拠点整備という次のフェーズに移りつつあります。びわ湖浜大津駅周辺でも新・琵琶湖文化館構想により歴史文化・文化芸術の拠点化が進められており、京都通勤圏としての利便性と琵琶湖の自然環境を活かしたまちづくりが続いています。投資で成果を上げるには、既に完成した整備の恩恵を確認しつつ、県有地活用など次フェーズの進捗を継続的にウォッチする姿勢が欠かせません。草津・膳所との比較では目的(利回り最大化/安定稼働/京都通勤需要捕捉)によって最適エリアが異なります。直近の成約事例と地元管理会社への空室率ヒアリングを欠かさず、キャッシュフローシミュレーターで複数シナリオを比較しながらデータに基づいた投資判断を行いましょう。
よくある質問
大津市で進行中の主な再開発は?
大津駅前ではCOCOLAS大津(2013年竣工)で基礎整備が完了しており、現在は県庁隣接の県有地約7,200平方メートルを活用した医療福祉拠点整備(医療福祉センター施設+人材養成施設)が焦点になっています。びわ湖浜大津駅周辺では大津百町を活かした歴史的街並み整備と、新・琵琶湖文化館構想による文化拠点化が進行中です。
大津市の不動産投資の利回りはどのくらいが目安ですか?
エリアによって幅があり、大津駅周辺で6〜8%程度、瀬田・南草津で7〜9%程度、レイクビュー物件のびわ湖浜大津で5〜7%程度が目安です。京都・大阪より1〜2割安い価格水準を活かしたバリュー投資が可能なエリアです。
大津市と草津市はどちらが投資に向いていますか?
利回りを重視するなら物件取得単価がやや低く立命館大学の学生需要が分厚い草津、京都直結の通勤需要を捕捉するなら大津が向いています。ターゲット入居者像を明確にした上で選ぶことが重要です。膳所駅周辺は大津並みのアクセスで地価が抑えめの穴場として高利回りを狙えます。
大津市の賃貸需要は何に支えられていますか?
県庁・裁判所・警察本部などの行政機関、日東電工・オムロンなど県南部の企業、滋賀大学・滋賀医科大学の学生・医療従事者、そして琵琶湖観光の民泊需要という多層構造に支えられています。公共セクター需要と企業需要の組み合わせがリスク分散になっています。
大津駅前の新庁舎整備は投資判断に関係しますか?
大津市役所の新庁舎整備予定地は大津駅とは別の大津京駅(JR湖西線)に近い皇子山総合運動公園です。大津駅前再開発とは対象エリアが異なるため、混同しないよう注意が必要です。
